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手鏡 おひや
2024年5月15日 02:02
運命だ、と思った。____は此の偶然に感謝した。ざり、と音を立てて一歩を踏み出す。先刻迄鉛の様に重かった足は、信じ難い程に軽やかであった。眼前の化生が、怯えた様に細く声を漏らす。「誰、なの」声は掠れていた。滝の流れる音が響いている事もあり、もう左耳の聴こえない____は、殆ど其の声を拾えなかった。が、何を言いたいのか表情から読み取るのは容易かった。「忘れたのですか」____