柘植の櫛
我が家は昔から、皆が柘植櫛を使用しています。もう、20年以上使っているものもあります。
ある時、そのうちの1本の歯が折れてしまったので、新しく買おうと百貨店に出かけていきました。
「柘植の櫛、売っていますか」店員さんに尋ねてみました。
「10年前までは、売っていたんだけど・・・。」
申し訳なさそうに、そうおっしゃいました。
仕方がないので、九州物産展まで待つことにしました。
国産のさつま柘植櫛を買いました。しばらく見ないうちに、ずいぶん高値になっていました。
材料も、職人さんも少なくなっているとのことでした。
柘植櫛は櫛として使用するだけでなく、目のものもらいの治療にも使えます。柘植櫛の背の部分を畳のへりでこすって、摩擦熱を発生させ、それを患部当てて治すのです。不思議と、よく効きます。
柘植櫛が絶滅してしまう前に、もう少し買い足すことにしました。
それぞれ違う職人さんが作ったものをいくつか購入してみました。
今、すべての工程を手作業で作成できる職人さんは、日本で1人だけになってしまったそうです。彼の工房に予約を入れて、櫛を購入しました。
他の職人さんが作った櫛との違いは、しなやかさにあるような気がしました。髪を梳かすと、櫛の歯が髪に沿うようにしなってくれるのです。そして、目の細かさも他の櫛とは違います。
このような、腕の良い職人さんがいなくなってしまうのは残念です。
本当に良いものを知る機会が失われてしまいます。
良いものを使うと、それなりの感動があります。
清水から飛び降りる思いで購入してみましたが、とても満足しています。