平和をもたらす呑気者
私の母。
極度の人間嫌い。
それなのに、就職先では受付嬢をすることに…。
毎日、沢山の人と会うことになります。
それから、しばらくすると、今度は重役秘書に…。
またしても、人と関わる羽目になります。
ちなみに、受付嬢や秘書としての母の評判は大変良いものだったそうな…。
母にごく近しい人達は、知っていました。
普段は、大変怖い表情をしていることを…。
母の実母(祖母)が、母に言いました。
「アンタは、殺人鬼みたいな恐ろしい目をしてからに…」
人生の最終目標は、実父の殺害という、とんでもないものだった母。
可愛いとは、程遠い女性。
ただ、恐ろしく美しい…。
近寄りがたい程に…。
母はろくでもない実父のせいで、生まれた直後に捨てられてしまい、過酷な幼少期を過ごすことになります。
やがて、実の両親の所に逃げ帰って来たのですが、迷惑がられ、やけくそ的な気持ちで人生を歩み始めることに…。
「アイツ(実父)、殺してやる、殺してやる!」
心は、いつも怒りの嵐。
こんなコワ~イ感じの女性に、いとも簡単に近づいた男性がいました。
この男性、お金が無くて、着るものもほとんど持っておらず、鼻水を垂らしていました。
そして、厚かましくも、母に言いました。
「大丈夫、私、貯金が3万円もあると!」
「借金は、無かっ!」
「私と結婚して、のんびり暮らして行かんね!」
(はぁ~?)
この、訳の分からない(笑)プロポーズを、快く受け入れた母。
「正直で、エエわ!」
(何で、そうなる…)
この貧乏青年が、モテ男だというから、謎。
中年になっても、モテ度は下がりません。
近寄ると、トロ~ンと眠たくなる不思議。
母の実母までもが、「お婿さんに会うからには、お化粧をせなアカン!」と気合いを入れ始める始末。
これには、母も呆れ顔。
「あの力、どっから湧いてくるんか?」
「お母さん(祖母)が、お父さんと結婚したら良かったんちゃうか?」
「ハハハ~」
なんと、滅多と笑わない母が、冗談を言いながら笑っているではないか!
父に一体、何の魅力が有るというのか?
娘の私には、全くもって、謎なのでした(笑)。