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韓国ダイソー(アソンダイソー)の成長戦略「多種多様な品揃えとブランドコラボで築いた市場リーダーシップ」

日本では国際的な原材料価格の上昇や円安による輸入コストの増加、さらには天候面でのリスクなどの背景から物価上昇が続いている。それはアジア諸国においても同様であり、韓国でも消費者物価が約3%上昇し、物価高騰が深刻化している。生活用品の価格が上昇し、消費者はよりコストパフォーマンスの良い商品を求めている背景の中、韓国ダイソー(以下、アソンダイソー)はその「均一価格」政策と多様な商品ラインナップで消費者の支持を集めている。さらにアソンダイソーは日本のダイソーとは異なる戦略で、地元市場に根付いた人気を誇り、特に若年層や外国人観光客に支持されている。今回は、韓国ダイソーの人気の秘訣について迫っていきたい。
(執筆/本誌韓国特派員 岡村 麻衣子 取材・監修/ユン・モンラク)


大創産業の成功体験をモデルに韓国ダイソー(アソンダイソー)の設立と成長

日本でダイソーを運営する大創産業は、日本国内で最大の100円ショップチェーンであり、1972年に広島県で創業された。創業者の矢野博丈氏はコンセプトに「安くて品質の高い商品を提供」を掲げ、それを実現してきた。

このビジョンが支持され、急速に全国に広がり、2023年12月末現在では3,813店舗を展開している。アイテム数も2位以下を大きく上回る約76,000個をラインナップしており、豊富な品揃えにおいても人気を集め、日本で不動の地位を確立している。

一方、韓国のダイソーは大創産業が日本で成功したモデルを受け継ぎ、韓国国内での展開を開始。運営会社は「アソンダイソー」であり、アソンダイソーの前身は1992年に設立されたアソン産業である。

創業者のパク・ジョンブ会長は1997年にアスコイブンプラザ1号店をオープンし、生活雑貨販売事業に参入。その後、2001年に日本で100円ショップを運営してきた大創産業が約4億円を投資し、会社名をアソンダイソーに変更。

大創産業は、アソンダイソーの株のうち34.21%の持ち分を確保し、第2位の株主となっていたが、2023年にすべての株をアソンダイソーに売却。合弁解消により、資本関係が消滅し、アソンダイソーは100%の韓国企業に生まれ変わった。

大創産業の投資の経緯としては、大創産業がアソン産業の持つ製品力を高く評価し、独占取引を提案したことに端を発している。

アソン産業側は、大創産業に対して、経営に介入せず、ダイソーの名もロイヤリティーなしで使えることを条件としていた。

その後、アソンダイソーは成功を収め、約20年間で、韓国国内に約1,519店舗(2023年現在)を展開、韓国国内での存在感を示した。

売上高は、2019年に2兆ウォン(約2,275億円)を突破した後、2023年には2兆9458億ウォン(約3,300億円)、営業利益は2,393億ウォン(約270億円/営業利益率8.1%)に達し、売上高は過去最高額を更新。

見事な成功を収めたアソンダイソーは、大創産業側の全株式約5,000億ウォン(約550億円)を買い取ることになった。

完全な韓国資本の企業となったことで、反日感情が高まった際の政治的リスクや不買運動の影響を受けにくくなり、安定した経営が可能となった。

ライフスタイル提案型トレンド商品と多彩なショッピング体験

アソンダイソーのコンセプトは「新しいライフスタイルの提案」で、デザイン性やトレンドを意識した商品展開が特長。若年層やトレンドに敏感な消費者をターゲットとしたラインナップが多い。1,000ウォン(約100円)が基本価格であるが、それ以上の高価格帯商品も充実しており、韓国市場向けにローカライズされた商品も多く見られる。

▲[写真1]アソンダイソーのシンボルショップでもある「明洞駅店」
12階建ての全フロアがダイソーである

その中でも、韓国を代表する観光地、明洞に位置する「ダイソー明洞駅店」は、12階建てのビル丸ごとがダイソーの超大型店舗である(写真1)。

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