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SDGsで企業の成長が加速。返品率30%削減を果たした薬王堂HDの取組み

SDGs経営を志向するドラッグストア(DgS)企業にとって、「返品の削減」は喫緊の課題だ。東北を中心にDgSを358店舗(2022年2月期末現在)展開する薬王堂ホールディングス(HD)は、大手日用品卸売業PALTACとともに「返品削減及び在庫偏重解消による販売機会ロス削減」の取組みを実施。2022年7月に、サプライチェーンイノベーション大賞2022の優秀賞を受賞した。そのほかにも、同社は様々なスタートアップ企業とのコラボレーションによるSDGsの推進に積極的な姿勢を見せる。同社の活動の一端を紹介する。


SDGsに取り組むことで売上・利益が向上する

薬王堂HD常務取締役の西郷孝一氏は、同社がSDGsを志向する理由を、以下のように語る。

「海外ではSDGsを無視した経営をしている会社の商品は買わないという消費者が増えています。少し遅れているものの、日本もいつか必ずそのような時期が来るはずです。結果が出るのはまだ先かもしれませんが、どこかのタイミングでSDGsに取り組んでいるから売上・利益が上がるという時期が来ると考えています」

現時点では売上・利益上のメリットは小さくても、SDGsの推進に言及することで、従業員の意欲や採用面で、プラスのインパクトを感じているとも言う。「世の中にとって良い取組みをすると、従業員のモチベーションが違ってきます。単に商品を販売しているときより、顕著に前向きなフィードバックが返ってくると感じています」。採用面でも、そのような取組みを説明すると、良い反応を示されることが多い。

では、同社が取り組むいくつかのSDGs的な施策を紹介していこう。

店舗間移動を仕組み化返品率を30%削減

同社がいくつか並行して展開しているSDGsの取組みのなかでも、DgSの本業ともっとも緊密なものが「返品削減」の取組みである。DgSは他業態と比較して返品率が高い。そこで薬王堂HDは日用品卸売業大手のPALTACと組み、店舗間の商品移動システムを開発・運用することで、返品処作業の削減を目指すこととした。

しかし、返品を削減するためには、在庫や売数を見て、一店舗一店舗の在庫を調整したり、店舗間移動をきめ細かに行ったり、タイミングを見て発注を止めるなどの必要がある。「大手DgSでも返品は削減するべきという流れにはなりつつありますが、その調整を人間が手作業で行うには限界があり、仕組みなしに返品削減に取り組んでも長続きはしません。それを仕組みで解決したいという思いがありました」(西郷氏)

そもそも日用雑貨の返品理由は、年2回の棚替え・季節品、特売残、定番カットによるものなど様々であるが、今回はそれらに「店舗間の商品移動」という仕組みで対応することとした。

▲[図表1]返品業務の流れ

従来、返品業務は、返品を行う商品を店舗で検品・梱包し、それを卸、ベンダー、メーカーの物流センターで検品、仕分け、梱包、発送作業を行い、最終的には廃棄業者が焼却などの廃棄処理を行う(図表1)。いったん返品を行うと、その管理のために膨大な手間が取られ、移動のためにトラックに商品を積み込み、二酸化炭素が排出され、環境にとってはマイナスしかない。

▲[図表2]店舗間の商品移動の返品削減イメージ

そこで、薬王堂HDとPALTACは需要予測アルゴリズムなどのデジタル技術を活用した「店舗間移動システム」を共同開発し、ある店舗で余剰とされる商品を、PALTACの物流センターで仕分けし、売れ行きの良い店舗に移動するという仕組み(図表2)を構築することとした。

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