あるのは自信だけだった
私の母。
滅茶苦茶、近寄りがたい。
生まれてすぐに両親に捨てられてしまった母は、怒りの人生を歩み始めます。
勤めていた会社の同僚達に、「あの人は喋らないけど、1番怖い…」などと恐れられていた程です。
その身から放たれている強烈なオーラに加えて、美し過ぎる容姿。
人によっては、それを「気品」と表現したりします。
普段は氷の様に冷たい表情をしている分、珍しく微笑んだ時のギャップは凄いものが…。
「仏様の様だ!」
美しい歯並びが際立ち、それを見た人達からは、感嘆の声が漏れます。
それにしても…。
この様な難易度の高い女性に、いとも簡単に近付いた、物好きな男性がいました。
ハイ、それ、私の父(笑)。
到底、美男子とは言い難いこの人物は、ヘンテコな自信と能天気さを武器に、母にアタック。
「所持金は3万円しかないけど、私と結婚しませんか?」的な、ふざけた(?)ノリでプロポーズ。
意外にも、母は思いました。
「正直でエエやん!」
寒空の下、着るものもロクに無くて、鼻水を垂らしていた父。
その自信の根拠を知りたいのでした(笑)。