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Retail AI 永田洋幸 CEOインタビュー「5年後には無人店舗業態を確立したい」
破竹の勢いで進撃を続けるトライアルグループ。売上高6,531億円(2023年6月期)、全国285店舗(2023年6月末現在)を展開する。同社はマルチフォーマット戦略を掲げ、様々な業態開発を行う傍らで、Skip Cart(スマートショッピングカート※)やAIカメラ、サイネージの活用など、様々な実験にトライし続けている。その強さの根幹にある、リテールテクノロジーとは?そして同社が目指すエコシステムとは?トライアルのシステム開発を行うRetail AIの永田洋幸氏にお話を伺った。(聞き手/編集部 鹿野 恵子)
※これまで「スマートショッピングカート」と呼んでいた決済機能付きカートシステムのブランド名が2023年10月23日より刷新され「Skip Cart」となった。
顔認証決済によるフリクションレスな買物体験
─トライアル躍進の影にRetailAIさんの存在があると感じています。御社はどのようなビジョンでシステム開発を行われているのでしょうか。
永田 弊社は「テクノロジーによって、新時代の買物体験を生み出し、流通の仕組みを革新する」というビジョンを掲げ、2015年からトライアルグループ内でシステム開発を行っています。
会社としては創業5年になり、グループ社員は約676名です。具体的にはSkip Cartや、AIカメラ、サイネージ、分析プラットフォーム、そしてトライアルGOを支えるGOシステムの開発などに携わっています。
私たちは店舗内のIoTデバイスと、AIによるデータシステムを統合した分析プラットフォームを構築し、小売業だけでなく、メーカー、卸売業の皆様に利用して頂きたいと考えています。そこで重視しているのは、以下3つのポイントです。
まず、①フリクションレス(ストレスフリーな顧客体験戦略)、そして②ユニファイドデータ(データ統合戦略)、最後が③データマネタイゼーション(データによる収益化戦略)です。
─フリクションレスとは、「摩擦がない」という意味ですね。
永田 はい。フリクションレスであることは、今後の買物体験にとって非常に重要なことだと思います。ETCや交通系ICカード決済などはフリクションレスのよい例です。
もはや高速道路の料金を現金で支払う人はほとんどいませんし、駅の改札もタッチで通過している方が大半でしょう。これらのソリューションは、気付かないうちに大半の人が使うようになり、一度体験すると、簡単に前の行動に戻ることができません。
私たちがSkip Cartで実現しようとしているのも、このような世界です。これからの買物は、無人決済で「スルー(通り抜ける)」できるようになることが不可避だと私たちは考えています。今後は、さらに進んで顔認証決済などが浸透していくはずです。
─とはいえ、グローバルに目を向ければ、Amazon GOやそのほかの小売業のセルフチェックアウトシステムなど、「スルー」を目指しつつ、なかなか店舗数を増やせなかったり、撤退している技術も少なくありません。
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