父はうつ病にならない
知り合いのお医者さんに「あなたは、絶対にうつ病になりません」と断言された父。本人の心境を聞きたくて、インタビューを開始する私。
「お父さん、うつ病にならない自信あるん?」
「ならんやろうね」と父。飄々としています。
「何で?」と私。
「お父さんは、大概の事は普通以上にできるモン!」とあっけらかんと答える父。
何だ? この根拠の無い自身は・・・。
確かにそう言われてみれば、そうだ。父は昔から恐ろしく器用でした。
小学生の頃、父と写生大会に出かけました。父の描いた絵を初めて見ました。描いている最中、父の周りに人だかりができてしまいました。この人だかりは、父が絵を描いている間中、途絶えることはありませんでした。
あるおばあさんなどは、父の絵を見ながら孫に指導を施しだす始末。知らない人が、父に名刺を渡してきたりしました。
父がこんなに絵が上手いことを知りませんでした。
「お父さん、絵を描くのが好きなん?」と尋ねてみるも、返って来た答えは、「別に」と素っ気ないものでした。それ以来、父が風景画を描いたのを見たことがありません。
中・高校生の頃、英語・数学・物理は父に教わりました。
「お前、数学なんか勉強せんでもええ科目やないか。楽なもんや。授業聞いただけで分からんでどうするんね?」と言われてしまいました。
なんか、ムカつく! ちなみに、母は父とは正反対で、恐ろしく不器用。
私は、努力しなければ、物事を上手くできないタイプです。
神様は、不公平だ! 父を見ていると、絶望感しか湧いてきません(笑)。
そんな器用な父でしたが、不器用な母や私に対しては、何の期待もしていないようでした。それだけが、私の救いでもありました。
根拠の無い自信と他人に期待をしないこと。そして、天から与えられた謎の才能(笑)。これが父がうつ病にならない理由なのだと、最近思うのでした。