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『我は汝に誓う我が祖国よ』 I Vow To Thee, My Country

英国の諜報機関の職員である主人公ジョニー・ウォーリッカーは、ビル・レイの当たり役である。

40歳から役者に転向という経歴も然る事乍ら、英国出身のレイモンド・チャンドラーの主人公フィリップ・マーロウを思わせるハードボイルドな役柄を見事に演じている。この映画の映画の見所は英国が米国からもヨーロッパ大陸からも距離を置いてモノを観る世界観の象徴である点だ

© comemo148177230

BREXITを唐突に思う人は、英国に行ったことのない人が多いと多いと思う。私も数ヶ月しか住んだことがないのだが、英語の教師にノルマンコンクエストの話して、顔を真っ赤にして怒らせたことがある。とてもプライドが高く、フランス人とのライバル意識が強いことに驚いた。まるで日本と韓国のようだと思った。ただし、英国人は基本的に紳士的だし、誠実さをhornorと訳しても間違いとは言えない紳士の国でもある。残念ながら、頭が良い反面、無駄に事情をこじらせる癖があるのが世界の頭痛の種であろうか。存外、小心なのも致し方がない。チャーチルが表で勇ましく、実は妻の前では弱音を吐くヘタレだったとしても、ハードボイルド作家のチャンドラーが愛妻を無くして傷心自殺を企てたのも、そういう脆さや繊細さがあるのに違いない。この映画でも、米国に強気に出たい姿勢はあるものの、結局は長いものに巻かれる裏切り者が登場し、ウォーリッカーはタフで、知的で、どこに行っても女にもてる役を演じて、最後に名誉を重んじた演技で幕を閉じるのだ。

第一作のPAGE8が良作なのもジャズ狂いのウォーリッカーが大学の同窓生にして、上司かつ元妻の旦那の葬式に『我は汝に誓う我が祖国よ』 I Vow To Thee, My Countryを選ぶところや、宗教心を疑われても怒らないウォーリッカーが自分の愛国心を疑われた時に激怒する性格は英国人の気概を表している。そういった背景をよく知らないと映画『ダンケルク』も『チャーチル』も理解出来ない。

日本では交響曲『惑星』で知られるこの曲は、チャーリチルの国葬の際にも流され、また不幸なしを遂げたダイアナ妃の大好きな曲でもあった。 

https://www.youtube.com/watch?v=87Xkr8z3lEo

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