デケェ身体に伏線が詰まった百沢雄大という男
ハイキューとは人生だ
「おいおい待て」と「百沢雄大の話はどこだ」と。
まあそう焦らないでおくれよ。
今からハイキューに込められた人生の一つ、百沢雄大を語ろうじゃないか。
百沢雄大 201cmという恵まれた体躯を持った角川高校期待のエース。
烏野高校と相対するのは春高予選、扇南高校を打ち破り勢いに乗る古豪烏野に待ったをかける対戦だ。
だが結果は敗北――――
201cmの巨体は164cmに阻まれることとなる。
しかし、その敗戦は必ずしも百沢に苦い経験を植え付けるものではなかった。
どういうことか?教えてもらったのだ、主人公 日向翔陽に。
今までどんな相手も2mという巨躯によってねじ伏せてきた。それは言ってしまえばその身長に胡坐をかいた向き合い方だ。「身長が高ければ技術なんて関係ない」そう思っていた百沢は「バレーって単純っすね」とこぼす。
しかしそうではなかった。烏野高校は高さに対抗する武器として日向翔陽のマイナステンポと、人数をかけたシンクロ攻撃で百沢を追い詰める。そこには百沢にとって未知の世界が広がっていた。「バレーが"単純"って言ったこと 取り消しますね」
百沢雄大がバレーと向き合った瞬間だ。
次に百沢が登場するのは宮城県選抜一年生合宿だ。
指揮を取るのは名将鷲匠鍛治。高さとパワーを愛してやまない御年71歳の大ベテランだ。選ばれる面子も例外ではなく五色工、国見英、金田一勇太郎、黄金川貫至とかなり身長にウェイトを割いた人選であることが伺える。もちろん宮城県でもトップの身長を誇る百沢雄大もメンバーに名を連ねることとなった。
選ばせにやってきたポジションボール拾いこと日向翔陽が合流するトラブルもありつつ、鍛治君と発案者の穴原監督を交えて練習が進んでいく。
ここで百沢雄大に暗雲が立ち込める。2対2はいつも百沢を助けてくれるチームメイトがいない、つらく苦しい練習だった。
「俺は一体レベルいくつで」「レベルアップするにはあといくつ経験値が必要で」「コイツらは一体レベルいくつで」「2対2に推奨されるレベルはいくつで」「コイツらに勝つにはどんな技を覚えればいい?」
目の前にステータスはなく、できない事実が重くのしかかる。
苦しい。もう止まってしまいたい。そう思った瞬間からの、一歩。
現実はゲームのようにヒントを与えてはくれない。できない苦しさは挫折に繋がる。しかし百沢雄大には、日向翔陽が与えられた。
百沢は日向翔陽によってバレーの面白さに気付かされ、そしてできる喜びを与えられた。
月島のブロックのように、日向のレシーブのように、劇的でなくとも、百沢雄大がバレーにハマった瞬間だ。
ここから先、しばらく百沢雄大が出てくることはない。
しかしてその存在を感じないのかと言われれば、全くの否である。
まず真っ先に百沢の存在を感じるのは稲荷崎との戦いだろう。
一年生合宿で得た視野の広さを武器に、日向翔陽は強豪稲荷崎の連携と五大エース尾白アランからレシーブをもぎ取る。そして速攻の仕掛け合いになったこの試合で、誰しもが早さに囚われていた瞬間に"楽"をもたらした。
百沢が日向翔陽に与えられたように、日向翔陽もまた百沢によって加速する。いや、この場合は減速か。
百沢の存在は稲荷崎戦だけに留まらない。
続く準々決勝、破竹の勢いで名を上げる鴎台との一戦。超高校級のエース。現代の小さな巨人、星海光来擁する鴎台高校は全国でもトップレベルのブロックチームだ。そこには百沢に並ぶ203cmという体格を有した白馬芽生がいた。観戦する大将優が疑問を抱くほどの落ち着きで2mと対峙することができたのも、春高予選で百沢という壁と戦ったことがあったからに他ならない。日向翔陽のみならず、烏野高校全体のチームレベルをも引き上げていることが窺える。
次に百沢が登場するのはVリーグ編だ。
22歳になった百沢はDivision1のチーム大日本電鉄ウォリアーズのMBになっていた。なんということだ。一時は「バレーって単純っすね」などと言っていたあの百沢がバレーを職業にしているだけでなく、日本でもトップクラスのDivision1でプレイしているではないか。日向翔陽が与えた影響は計り知れない。この時登場するシーンでも日向翔陽を見て汗をかいている。今も刺激を受けている。どこまで成長するつもりだ。
最後に百沢はオリンピックの日本代表として現れた。
日本代表!??!??!??!?!
妖怪世代の二大巨頭、百沢と白馬の2m二枚、なんと心強いことか。
星海光来が「今日も活躍してくれよ巨神兵~」と言わんばかりの表情で背中を押す。世界、百沢を見てくれ。
ハイキューとは人生だ。
「ハイキューで人生に大切なことをいくつも学びました!」みたいな話ではない。ハイキューとはそれぞれの人生そのものなのだ。
主人公 日向翔陽の視点から描かれたハイキューには、その恵まれた体躯からプレイを始め、バレーにハマり、国の代表を務めるまでに成長した百沢雄大という男の人生が隠されていた。いや、デカすぎて隠れてないぞ。
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