突然暗い話を持ち出してしまうことを予め謝罪しておこうと思う。 「エイジがいなくなったから、」 私はこの言葉が、忌まわしくて堪らない。 まるでアバンティーズは、エイジくんが1人で動かしていたかのような言葉に聞こえる。 アバンティーズの主な編集をしていたエイジくんを失ったことは、彼らにとって、確かに大きいことだと思う。 でも、エイジくんが1人でアバンティーズを成り立たせていた訳ではない。 アバンティーズは、4人で歯車が動く。 エイジくん1人では、決して動かない。
肌寒い。悴んだ手は感覚を失う。気温はマイナス3度。 時刻は午前6時50分。 目の前に広がる海に、あまりにも赤い太陽が顔を見せた。 思わず私は、「おかえり。」と呟いた。 気づけば貴方がこの世界から姿を消してから2年。 目まぐるしい勢いで世界は変わる中、歳のとらない貴方は姿を変えぬまま。 その眩い赤は、あまりにも姿を変えず、 私達の前に今年もその姿を現してくれた。 でも、手を伸ばしても届かない。 手を伸ばしても触れられない。 貴方を思えば思うほど、会いたくてた
エイジくん、今日は何の日だかわかる? 2020年10月30日。 貴方の24回目の誕生日。 広がっている景色は綺麗ですか? 春になったら、桜が咲き、蜜を求めて動物達が顔を出していますか? 夏になったら、胸を高まらせたセミ達が大木の彼方で甲高く鳴いていますか? 秋になったら、紅葉が頬を赤らめ、山一面に広がるキャンバスを色付けていますか? 冬になったら、辺りを宥めるような柔らかい白で陸が覆い隠れて、冷たい温もりで世界が包まれていますか? 毎日ちゃんと、美味しいご飯、沢山食べて