電柱とパイナップル

デカい。
どう考えてもデカい。
目測で15~20mはあるであろう巨大なそれは鮮やかな黄色に彩られ、ただそこに鎮座していた。
紡錘型のそれは突然現れ、人々の生活を脅かすことこそなかったが、ただただ邪魔であった。
ドローンで確認したところによると、それの中心には穴が開いていたらしい。
そして1つ2mほどはある輪が10個重なっている。
人々はそれを最初こそ怯えて眺めたが、次第に興味を示し始めた。
突如出現したそれは、黄色くて穴が開いたものが10個に分かれて紡錘型を為している。それ以外何も分からなかった。

一人がこう唱えた。
「あれは不完全だ。穴を埋めれば完成する。」
なるほど一理ある。
一人はこう唱えた。
「あれは黄色くて穴が開いてるんだから輪切りのパイナップルだ。」
なるほどこれも一理ある。
かくしてこの20mほどのパイナップルを完成させる計画が立ち上がった。
と言っても特に難しいことはない。
手頃な20mの円柱はそこら中に生えている。
電柱だ。
その巨大パイナップルを電柱に突き刺していけば完成するだろうと。
まあ邪魔だしそれが完成した所で消えるとも思えないが、興味のある人間に権力でもあったのか、それは実行に移された。
問題は順番だ。
この紡錘型はどの順番で電柱にハメれば完成するのか?
大きい方から順番に入れればピラミッドだ。
紡錘のまま入れればパイナップルらしい。
小さい方から入れたなら逆ピラミッドということになるだろう。
結局全部試そうという話になって、まずはピラミッドから。
クレーンで1つずつ動かす作業。
ピラミッド型にしたとて何も起こらなかった。
逆ピラミッドもまた何も起こらなかった。
ならばやはり元からあった紡錘型こそが正解なのだろう。
満を持して紡錘型に嵌めた。
そして街はなくなった。

結論から話そう。
あれはパイナップルだ。いや、パイナップルだったと言うべきだろう。
黄色くて穴の開いたものはパイナップルだったのだ。
そして黄色いけれど穴がなくなったらそれは途端にパイナップルではなくなった。
黄色くて紡錘型で、しかしてパイナップルではないもの?
答えは檸檬だ。
檸檬になったそれは手榴弾になった。
電柱に嵌まった瞬間、閃光。
20mの手榴弾が爆発したのだ。街の1つや2つくらいなくなって当然だろう。

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