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薬王堂 西郷 孝一社長インタビュー「売場データで施策の効果を検証するPBMAの目指す未来」

その売上増は、広告の効果か、店頭展開の結果なのか、はたまたポイント還元の賜物か…? 小売業は様々な関係者がそれぞれの立場から同時に施策を打つため、適切な効果検証ができていないという課題が以前から指摘され続けてきた。東北を中心にドラッグストア(DgS)を展開する薬王堂が2024年4月に発表したPBMA(Purchase Behavior Modification Analytics/購買行動における行動変容分析)は、同社の持つ様々な売場のデータを総動員して、施策の正確な効果検証を試みる取組みだ。株式会社薬王堂代表取締役社長執行役員の西郷孝一(たかひと)氏に、その狙いと同社のデータ活用戦略について聞いた。(聞き手/MD NEXT編集長 鹿野 恵子)


あらゆる売場のデータを集め分析可能な状態に

─今回発表されたPBMAの狙いについて教えてください。

西郷 小売業界全般の課題として、実施した施策の効果をデータに基づいて検証しきれていないという点が挙げられます。

例えば、売上を上げようとして、様々な関係者が施策を打ちます。商品部であれば、価格を変化させる、ポイントを付与する、プロモコーナーに展開する、チラシに掲載する…など。

一方、店舗ではフェース数を増やす、売場の場所を変える、接客で売り込む…などに取り組みます。メーカーさんは様々なメディアで広告を打つでしょう。これでは、ある商品の売上が上がっても、どの施策が要因だったかは検証しきれません。

─「テレビCMを打ったから売上が伸びた」というメーカーさんもいますが、同じタイミングで小売業側が売価を変えたり、売場を変更したから、売上に影響が出たとも考えられるということですね。

西郷 そうです。いろいろな人がそれぞれの立場から、様々なタイミングで介入行動を起こします。本来であれば、それをすべて把握して検証することが必要なのですが、データが整っていないという理由で、それができている小売業はほとんど見受けられません。

私たちは、データサイエンティストとの長期的な連携により、蓄積された自社の様々なデータを分析可能な状態へと整えてきました。これらデータの中には、購買情報(ID-POS)や販促情報だけでなく、売場や在庫情報なども含まれます。

データを一ヵ所に集約したことで、今回の取組み基盤をつくることができました。その基盤を基に施策の効果を分析し、それを次の施策に生かして、売上の最大化につなげようというのがPBMAの基本的な考え方です。

─「売上」であって「利益」ではないのですか。

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