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独りのはずだったイブの夜に…

クリスマスイブ。街はキラキラと輝き、カップルたちの笑い声があちこちから聞こえてくる。私は厚手のコートをぎゅっと抱きしめ、ため息をつきながら小さなケーキ屋さんに立ち寄った。

「お一人様用のケーキ、今年も増えたなぁ…」
独り言が自虐的に漏れる。選んだのは小さな苺のショートケーキ。店員さんは優しい笑顔で「メリークリスマス」と言ってくれたけれど、心はちょっとチクっとした。

部屋に戻ると、テーブルの上にキャンドルを灯し、ケーキを皿に移す。テレビでは賑やかなクリスマス特番。でも、なんだか虚しい。

その時、スマホが震えた。画面には大学時代の友人、拓海からのメッセージ。
「優香、今何してる?もし暇ならちょっと外に出てこない?」

少し迷ったフリをしたけど、大好きな拓海だったので勿論ウエルカムだった。慌ててコートを羽織り、外に飛び出す。冷たい風が頬をかすめる。

待ち合わせ場所に立っていた拓海は、昔と変わらない優しい笑顔を浮かべていた。
「久しぶり。…イブに一人って寂しいよな」
「それ、私のセリフだよ!」
思わず笑ってしまった。

二人で歩く街は、さっきまでとは全然違う景色に見えた。ホットチョコレートを片手に、小さな広場で見上げたクリスマスツリー。どこか遠くで鐘の音が響く。

「来年も、イブは一緒に過ごせたらいいな」
拓海の言葉に、胸がぽっと温かくなった。

一人きりのはずだったクリスマスイブ。だけど今、心はとても満たされている。小さな奇跡が、夜空の星みたいに輝いていた。

ラブか友情か?やっぱりラブだ

「来年も、イブは一緒に過ごせたらいいな」
拓海の言葉に、胸が温かくなった――けど、その直後、私の胃がキュルキュルっと派手に鳴った。

「……今の、風の音?」
「いや、完全に私のお腹の音だよね!」

二人して爆笑。ホットチョコレートだけじゃ、イブのロマンチックはお腹を満たしてくれない。

「よし、優香。ラーメン行こう!」
「は!?ラーメン!?クリスマスに!?」
「なんでよ、イブにラーメン最高じゃん!お酒も飲めるし…お前好きだろ…熱燗…」

気づけば私たちはイルミネーション輝く街を抜け出し、駅近くの昔ながらのラーメン屋に辿り着いていた。煌びやかなデートスポットとは真逆の、レトロな暖簾が出迎える。

「いらっしゃい!」
湯気が立ち込める店内には、他にも『イブ迷子組』らしき男女がちらほら。カウンターに座った私たちは、支那そば味玉のせを注文した。

「イブにラーメンなんて、なんか斬新…でも熱燗がむせる…カァ〜ッ美味しい…」
「これが良いんだよな…俺たちのスタイルってことで!」
拓海はニカッと笑い、湯気の向こうでその笑顔がいつもより、ちょっとだけかっこよく見えた。

「拓海、お前ついに彼女できたのか?」
突然、隣のおじさんが割り込んできた。酔っているのか、頬が真っ赤だ。

「違いますよ、ただの友達です!」
「へぇ〜、友達ねぇ。こんなイブに一緒にラーメン食べる関係が、ただの友達ねぇ…」
おじさんの言葉が、なぜか胸に刺さる。私は咳払いをしてごまかした。

「…拓海は、ずっと友達だよね…(度胸ないぞ拓海。いつもイマイチ押しが足んないのよね…OKなのに)」
「……うん、友達、かな?」
二人とも急にラーメンのスープを肴に熱燗をヤリすぎ、お決まりのイケナイことを考え始めた。なんだ、この微妙な空気は

店を出ると、雪がちらちら降り始めていた。

「寒いなぁ…」
「ほら、これ使えよ」
拓海は自分のマフラーを外して、私に巻いてくれた。至近距離で彼の顔が近づく。心臓がバクバクする。

「拓海…もしかしてさ…」
その後、なんとなく彼は、私の部屋にいた。(と言うか…持ち帰った…)結局これか、なんだこれ…。

「優香さ、今日俺と会えて嬉しかった?」
「……うん、めっちゃ嬉しかったよ…(あれ…?素直になれた…自分…)」
二人の間に静かな時間が流れた。夜空には星が瞬き、遠くで教会の鐘が鳴る。

そのまま朝になり
「優香さ…もし来年のイブも二人ともフリーだったら…付き合おうか…」

「えぇ〜そんなのヤダ…」 優香はは拗ねたように頬を膨らませ、ギュッとに睨むような素振りを見せた。
「そうか…フラれたな今回も…」苦笑いを浮かべ、肩をすくめてため息をついた。

「違うよ…今すぐ彼女にしてくれないとイヤって言ってんの…この鈍感男…」優香は拓海の首に抱きついた。
互いに笑い、確かめ合いながら、クリスマスイブは次の日の朝を迎えている。

「もうすぐお正月だな…実家帰るんだ正月…。一緒に来ないか…優香…」
「エェッ…行ってあげてもいいよ…もう一回…チュウしてくれたら…(笑)」彼女は確かめたかったんだろうか、甘えているのだろうか。

「優香はそんなところ可愛いよな…」
二人は良い意味でとんでもない人生の約束を結んでしまった…。

寂しいはずのクリスマスが、ひとりで食べるはずの小さな苺のショートケーキを見つめていた昨夜の自分…。

どうして…。こんなに幸せなクリスマスでいいの…自分…。


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