フィリップ・K・ディックの作品に見る自律運転タクシーの未来
https://en.wikipedia.org/wiki/Philip_K._Dick
— 国連事務総長の主治医を務めることになった主人公の精神科医は同盟国が裏切り、地球への侵攻が迫る中、未来に妻が不治の病にかかって精神病院に入院するという事実を知ることになる。その後、主人公は未来の自分の助言にしたがって妻と離婚する。
以下、主人公が空港で乗った自律走行タクシーに問いかける場面。
タクシーに向かってエリックは出し抜けにこんな質問をした。「君の奥さんが病気だとしたら-」 「私には妻はいません」とタクシーが答えた。「自律運転タクシーは結婚しませんので。そのくらいのことは赤ん坊でも知っています。」「そうだな」エリックも同意した。 「仮にきみがぼくの立場で、君の奥さんが病気だとしよう。重病で、回復の見込みはない。きみはそんな奥さんを捨てるかね?それとも、そばにいてやるかね?たとえ、十年先の未来に旅をして、奥さんの脳の障害はどんなことをしても絶対にもとには戻らないことがはっきりわかったとしても?それに、そばにいてやることは-」 「おっしゃる意味はわかります」とタクシーが口をはさんだ。「一生看病に追われることになる」 「そのとおりだ」とエリックは言った。 「わたしならそばにいてやりますね」とタクシーは言い切った。 「なぜだ?」「人生は様々な様相の現実から成っていて、それを変えることはできないからです。妻を捨てるということは、こうした現実には耐えられないって言っているのと同じなんです。自分だけもっと楽な特別の条件がなければ生きて行けないって言うのと等しいことなんです。」 「きみの言うとおりのようだな」エリックは少し考えてから、言った。 「わたしも妻のそばにいてやることにしよう」 「神の祝福がありますように」とタクシーが言った。 「お客さんはいい人なんですね」
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