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街のパトロールを「My City Report」とともに〜パトラン東京が支えるインフラ維持活動—インタビューを通して見える市民協働の可能性〜

MCRコンソーシアムは、市民協働投稿サービス「My City Report(以下MCR)」を通じて都市インフラの老朽化、減少が続く職員数など、自治体が抱える課題に対し、デジタルを活用し、維持管理業務の生産性向上や、まちの課題を効率的に収集し、行政と住民との協働促進に資するサービスを自治体向けに提供しております。
今回は、地域住民を効果的に巻き込みながら道路の損傷情報を効率的に収集する成功事例として、パトラン東京の活動をご紹介します。

日本では人口減少が進む中、インフラ維持のために無理のない仕組み作りが必要です。自治体は市民との協働を実現しつつ、業務の効率化を進めることが求められています。本記事では、パトラン東京の取り組みを通して、その実践例をご紹介します。ぜひ、市民協働のモデルとして参考にしていただければ幸いです。

インタビューにご対応いただいたのは…

パトラン東京
葛飾区チームリーダー
小野村様

—  パトラン東京の活動について教えてください。

「パトラン」とは、「防犯パトロール」と「ランニング」を組み合わせた言葉です。誰もがランニングを通じて街の防犯活動に参加できる取り組みで、活動の母体は「認定NPO法人 改革プロジェクト」が運営する「パトランJAPAN」です。2019年に「パトラン東京」としてスタートし、関東エリアで活動を広げています。赤いユニフォームを着て街を駆け回りながら、ごみ拾い(星くず拾い)やパトロールを行っています。

赤いユニフォームを着たパトラン東京メンバー

パトラン東京では、活動日をエリアごとに決めており、第二木曜日は台東区、第三木曜日は葛飾区といったスケジュールで、約100名のメンバーが各地で活動しています。また、企業内のコミュニティや学校、大学内でも自主的に活動が行われるよう、エリアごとに権限を渡しながら運営しています。

放置自転車をMy City Reportで通報している様子

—  活動の中で、「MCR」を使い始めたきっかけは何でしょうか?

もともと千葉市で「ちばレポ」という市民協働投稿サービスが導入されていたことを知り、その後MCRコンソーシアムの担当者から詳しい説明を受けたのがきっかけで活用を始めました。

— 実際に使ってみていかがでしょうか?

これまでの経験から、多くの市民協働型サービスに触れてきましたが、MCRの最大の特徴は「行政に直接報告できる点」です。一般の市民にとって、道路やガードレールの異常をどこに報告すればよいかわからないことがほとんどです。MCRでは、アプリに情報をアップするだけで自治体ごとに情報が振り分けられるため、投稿者が管轄を気にせずに済みます。特に河川のような複雑な区分でも気軽に報告できる点が非常に便利です。

ランニングをしながら街をパトロール

以前は、道路の損傷を見つけても、行政に届ける術がなく、議員の方に直接にお願いするなど、地道な方法で情報を伝える必要がありました。例えば、県の議員さん、市の議員さんで、県道、市道と扱う範囲がそれぞれ異なります。パトランとして必要だった情報の仕分け作業が不要になったのは大きいです。MCRを使うことにより、手間が大きく軽減されました。

パトラン東京の活動内での報告事例(1)

—  実際にパトラン活動の中では、どのような報告にMy City Reportを使用することが多いのでしょうか?

パトランでは、道路の損傷報告に加え、夜間の街灯切れにも気付ける点が強みです。特に国道以外では夜間のパトロールが行われないケースもしばしあるため、夜に活動する我々が役立てる場面が多いです。また、放置自転車や不法投棄、公園内の異常(遊具の破損や大きな水たまりなど)の報告にも活用しています。

一方で、報告が多すぎると自治体の負担になるため、例えば道路の陥没は「深さ2センチ以上」のものを投稿するなど、気をつけています。

パトラン東京の活動内での報告事例(2)

—  最後に、MCRへのご期待があれば教えてください。

さらに導入が進むように尽力いただきたいですね。通報する市民は、道路の管轄が区か、都かなどを判断できないものです。広く自治体で導入されれば、よりエリアを気にせずに報告することができます。また、ラインで報告を受ける自治体も多いですが、MCRだと、位置情報や写真もあるので、報告者と自治体との双方が情報共有を円滑にできる点が利点だと感じています。他のパトランの支部でも導入が進むよう、たくさんの自治体が導入してくださることを願います。

— 小野村様、ありがとうございました!


編集後記

日本は人口減少に伴い、シビックテックという考え方が広まっています。シビックテック(Civic Tech) とは、「Civic(市民)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉で、市民がテクノロジーを活用して地域や社会の課題を解決しようとする取り組みを指します。

市民が技術を使って道路や公園の損傷を可視化し、行政と連携することで、公共サービスの質や効率を向上させることが可能になるMCRも、その一つです。

一方、いくらMCRのようなシステムを整えても、市民に周知し活用して貰わなければデータは集まりません。パトラン東京のみなさんが、市民と行政の橋渡しをしてくださることで活動の輪が広がっていきます。そして、市民が自分たちの街の課題に目を向ける機会が増えることで、地域への愛着も強くなっていくはずです。

今後も、MCRコンソーシアムは、市民と行政の新しい協働の形を実現するために支援してまいります。