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「売上規模だけではなく、付加価値を追求する」マツキヨココカラ&カンパニー 取締役 松田 崇氏インタビュー
マツキヨココカラ&カンパニーの2024年3月期の売上高は1兆225億3,100万円、前年比7.5%増。営業利益は757億500万円、同21.6%増。営業利益率7.4%は業界1位である。独自路線で高い収益性を誇る同社の戦略を、取締役で各戦略を指揮するキーマン、松田崇氏に聞いた。
(聞き手/月刊MD編集長 野間口 司郎)
顧客、商品、エリアを戦略的にフォーカス
─上位寡占化、売上高1兆円企業の増加など業界は大規模化に向かっていますが、この中での成長戦略をどのようにお考えでしょう。
松田 売上高というのは企業を評価するときのひとつの指標ですが、売上がその企業にとってどれほどの価値があるのかは常に見ていく必要があると思います。
例えば、売上高1兆円の企業が経営統合すれば企業価値(株価時価総額)が2倍になるかというとそうはなりません。売上高は外側の話であって大切なのは、ターゲットとするお客様、エリア、事業領域などがどれほど戦略に沿っているのか、その中身だと思っています。
─付加価値、収益性でいうと、2024年3月期のマツキヨココカラの営業利益率は7.4%、小売事業に限れば7.9%と業界では断トツです。
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松田 7.9%もひとつの通過点だと思っていますが、価値のある売上を追求するためには、戦略をもう少しクリアにする必要があります。われわれの中核ドメイン(事業領域)は長年HBC(ヘルス&ビューティケア)に置いていますが、その中でも売れれば何でもやるという訳ではありません。成長するため、付加価値を高めるために何を売るべきかさらに精度高く定めていきます。
M&A戦略も同様に規模の追求だけを目指す統合はしません。出店エリアにしても店数を増やすためにどこにでも出すのではなく、厚い人口があり第3次産業の多いエリア、就業者率なども精査して、美容感度が相対的に高く購買力のあるエリアを選んで出店していきます。
さらに言えば、ターゲットとするお客様も見定めて各種の施策を実行していきます。私たちの商品政策と価値観の合うお客様にフォーカスしなければ、価格で動くお客様にいくらフォーカスしても、近くに安いお店ができればそちらを選ぶでしょう。
お客様の価値観にはいくつかあり、低価格に最も大きな価値を置くお客様=価格敏感層も一定の割合で存在します。業界を広く分析していますが、価格敏感層は高い企業では40%以上を占めますが、弊社は10%未満です。
フォーカスするお客様、商品、エリアを戦略的に定めて、得られる価値を追求していきます。商圏の中で生活に必要な商品は全て品揃えして、客数と売上を追っていく企業とは一線を画した経営です。
PB戦略のターゲットは美容感度、ヘルスケア感度の高い人
─プライベードブランド(PB)の売上構成比が13%まできました。PBは御社の成長にどのように貢献しますか。
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