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ビートルズの新曲がやってくる! (6) ポールの釈明 全訳と解説
ビートルズの新曲について、前回はショーンレノンの弁明ツイートをご紹介しましたが、昨日本丸のポールマッカートニーが釈明をSNS発信しました。
ポールの表明として、カコイチに伝えたいことが明確で、構成が綺麗な文章です!普段は口語調だったり、いい意味で説明不十分だったり、ゆるさが持ち味のポールが、くっそマジメなコメント出してきた!!!
この釈明文にはポールの想いや示唆が含まれていると思うので、全訳とそこから読み取れる情報を掻い摘みます。
・ポール釈明文の全訳
ポールがSNSに表明した全文はこちら。
Been great to see such an exciting response to our forthcoming Beatles project. No one is more excited than us to be sharing something with you later in the year.
— Paul McCartney (@PaulMcCartney) June 22, 2023
We’ve seen some confusion and speculation about it. Seems to be a lot of guess work out there. Can’t say too much…
僕らが予定しているビートルズ プロジェクトに対してみんなのとてもエキサイティングな反応を見ることができてうれしかったです。今年後半に披露するプロジェクトを誰よりも楽しみにしているのは僕らなのです。
ただこれについて、いくつかの混乱と憶測が見られました。そこには多くの当て推測もあるようです。現段階では多くを語ることはできませんが、明確にしておきたいのは、人工的または合成的に作成されたものは何もないということです。すべて本物であり、僕らみんなが参加しています。僕らはいくつかの既存の録音をクリーンアップしました。このプロセスは何年にもわたって行ってきたものです。
僕らと同じように皆さんにもこの作品を気に入っていただければ幸いです。詳細は追ってお知らせします - ポール
・解説
内容を掻い摘んで解説します。
まず、文章の構成はビジネスレターチックです。
3段落に分かれたこの文章のうち、言いたいことは当然、2段落目です!!
非常に丁寧な言葉遣いで書いていますが、言いたいことを直接的に書くと
「これについて、いくつかの混乱と憶測が見られました。そこには多くの当て推測もあるようです。」→言ってもいないことを妄想ゲームしてるみたいだけど
「人工的または合成的に作成されたものは何もない」→ジョンのボーカルはAI生成じゃない
「すべて本物であり、僕らみんなが参加しています。」→僕だけがいじった作品じゃない
という、ポールさんお怒り?悲しみ?モードの内容です。
1・3段落目は、前書きと結びなので文章の趣旨ではないですが、そこで目一杯気分を上げてくれるあたりが、優秀なビジネスマンだなあって感じです(笑)
そして趣旨ではないと言いつつも、今後発表されるもののヒントも散りばめられているので、さらにポイントを見ていきます。
・予定しているビートルズ プロジェクト
ここでは「新曲」と書かずに「プロジェクト」と書いてきました。「プロジェクト」は単数で書かれていますが、なにか「セットもの」としてリリースされる可能性があります。
もうひとつ重要なことは、実はポールは「新曲」といったことはありません。
BBCのインタビューでは「最後のビートルズのレコード(final beatle record)」と言っており、今回は「予定しているビートルズ プロジェクト(forthcoming Beatles project)」と言っています。旧曲の焼き直しって可能性も、、他の情報見てるとあまりないですけど。「新曲(new song/track)」と表現しないのは、何か思うところがあるのかなと、guess-workしてしまいます。
・今年後半に披露する
「今年」の中でも「後半」ってことが明言されました。もう6月末だからこれから発表したら後半になるのは当たり前だけど、、ビートルズ関連のリリースといえば、9月・10月あたりでしょうか🍏
・誰よりも楽しみにしているのは僕らなのです
ポールと残されたメンバーや関係者は、仕上がりに満足していることが読み取れます。ポールは自分だけの意見でもビートルズのことは「僕ら」と表現しがちなのでわかりませんが(笑)ショーンも絵文字でアゲアゲリプライをしているので、少なくともレノン・マッカートニー陣営は満足しているようです。
❤️❤️❤️❤️
— Seán Ono Lennon (@seanonolennon) June 22, 2023
⚡️⚡️⚡️⚡️
🔥🔥🔥🔥 https://t.co/dIyNA4V33c
・僕らみんなが参加しています。
4人全員が新曲に参加していることが、ポールからも明言されました。ショーンが既に答えていたことではありますが、ポールから伝えられる重み!ちなみに英語では「play」と表現されています。歌や演奏にそれぞれがどのくらい寄与しているかは、開けてからのお楽しみ、ですね!
・(クリーンナップの)プロセスは何年にもわたって行ってきたもの
これは再度、新曲が「ナウアンドゼン」である可能性を高める発言です。
なぜならナウアンドゼンは、フリーアズアバードよりも雑音が多く、アンソロジープロジェクト時にボツとなった大きな理由の一つです。
また、その後ポールはナウアンドゼンに関して、前向きな姿勢を示し続けており、ジェフエメリックらと進めたという噂もあります。このように「何年にもわたって」トライし続けていた曲は、ナウアンドゼンしかないのではないかと思います。
・詳細は追ってお知らせします
時期的な記載はありませんが、ポールがリークしたのだし、レコーディングも終わってるし、秋にリリースすると仮定すれば7月くらいには公式発表になるかな!と期待。
・問題点
さて最後に今回の騒動、一部の人が「AIを使ってジョンのボーカルを作った」「ポールがAIを使ってジョンの曲をリリースする」と誤解した原因を考えてみたいと思います。
ポールは情報をリークしたBBCのインタビュー、短い言葉の中でも「今年リリースされるビートルズの新曲の音声分離にAIが使われた」ことを明確に伝えていました。
またメディアも、わざとポールの発言を切り取りをしたわけではありませんでした。「AIによるビートルズの新曲」「ポールが発表」と勘違いしやすいタイトルは並んでいましたが、報道のタイトルが情報不足なのは仕方がないし、本文には軒並み「ビートルズの新曲」の「音声分離にAIが使われた」ことが書かれていました。(少なくとも私が読んだいくつかの主要メディアの記事は、、)
それなのに誤解が生まれた要因はおそらく、世間が生成AIブームの時に報道タイトルが一人歩きしたからでしょう。記事を読めばわかるのに、タイトルや短い言葉だけで理解したと思ってしまうのは、SNS時代の負の影響かもしれません。
オリジナルのポールの発言音声や文字がツイッターやネット上で誰でも見れる状態であるにも関わらず、メディアや人を介して歪められた情報が伝播していくのはあまりにも滑稽です。
ビートルズ時代からの経験で、情報が歪曲して伝わることなんか百も承知のはずのポールが、リーク発言より遥かに長い釈明文をわざわざ出すとは。
"When we came to make what will be the last Beatles record... We were able to get John's voice through AI."
— BBC Radio 4 Today (@BBCr4today) June 13, 2023
Ahead of his exhibition at @NPGLondon of Beatles photos, Sir Paul McCartney spoke to @Marthakearney and revealed that a new record will be released this year.#R4Today
情報は可能な限り出所に近いところで抑えましょう、と自戒を込めて。