「ちょっとした偶然」
午前10時ごろ、鹿児島中央駅付近の街路を歩いていたら、自転車で近づいてきた青年から親しげに挨拶された。
― 知っている顔だ。でも誰だったかな・・・。
すぐに思い出した。近所のスーパーのアルバイト店員だ。深夜0時から朝8時までの夜勤。
記憶の中の彼は、いつも制服姿で店の中にいるわけで、そこから遠く離れた場所に制服無しでいきなり現れると、ちょっと不思議な気分だ。
彼にとっては、それ以上に不思議だったかも知れない。勤務を終え、約2キロ離れたアパートに自転車でたどり着いてみると、その前を馴染みの客が歩いていたのだから・・・。
「ここに住んでるの?」
「はい。家賃が安くて割と広いのでいいですよ」
「へえ…、場所的にもいいね。駅のすぐそばだし…。でも、旅行してる暇なんか無いだろうねぇ」
「はい、そうですね」
たまに起こるこういう偶然も、ちょっと新鮮で面白い。