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The Lyrics -Revolver後編-
昨年発売された、ポールの公式自伝ともいうべき「The Lyrics」から、Revolver収録曲をピックアップするシリーズ後編です。
前編はこちら💁
Track10 For No One
「別れの曲」とポール自ら語るように、約5年間を共にしたジェーンアッシャーとの別れがインスピレーションとなっている曲。ポールの曲で、進行形のパーソナルな経験がここまで明らかに形となった曲は少ないのではないでしょうか。
多くの人が経験しているように、僕もいくつかの別れを経験して、曲にできる感情を持っていたし、曲にすることで他の人も共感を抱く感情だと感じていた。曲では、ある2人の別れを歌っているけどもちろん、自分の経験からきたもの、自分自身を語っているものだ。
ジェーンと僕は5年ほど付き合ってて、結婚するつもりでもいた。だけどその時が近づくにつれて、何かが違うような気もしてきた。
彼女の多くのことを愛してたし、彼女の多くのことにずっと敬意を抱いてる。彼女はとても素敵な女性だけど、ただパズルの1ピースがあわなかったんだ。
90年代に出版された自伝「Many Years From Now」では、1966年ジェーンとのスキー休暇中に「彼女との言い争いを歌ったもの」と語っていたポール。今回の「The Lyrics」では、1965年オーストリアでの「ヘルプ!」収録中に書かれたことになっており、何が事実かよくわかりませんが、、
「作曲したというよりは、降りてきた曲」と語っている通り、当時のポールの才能の溢れ具合を表す不滅の名曲の一つです。
Track13 Got To Get You Into My Life
「僕らの人生に取り込んだものは、、マリ◯ァナだろうね」と率直に語るドラッグソング。
僕のポットへのラブソングさ。僕らの人生に入り込んできたのはソレだし、僕だけがポットの曲であることを知っててこんな風に曲を書くのが面白いと思った。何年かしてから他の人にも何のことか語るようになったけど、レコーディングしている時はただの歌詞だった。
当時はただ楽しかったんだ。数年後にドラッグは闇をもたらしたけど。はじめはただ庭で過ごす晴れの日みたいな時間だった。
The Lyricsでは、ボブディランに誘われたポット初体験から、金管楽器のアレンジ、クリフベネットのカバーのアレンジについてまで幅広く語られています。
Single Paperback Writer
Revolverセッションの中頃にレコーディングされ、Rainとの両A面シングルとしてリリースされたこの曲。ポールの物語調歌詞の代表曲について、こんな風に語っています。
視野が開かれて、サンキューガール・フロムミートゥユー・シーラヴズユーっていう単純なラブソングでなくてもいいんだと気がついた。これまでポップソングにならなかったようなようなテーマを探し始めたんだ。
野心にあふれた小説家になりきるアイディアを思いついてね、出版社に自分を売り込む手紙を書く姿を思い浮かべたのさ。だから歌詞も「拝啓」から始まる。
ポールが住むロンドン中心部から、郊外ウェイブリッジのジョンの家まで1時間ほどのドライブをして、曲の構想を練ることがパターンとなっていたこの時期。ペイパーバックライターも同じくドライブ中に構想を練り、ジョンの家で歌詞と曲を仕上げた合作。「ビーチボーイズのサウンドが直接的に影響してるよ。特に彼らのハーモニーが大好きだったからね」
以上、The Lyricsから、ポールがメインで書きポールが歌ったRevolver SE収録曲を取り上げてみました。ポールがどんな想いで曲を創り上げたのか、想像しながらRevolverをより楽しめたら幸いです。
ところで、誰もがポール主導の曲と信じて疑わなかった「Yellow Submarine」のアイディアが実はジョンから生まれていたことが、今回初公開のワーキングテープで明らかになりました。
ポール自身この記憶はよほど薄れていたようで、Many Years From NowでもThe Lyricsでも(RevolverSEの序文でも?)あたかも自分の曲のように語っています。リンゴが最終的に収録したコミカルなバージョンはほぼポールのアイディアのようなので当たらずとも遠からずですが(それでもデモはジョンに歌わせるポール/笑)、作詞作曲をした本人たちの記憶さえすべてではないことを教えてくれる興味深い資料ですね。