20230225
『海辺のカフカ』の表紙はよく目立つ。白い下地に大きいフォントで海辺のカフカの文字がプリントされている。だから電車の中でブックカバーを付けずに読んでいたら、周りにいる誰かは「電車の中で『海辺のカフカ』を読んでいる人がいた」と記憶するかもしれない。自分が自分として現れるんじゃなくて匿名の誰かとして他人の人生に出現するということ。
今日、ある仕事の現場で一緒になったアルバイトの子は、進路が決まらないまま高校を卒業して、その後も一年棒に振ってしまいこれから浪人生活二年目を迎えるらしい。これ以上親に迷惑かけたくないから警察官を目指しますと言っていた。そういうものなんだなって思った。帰りの電車で、手すりを掴んで立っている自分の前に座っていた人がいなくなると入口ドアとシートの仕切りの狭間スペースに寄りかかっていた人がその席に座り、自分が入口ドア付近に移ることになった。外を見ると雨の中に微かに雪の粒が混じっていた。