15歳で一人でミンダナオまでやってきた高校生のMCL滞在記
お久しぶりです。スタッフの宮木梓です。今年の夏も、たくさんの方がミンダナオ子ども図書館を訪ねてくださいました。
15歳で初めての海外、保護者の方といっしょではなく、一人で日本を飛び出してきてくれた、宮川木花さんの滞在記です。
(掲載の許可をいただいています)
MCL滞在記
宮川 木花
「生きて帰って来られればいいよ」そう言って送り出された旅でした。その言葉とは裏腹に私はたくさんの良い経験をして帰ってきました。
到着した翌日に豚の血のスープを飲みました。生き物の血を飲むのは初めてだったので口にするまではドキドキしていたけれど、飲んでみたら臭みもほとんどなくて美味しかったので驚きました。血までスープにして美味しく食べてもらえるのは豚にとっても誇らしいだろうなと思いました。
2週間の滞在で印象に残ったことが3つあります。1つ目はフィリピンの人々の暖かさです。日本人と比べると、フィリピンの人々はいつも肯定してくれます。私に対しても「beautiful!!」と言ってくれて、すごく優しい世界だなと感じました。人間関係で悩んでいた私にはとてもありがたく、救われる環境でした。
また、フィリピンの人々は自己肯定感が高く、それもすごく魅力的でした。日本人の若者の多くは自分に自信がありません。ですが、フィリピンの人々は老若男女問わず自分に自信を持っている人が多く、いきいきとしていました。それは素晴らしいことで、今の日本に足りないところだと思いました。
2つ目は人生で初めて物乞いをされたことです。MCLの近くの市場に行ったとき、みんなでお菓子を食べていたら両手を差し出して近付いてくる少年2人がいました。危険なことをされているわけではないのに私はすこし焦ってしまいました。そのとき、友さんが2人の少年に少しお菓子を分けてあげました。小さいほうをもらった男の子は自分より大きなお菓子をもらった男の子を羨ましそうに見ていました。私は友さんがいて良かったとすごくホッとしました。
MCLから帰る日にも物乞いをされました。空港のターミナル間を移動するバスに乗っていたときでした。バスが信号で停車し、その間に道路からバスの窓をノックされました。道路の方を見ると手のひらを胸の前に差し出している少女とおばあさんがいました。車内にいたこともあり、私は彼女たちから目を逸らしてじっと前を向いていました。しばらくしてバスが動き出すと身体中の緊張が解けるようでした。車内にいたことにホッとしている自分がいて自己嫌悪しました。
観光客に物乞いをする人がいるということは知っていましたが、いざ自分がされると動揺してしまいました。以前は物乞いをされたら何かあげるのが一番良いと思っていましたが、実際に物乞いをされて物乞いについてよく考えてみたら、何かあげることが最前の方法だとはいえないなと思いました。物乞いをしている人たちにはきっとたくさんの事情があります。なので食べ物やお金をあげても根本的な問題の解決にはならないと思います。
また、物乞いをするのは少年や少女、老人といった社会的な地位が低い人であるとわかりました。まだ自分で働くことが出来ない小さな子たちが物乞いをする姿に私はショックを受けました。同世代なのに生まれた国が違うだけでこんなにも生活環境が変わってしまうんだと衝撃を受けたと同時に、彼らの力になりたいと強く感じました。そして、彼らを救うために昔から活動しているのがMCLなんだということも分かり、国際協力への理解がより深まりました。
3つ目はMCLの大学生の言葉です。日本の自殺率の高さについて話しているときでした。私は自分の意見を伝える英語力がなかったので話を聞いているだけでしたが、会話の中で印象に残った言葉がありました。それは、「フィリピン人はお金が無いけれど幸せだ」という言葉です。たしかにフィリピンには経済的に厳しい暮らしをしている人々が日本より多くいました。ですが、みんな幸せそうでした。それに対して日本は経済的には潤っているはずなのに、人々はみんな何かに追われていてとても疲れています。フィリピンと日本ではお互いに足りないものを補って、救い合えると思います。日本人はフィリピン人にはない経済力を持っています。それに対して、フィリピン人は日本人にはない明るさやおおらかさを持っています。
今回の滞在は今までの人生で一番濃い2週間でした。夕ご飯の後にみんなで歌を歌う時間があり、そこでブルーハーツの「青空」を歌いました。''生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕の何がわかるというのだろう''という歌詞は本当にその通りだと思いました。英語もビサヤ語も全く喋ることができない私とも、MCLのみんなは簡単な英語や身振り手振りを使ってコミュニケーションをとってくれました。
人生で初めて日本から出て、世界の大きさを目の当たりにしました。今まで小さくて窮屈なコミュニティで生きてきた私には考えられないほどの様々な文化や考え方があることを知り、今まで自分が見ていたものだけが全てではないんだと身をもって感じました。自分の悩んでいた事の小ささに気付き、前向きに生きるようになったことで自分の道が開いた気がします。この経験をこれからの人生に生かしてきたいです。