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NPO SB.HeartStationの靴の手渡しツアーで、ミンダナオを訪ねて

学生のころに東南アジアを訪ねて以来、その地に住む人々に出会い、いつか、彼らに携われる仕事がしたいとずっと思っていたのですが、自分自身でもなぜこうも強く惹かれてやまないのか、言葉にすることができないでいました。
しかしながら、今回のミンダナオ島訪問で少しばかり自分の中で見えてきたものがありました。


まず驚いたのはミンダナオの人々の感情表現の豊かさです。
自分の感じたことを全身で表現することを恥ずかしいと思わず、ためらわない。
投げたボールがそのまま返ってくるようなまっすぐで素直なコミュニケーションをとってくれるので、私も、変に疑ったり、恥じたりすることなく、自分のその時に感じたことを伝えることができました。
日本では感情、特に怒りや悲しみといった負の側面を人に見せるのはよくないといった考えや、「こうあるべき」といったしがらみがとても多いように感じます。
私は、常日頃から、こういった社会常識を鵜呑みにしないよう意識してはいるものの、やはりある程度とらわれていたようで、ミンダナオの暑い風に吹かれながら、ふとこれまで自分を縛っていたしがらみが解け、肩の力が抜け楽になった瞬間を感じました。
「何者でもない、ありのままの自分でいていい」そんなやさしい眼差しをミンダナオの人たちの中に見ることができました。


また、お互い助け合って生きる「共生」の意識が人々の中に自然と根付いていることを強く実感しました。
「持っている人が与える」「できる人がやる」。
持たざる立場の人の成⾧を妨げるとみる人も中にはいるかもしれませんが、人は誰しも人の助けを借りながら生きていて、自分が助けられたように、困っている人を前にした時、今度は自分がその人を助ける、そんな人間としてこの社会を生き抜く根源的な力を感じることができました。
その影響か、「生」に対する貪欲さ、溢れんばかりの生命力に、終始圧倒されっぱなしでした。


最近の日本ではなんでも「自己責任」で片づける風潮が強く、「あなたが今困っているのはあなた自身の選択のせい」と突き放して考える人がとても増えてきているように思えます。
自分には関係ないといった風に冷めたポーズで自分の感情を閉ざす若者たち。
自分だって一人の力でこれまで生きてきたわけではないのに、そして、これからも誰かの助けを借りなければいけない状況が必ず訪れるはずなのに。
その時に彼らはどうするのでしょうか?「自己責任」だから仕方ないとあきらめるのでしょうか。私は、自分の住む国がそんな諦念で満ちてほしくはありません。


幸い、私は今SB.HeartStationの仕事を通じて、日本とフィリピンミンダナオ島、両者ともに関われる立場にいます。
自己責任論が蔓延する日本ではありますが、毎日のように全国から履かなくなった靴が届き、倉庫に溢れている様子を見て、「困っている誰かのために行動できる」人がまだまだ沢山いると希望が湧いてきます。
SDGsをきっかけに貧困について学び、自分たちにもできるアクションを探し、自分たちで靴を集めて寄付する学生たちも増えてきています。


SB.HeartStation の活動は本当に一つ一つ小さなもので、大規模な事業を展開するとか、すぐに結果が出る形で、人々の暮らしをよくするという事業ではないかもしれません。
ですが、今回のミンダナオ島訪問で得た「共生」の大切さを日本の人たちの心に根ざしていける、そんなかけがえのない活動だということを強く感じました。


「ありのまま自分でお互い支えあって生きていく。」

人間が社会的動物としてここまで来た歴史の重み、根源的な生きる喜び。
これまでにない変化を目の前にした世界を生き抜いていくために、今回のミンダナオ島訪問で学んだことを日本の人たちにも伝えていきたい、そう思っています。

最後に、事業計画から実行、通訳や何から何までご尽力くださった宮木様、事業実施のために、軍や行政と粘り強く交渉してくださったスタッフの皆様、そして、私たちを明るく迎え入れ、懸命に頑張ってくれた奨学生の子どもたち、本当にありがとうございました。
                        田中佑乃

スタッフの宮木梓です。埼玉のNPO、SB.HeartStationさんは、毎年ミンダナオ子ども図書館に、たくさんの靴を送って下さっています。今年2月の、靴の手渡しツアーでは、田中さんを含め7人の方が参加して下さり、MCLのスタッフや子どもたちと、現地の子どもたちに直接靴を渡してくださいました。皆様の活動のおかげで、私たちも村の子どもたちに靴などの支援物資を届ける活動が続けられて、大変感謝いたしております。

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