「牧師夫人の徒然なるままに」(八八七)「おおらかな人は肥える」 (箴言11・25)
昨年、詩人の谷川俊太郎さんがお亡くなりになりました。生前に、ある学校で生徒たちの質問に答えておられる姿を映像で見ました。その中で「歳を取る事でマイナスの価値が認められるようになった」とおっしゃっていました。若い時には批判の対象だった事柄に対しても「どうなってもいいんじゃないの」という気持ちで対処できるようになったのだそうです。
わたしはなるほどと思いました。自分自身を振り返ってみても最近は物事に目くじらを立てて攻撃しようという思いが薄らいでいることに気が付きます。
もちろんいまだに戦争を引き起こした大統領がテレビの画面に映ると足を振り上げて画面に向けてキックをしてしまう大人気ないところはありますが、小さな意見の食い違いに対しては驚くほど寛容になりました。自分の考えだけが正しいという思い込みが、この生きて来た年月に少しずつ正されてきたのだと思います。
これは、今日まで命を保たせてくださり、様々な人々との摩擦や衝突によって私の中の棘の部分が削られてきたからでしょうか。歳を取って丸くなったなどと言うほめことばにはまだ程遠いのですが、私と異なる意見に出会っても、ああそれもありだろうなあと衷心から思えるのです。この「まあ、いいか」の心境は、今の私には心易く、生き易さをも与えてくれています。
安食道子