日本一の資料作成スキルを持つ社長から教わった話 その2
1 第2回講座
講座各回の後にブレイクアウトルームで参加者同士交流を深めるのですが、前回同部屋だった皆さんは在宅勤務の方ばかりで、かれこれ数か月在宅という方も。移動時間をかけずスムーズに講座へ参加できることは羨ましい限りです。
それでは、第2回講座を振り返ります。第1回講座では、プレゼン資料作成において"構想"が如何に重要かを説いていただきました(構想:作成 8:2)。今回はそのうえで、さらにこの”構想”を深掘りしていきます。
まずはアイディア準備から。
【資料作成のステップ】
1 構想
(1)プレゼン目的の明確化
(2)アイディア準備
① 全体ストーリーの検討
② 材料収集と発酵
③ 書き散らし
④ 構造化(フレームワーク)
(3)ドラフト作成
① 絵コンテ
② ..
2 作成
第1回講座の振り返りはこちらをご参照ください。
*また、前回に引き続きアカデミー生のKさんがわかりやすくまとめられていますので、こちらもご参照ください。
1-1 目的の明確化
構想は全体の8割を占める重要なステップ。構想のファーストステップとして、まずはプレゼンの目的を明確にすること。
投資の意思決定を成し遂げたいのか、企画を承認してもらいたいのか等。
目的によって資料の内容は変わってくるため、目的をクリアにするステップをとにかく大事にしてほしいとのこと。
【目的のない資料】
良さげなページの寄せ集めの構成。なんとなく終わる。
目的につながらず、お互い時間を浪費してしまう。
【目的のある資料】
最終的に相手にどう動いてもらいたいのかが明らか。
(ex1. 競合排除)
競合との違いが明確になっているページがないと意味がない。
自社の良いところだけを持って行くのは×。
(ex2. ROI合意)
リターンとインベストメントのどちらも定量的に示すこと。
大事なことは、目的に合った構成にして最後に相手にアクションを促す内容を盛り込むこと=ネクストアクションは何なのか合意して終わること。
顧客は忙しい。エグゼクティブならなおのこと。そういった方に何となく説明してアクションを期待するのでは×。
資料から余分なぜい肉をそぎ落とすこともポイント。目的が曖昧だと色々入れたくなる。目的を叶えるために必要なページ(目的→内容→アクション)しか存在しないはず。自分だと作成した資料に愛着があるので削除できない。誰かにレビューしてもらうと良い。
三村さんはマッキンゼー時代、こうした考え方が弱かったために、プロジェクト責任者へレビューを持って行くと、資料がアペンディクス(補足/添付資料)にどんどん放り込まれた経験があるとのこと。
余談ですが、USJをV字回復させたマーケターとして知られる森岡毅さんも、目的設定の重要性を強く説かれていたことを思い出しました。
マーケティングにおいて、戦略的思考を身に付けることが重要で、目的(Objective)→戦略→戦術の順に沿って考えること。
目的は戦略的思考の中で最上位の概念(≠目標:Target)であり、目的が変われば全ての戦略・戦術はやり直しになってしまう。
1-2 ストーリー検討/材料収集と発酵
良質なアウトプットには、良質なインプットが必要。構想段階で多くのインプットを行うこと。インプットの質・量がアウトプットに影響する。
マッキンゼーではプロジェクトの初めに情報収集を行う。社内外のネットワークを頼りに各分野の専門家へのインタビューやネット上の統計情報を集める等。
無数の情報が自分の頭の中にアップロードされると、それらが発酵し始め、各情報の関連性が浮かび上がってくるようになる。
ex.)プレゼン発表の場を1か月後に控えているとすると、その数週間前から頭の中のCPUの15%をいつも稼働させておく(プレッシャーのかかる状態)と、それまで情報収集したものが発酵しだす(=お風呂やランニング中にふとアイディアが思いつく感覚)。
1-3 書き散らし
コピー用紙の裏紙などを活用し、手書きで行うことを推奨(ワードやメモ帳で入力すると思考もエディターの構造に縛られてしまうため)。
人間の脳の記憶容量は極めて小さい(16キロバイトくらい)ので、あちこちに散らばっている情報収集したものを、脳の中で再展開することは困難。
そこで、書き散らす紙がある種のハードディスク(外部記憶装置=記憶容量の補助)の役割を果たす。関連性のあるもので囲んだり、削除したりして思考を構築していく。
1-4 構造化(フレームワーク)
書き散らしを続けていくと、自分の言いたいことの全体像が見えてくる。そこから、どういったフレームワークで説明することで納得感が出るかを考えていく。
フレームワークによって資料のわかりやすさが決まり、資料作成の生産性が高まる。フレームワークが決まると資料作成の6割が出来た感覚。最も悩むステップ。
一人でやって煮詰まるときは、誰かに話を聞いてもらうのも良い(ディスカッションパートナー)。
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資料作成における構想のステップ(アイディア準備)はここまでです。
1-5 目的の明確化の実例
〇CFOフォーラムでの説明
プレゼンのアジェンダは参加者に間接業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を納得してもらい、プロジェクトに関心を持ってもらうこと。
その後、MDR(インサイドセールス)がフォローアップした際に、前向きな一言を引き出させるための前捌き的役割。
①企業が一歩を踏み出せない危機感を煽る
②行間で読ませる(他社は既に着手している)
③導入までの社内の動きも含めた流れを説明
(初期検討はすぐに済むことを読ませる)
④ネクストアクションを促す強いメッセージ
⑤MDRによるフォローアプローチ
〇記者会見でのひと手間
記者会見配布資料の最後のページに、発表内容のうち、記事化してほしいポイントを整理したものを添付。
説明した内容を同じ品質で正しくマーケットに伝えてもらうためのアプローチ。
この記者会見のテクニックは、さらっとお話がありましたが、個人的には結構衝撃度が高めでした。
1-6 フレームワークのサンプル
〇(同じく)CFOフォーラムでの説明
これから話す内容の範囲をフレームワークで整理して定義。
ex.)コンカーの間接費改革について
企業の費用を分解すると直接費と間接費があり、間接費は発生源から整理すると、人件費、償却費、従業員経費、ベンダー経費、出張経費がある。
そのうえで、短期的な改善が困難な費用、短期的な改善が可能な費用に分けると、間接費のうちの従業員経費、ベンダー経費、出張経費について短期的な改善が可能。コンカーはそのそれぞれにクラウドサービスを提供しており、この3つを称して間接費改革と呼んでいる。
上記の場合に、もしいきなり「出張経費の改革が重要です」と言われても納得感がない。フレームワークを整理してあげると、ロジックだけでなく聞き手を迷子にしない効果もある。
コンカーの間接費改革については以下を参照にされると良いかもしれません。
他にも時系列を軸にしたサンプル等実際の資料を例にフレームワークを紹介。その圧倒的なフレームワークの引き出しの多様さに衝撃を受けたまま講義は終了しました。
最後に、三村さんはプレゼン力を高めるために、各種スクールをはじめとする数多くのトレーニングを重ねられているとのこと。努力を惜しまないプロフェッショナルな姿勢に、身の引き締まる思いでした。
以上で第2回講座の振り返りを終わります。