映画「RRR」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第78回
ナートゥはご存知か?
2022年公開映画「RRR」
文:〝美根〟(2023年10月20日連載公開)
捻くれ者の私は、流行りや世間の良い評判に逆張りしていくような人間だったのだが、最近やっと、世の中で評価されているものは必ずその理由があることがわかってきた。自分に刺さるか刺さらないかは置いておいて、チェックするに越したことはないのだ!
そんな中、「RRR」に私は今年の5月に出会った。昨年の10月に公開され映画館でロングラン上映されている作品で、アカデミー賞歌曲賞を受賞! 「ナートゥ・ナートゥ」という楽曲の独特なダンスも流行って一躍話題になっていた。
何度も観に行くほどの強者もかなり多いと聞く。それほどまでに世界中が魅了されている「RRR」とは一体!? 前情報なしに映画館に乗り込んだ私はもうすっかり虜になってしまったのでした。このパワフルな映画を今回は紹介させて!
【火と水が出会う運命】
1920年、イギリス占領下のインド。ゴーンド族の暮らす村に、イギリス人の総督スコットが総督夫人とともに訪れていた。幼いながら美しい声で唄いながら手の甲に模様を描き総督夫人をもてなした少女マッリは、夫人に気に入られ、言葉が通じないことをいいことに総督一行は連れ戻そうとする母親を殴り硬貨2枚と引き換えに無理矢理マッリを連れさってしまった。マッリを救うため、ゴーンド族の守護者ビームは仲間たちと共にデリーに向かう。
一方その頃、デリーの警察署。大勢のデモ隊・民衆が押しかけ一触即発、警官たちが怯む中、所長の命令に従い、一人デモ隊に飛び込んでいくのは、ラーマという男だった。乱闘の末、デモ隊を一蹴。執念を燃やすように任務をこなしていくラーマは周りからも一目置かれていた。
そんな折、命をかけてでも仲間を取り戻すと言われるゴーンド族の守護者ビームの来訪に備え、ラーマが捜査を担当することに。それぞれの使命を胸に動く二人はある事件をきっかけにお互いの素性を知らぬまま、親しくなっていくのだが・・・・という話。
【身を任せて楽しむべし】
主人公である、ビームとラーマは、実はそれぞれ実在した革命家がモデルとなっているとのこと。もしこの二人が出会ったら・・・というフィクションなのだが、友情とそれぞれの使命が絡み合う運命の物語が主軸となって、ドラマチックさ、容赦ないアクション、素晴らしい音楽が合わさりあって、凄まじいエンタメワールドが繰り出されるのがこの「RRR」なのだ!ちなみに「RRR」とは、英語表記ではRise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)、テルグ語、タミル語、カンナダ語、マラヤーラム語では「怒り」「戦争」「血」という意味の言葉の頭文字をとったものってことらしい。鑑賞後、パンフレットで読んだのですが、わからないまま観ても問題なかったよ。でもまさにそんな言葉で表されるように、イギリス人に差別され馬鹿にされ、それでも負けずに母国を取り戻すことに心を燃やす人々が、描かれている。本作のイギリス人の残酷な所業が本当にとんでもなくて、これ、イギリスにルーツを持つ人はどういうふうに観たんだろう・・・とかなり心配になる程。でも、白人が主人公たちにボコボコにされるこの作品が、アカデミー賞やゴールデングローブ賞で評価されるという事実!これがすごい。興味深い時代だ。
ひとまず、一応フィクションなので、歴史的事実云々・・・というより、主人公たちに心を寄せる形で観る、というシンプルな鑑賞方法が一番楽しめると思う。
【初めての感動の仕方】
この作品を映画館で観終わった時、私は手を震わせ泣いていた笑。かっこよすぎて感動する、というのと、上映後観客から拍手が巻き起こるという、初めての体験をしたのです。それほどまでに観るものに感動と一体感を与えてくれる「RRR」の魅力。
まず、とにかく画が豪華!さまざまな画角のカットがあり、工夫が凝らされている。例えばアクションシーンで突然、崖から転がり落ちる人の目線のカットが差し込まれたりする。カット数が多く、飽きさせない惹き込む技で溢れている。とんでもない数のエキストラを使った迫力、特殊効果も惜しみなく使われ、とにかく贅沢で見応えしかない。次にスローモーションのシーン。一歩間違えれば、興醒めさせてしまうスローモーションだが、めちゃめちゃ面白く使われていて、鳥肌が立ちすぎて羽も生えそうなほど、大事な場面をぐあ!っと盛り上げてくる!そして、風。風が非常に印象的に使われている。人の心や、大衆の気持ちが変化する瞬間に風を吹かすことで、画として表現していて、しびれた。
また、ラーマが火、ビームが水、とそれぞれに象徴があり、これも要所要所で対比されていて、面白いので、これを踏まえて鑑賞するとより楽しめると思う。神話もモチーフとなっているので、神々しいシーンも描かれ、ヒーローの決めポーズみたいな、思わず私の童心が大興奮で憧れちゃうようなカットもまたかっこいい。
そしてこの俳優陣たちの凄さたるや・・!ビームもラーマも場面によって、弱々しくも雄々しくもなれる振れ幅のデカさ。運命に翻弄されながらも立ち向かう熱い展開や、ちょっと面白いシーン、それはやばすぎだろ!!ってシーンさえも、説得力があるから全くギャグにならない。そして後から思い出して、よく考えたらあれはあり得なくてちょっと面白いな・・・ふふっ・・・と時差でまた、かましてくれるのです。
【心動かす音楽】
物語のドラマチックさでも激アツなのだが、音楽も大きな魅力。とにかく楽しい「ナートゥ・ナートゥ」、民衆の闘志を静かに熱く動かす「Komuram Bheemudo」、主人公たちが唄わず、バックで流れる楽曲も、一度鑑賞すれば脳裏に焼き付いて離れないほど、特徴的で、それぞれのシーンをこれでもかと盛り上げてくれる。ミュージカルともまた違う、独特な文化を誇りを持って受け継ぎながら、素晴らしい作品を世界に見せつけてくれるインド映画だから、享受できるこのワクワク。ぜひ楽しんでみて欲しい!
今回、モチーフはビームとラーマが手にして戦った武器にしました。水と火の表現も思った以上の完成度!水が滴る槍がかなりお気に入りです。
「RRR」がくれたパワフルな熱いエネルギーと音楽に胸を高鳴らせて、私も燃える思いを胸に世界を届けていくぞ!
**********
モチーフ:ビームの槍、ラーマの弓、水と火、ラーマのペンダント、マッリに作ったバングル、弾丸
音楽:ナートゥ・ナートゥ」、「Komuram Bheemudo」