分からないのが恐いんだ
母の実母(祖母)。
大変、不幸な人です…。
配偶者は、ロクでもないケチ男(祖父)で、家にほとんどお金を入れませんでした。
それ故、生まれたばかりの母は捨てられてしまうことに…。
でも、次に生まれた母の弟は、祖母の手で育てられました。
極貧状態の中、肩を寄せあって静かに暮らす親子。
諦めの境地にいたのでした…。
しばらくすると、母が逃げ帰って来ます。
母は、思いました。
「なんや、こやつら親子は?」
「目が死んどるやないか…」
人生に希望を見出だせなかった祖母の目は、虚ろ。
母は、不遇な幼少期を過ごしたにも関わらず、人生を諦めてはいませんでした。
誰かにコテンパンに叩かれても、怒りの力で跳ね返して来たのです。
恐ろしい程のエネルギーを放つ母の登場で、家庭の中に嵐が吹き荒れ始めます。
「お前ら、貧乏に負けとらんと、しっかりせんかー!」
幼子とは思えぬ可愛げのない母を見て、祖母は嫌悪感を覚えます。
「この子を大人しい女の子に躾なければ…」
祖母の戦いが開始。
しかし、そのやり方は大変マズイものでした…。
毎日、母の存在を否定する様な言葉を浴びせ、自己主張を封じ様とします。
「あんたのその顔は、すかん!」
「貧乏なりに、大人しくしとかんかー」
「何でも、諦めるんじゃわ~」
皮肉なことに、母との戦いの過程で、祖母は生命体としての輝きを放つ様に…。
毎日、三角目をしていがみ合う祖母と母。
戸惑う弟と、我関せずの祖父。
それにしても、母はよくメンタルを殺られなかったものです…。
殺られないどころか、益々怪しげな存在感を示し、周りの人達を圧倒。
「黙っていても怖い女」の称号を与えられる始末。
誰も、母に近寄らないであろうと思われていたのですが…。
人生、不思議なもので…。
例外人物が現れて、母を妻にしてみたのでした。
この人物、私の父。
母の強さを愛するのでした(笑)。
でも、私が思うに、本当に強いのは父の方。
並みの男性が、母と上手くやって行くのは不可能です(笑)。
得たいの知れない謎の技を駆使して、家庭平和を実現させる父。
母とは対照的に、父の分かりにくさが恐いのでした(笑)。