陰と陽とアホが織りなす世界
父が、ある町へ転勤しました。
以前父と一緒に働いていたことのある上司(陰)と、へんてこな部下(アホ)と父(陽)が揃いました(笑)。
このへんてこな部下は、父に奇妙な懐き方をしていました。
「陽さんが死んだら、俺、絶対葬式に行くっすよ!」
(なんて、センスの悪い事を言うんだ!)
「俺、陽さんに絶対年賀状出すっすよ!」などと、ため口で喋ってきます。
(ハイ、これは、口から出まかせです!)
極めつけは、「陽さん、娘さんとか、いるんすかね?お父さんと呼ばせてもらって・・・」もちろん、ぞっとした父(笑)。
(こちらから、願い下げでございます!)
ちなみに、父は彼に「その場しのぎの○○(名前)」というあだ名を授けていました(笑)。それを聞いても、本人はめげません。
生意気なアホさん。職場の誰からも相手にされていませんでした。
父は、アホさんに自由に喋らせて、キツイ一言(真実)を浴びせます。
ただし、これは、本人と周りの人達が笑えるように工夫されていました。
陰さんが、別室でこの会話を聞いていました。この職場のTOPです。
気難しそうな顔をして出て来た陰さん。怒っていました。
「アホ、お前、年上の人に向かって『俺』って○回、言ったろ?」「失礼じゃないか!」「謝りなさい!」
なんと、陰さんはアホさんの「俺」を数えていたのでした。
父は、心の中で大爆笑です。
「こんな奴に何も本気で怒らなくても( ^ω^)・・・。」
シュンとするアホさん。まさに陰さんは、アホさんの天敵でした。
父がこの職場にやって来るまで、アホさんは借りて来たネコの様に大人しくしていたんだそうです。
やっと、話し相手が出来たアホさん。
陰さんもその気難しい性格の故に、皆から恐れられ、孤立していたそうです。陰さんをいじれるのは父だけでした(笑)。
父がやって来るまで、職場はお通夜状態だったそうです。
父は陰さんとアホさんに、遠慮なくズケズケとものを言います。
(一応、父なりに言葉は選んでいるはずですが・・・)
茶化されて喜ぶアホさんと、照れる陰さん。
陰さんが、しみじみと言います。
「アホ君は陽さんが来てから、明るくなったなぁ~」
職場は、笑いに包まれるようになりました。
一歩間違うと、危険な技術を駆使する父。私には、真似できません。
もちろん、この技術は母に対しても遺憾なく発揮。
ああ、氷の様に冷たい母が笑っている・・・。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」父はそう言いますが、残念ながら、私にはその勇気が備わっていないのでした(笑)。