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そういう見解もしてみたい

とある方のトークライブへ行った時のこと。ライブ中、観覧客のエピソードが取り上げられた。
あるAさんというアーティストのファンであったその観覧客の方は、たまたま街でAさんを見かける。見た目や服装からしてAさんに間違いがなく、その方は思わず声をかけた。すると、いつもの朗らかなAさんからは想像できないほど邪険にあしらわれてしまう。結局その方は「人違いをしてすみません(ということにした)」とAさんに謝罪し、Aさんも迷惑そうな様子でその場を去ったという。

上記の話だけを聞くと、Aさんのファンである観覧客の方を不憫に思ってしまう。しかしながら、トークライブの主催者は、別の見解を示した。

このAさんはスマホを見ながら歩いていたそうだ。(歩きスマホはNGという当然のマナーはこの際置いておく)そして、観覧客の方が話しかけた時も、
Aさんはスマホから目を離さずに追い払うような仕草をし、そしてスマホを見ながら立ち去ったらしい。
Aさんは趣味のある方で、その方面でも少し有名だった。だからもしかすると、その趣味の情報を調べたり、趣味のアイテムの購入手続きをしたりなどの理由で、スマホに夢中になっていたのではないか、と主催者は仮説を立てた。

人間、好きなことに夢中になると、往々にしておかしくなってしまうものだ。一度没頭すると人の話は入ってこないし、自身が立てた目的の達成が最優先になってしまう。いつもは優しい人柄でも、趣味のことになると目の色が変わり、他のことは後回しになってしまう。そういう人っている。そしてまた、もしAさんが本当に趣味のことで頭がいっぱいで、意図せず相手を邪険に扱ってしまったのだとすれば、意外と可愛らしい理由で余裕がなかったんだな、と主催者は笑っていた。

人と関わっていれば、相手に嫌な態度を取られた、冷たくされたなどと感じる場面が数多くある。そして、そのような印象を抱き続けるのは受け手側だけで、相手側は案外ケロリとしているものだ。そういう人たちには、あの主催者の言っていたような背景があったのかもしれない。
なかなかどうして、自分も過去の嫌なアレコレを携えて生きているほうである。しかし、今後は相手の背景を想像してみるのも良いかもしれない。そのほうがずっと、心の平和を保てそうだからだ。

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