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テクニカルイラストの技法を活用しよう!

前回の記事「イラストレーターの画力を上げるにはデッサンが必要か」では、デッサンはやっぱり必要と結論付けました。
しかし、デッサンを繰り返せるくらい絵を描くのが好きなら、すでにそれなりの技量があると思います。また、メディカルイラストが必要な医療従事者は、本来の業務が過密になりがちで、画力向上のための時間も限られていると思います。

イラストでスピーディに説明したいけれど、絵の練習をする時間は無い、絵を描くことに苦手意識がある。そんな方は、是非テクニカルイラストの技法を使ってみてはいかがでしょうか。

テクニカルイラストとは

テクニカルイラストは、その名の通り技術的なことを説明するイラストです。2次元の紙の上に3次元の立体を表し、主に機械設計や保守・操作マニュアルに用いられます。ですから、書いた人が誰であっても、イラストを見た人が誰であっても、描かれたイラストが表現しているイメージは一つです。見た人が、同じ大きさ・形の立体を想像できるように描く技法が使われています。

図1:テクニカルイラストレーションの例


平面の図面から立体図を作成する技術は、「テクニカルイラストレーション技能士」という国家資格で検定されていて、図の作成方法にはルールがあります。モノづくりの現場では、決められたルールに従って、設計と3DモデリングをCADソフト上で行います。そのため、多くのCADではテクニカルイラストでの出力(アセンブリ機能)が機能の一つとして提供されています。

ソフトが出力できるよう、視覚的な表現ができるように規定されているので、個人のセンスや画力の習熟度に依存しません。図の作成ルールに従えば、誰が描いても同じイメージを表現できます。テクニカルイラストの技法を、属人的なアートの表現ではなく、解説図の基本表現として理解しておくと便利です。

メディカルイラストの面と方向を理解する

解剖学では、人体の面と方向を 図2 の名称で表しています。

  • 赤:前額(頭)面。腹側と背側を分ける面。

  • 青:水平面。直立姿勢の場合、頭側が上向き、尾側(びそく)が下向き。

  • 緑:正中矢状面。身体の中央で縦に左右を分ける面。並行する面は、矢状面と呼ぶ。

図2:人体の面と方向


テクニカルイラストの元になる製図の場合は、平面、正面、側面の三面を表す、三面図を用います。日本では、それぞれの面を表現する正投影図法(第三角法)を使うことがJIS(日本工業規格)で規定されており、各面の図の配置も決まっています。

図3:正投影図法(第三角法)で描く場合の図の配置

図3で表しているのは、上から時計回りに、平面図(上面図)、正面図(断面図)、側面図(左側面図)です。
外観からわからない形状の場合は、下から見た平面図(底面図)や、部分的な断面図を使いますが、どんな複雑な構造物であっても、製図を使えば再現できます。

人の体の多くは、柔らかい組織でできています。姿勢によっては、部位の形状も異なりますし、重力で引っ張られる向きも異なります。また、広角レンズで観察している時や、術者の立ち位置が変わった時には、視点の方向や角度が重要になります。

製図の見方をもとにしたテクニカルイラストの技法を使うことで、術者や助手・看護師といった医療従事者はもちろん、患者さんやご家族など、医療に関わる方が、身体の内部を理解しやすくなるのではないでしょうか。

まとめ

メディカルイラストを使う場面は、専門用語を噛み砕いて説明するシーンが多いのではないかと思います。患者さんに理解してもらいたい、専門外の方にスピーディーに伝えたい、そんな場面で一番大切なことは、イラストを見た人が対象を確実に認識する、ことです。
求められているのは、印象を表現するアートではなく、伝えたいことを相手に伝えることです。(人によっては、人気絵師さんのようにアートとしてのオーダーもあると思います。)

  • 見せたい相手が理解できるような視点で描く

  • そのためにテクニカルイラストの技法を活用するとよい

次回は、具体的なポイントを説明しますので、お楽しみにどうぞ!


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