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【ダンスイベントのMC:05】当日の資料
「資料」と一言に言っても、イベントによって天と地ほどの差があります。
大きなイベントになれば出演者の情報や場面ごとの演出も詳細になるため、それだけページ数が増えていきます。それとは逆に、身内の小規模イベントならA4用紙1枚でも十分という事もあります。
MCの手元に置く資料にはその日のほぼ全ての情報が網羅されています。しっかりとしたセリフが組まれている事もありますし、時には演出だけが書かれていてアドリブで進行する事もあります。
どんな規模のどんな内容にしたいかによって、資料化しておいた方が良い情報も変わって来ます。ただ、どんな形であっても資料というのは「イベントの説明書」なので、なるべく誰でも分かりやすく、やるべき事が抜け漏れなく書かれていて欲しいものです。
今日はMC目線で「ダンスイベントで使用する資料とその内容」について解説して行きたいと思います。
前置きとスキルの確認
さて、それでは内容に入る前にテーマの軸をサクッと確認します。
【前置き】
実際に経験した事として自信を持ってお伝えしますが、「イベントMC」というニッチな経験の結晶なので、アナタの生活にどこまで応用できるかは正にアナタ次第です。
【スキルの分類】
・基本の意識
・進行力
・声
・言葉
・資料
・その他
以上を過去の記事で詳しくまとめているので、まだご覧になっていない方はこちらの記事をご覧ください。
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資料とはどんなものか
資料の種類
まずはMCの手元にどんな資料があるのか、ザッとご紹介しましょう。
・タイムテーブル(コンテンツの時間割り)
・進行表(場面ごとの展開や演出に関わるセクションの一覧表)
・MC台本(場面ごとの展開や演出にセリフを加えたもの)
・リスト(各種情報の一覧表 [例] 出演者リスト、機材リスト)
ダンスイベントではこれらの情報を網羅しておけば、進行においてはほぼ問題なく進める事ができると言えます。
MCが様々な進行のキッカケを出す事が多いので、「この場面で誰が何をする」について「表のキャスト」と「裏のスタッフ」それぞれの動きを把握しておくために上記の資料が揃っているととても安心します。
資料の形式
それぞれの資料をどんな形で用意するかに決まりはありませんので、各主催者の皆さんがそれぞれに工夫をして精度の高い資料作りに日々奮闘されています。
MCは色んな方々と一緒にお仕事をさせてもらうので資料のフォーマットも様々です。そもそもイベントをやった経験がない方もいるので、どの段階から関わっていくかは主催者さんによって変わります。
よく驚かれるのですが、僕を含めて自分で資料を作成するMCもいます。
MCは全体と関わるポジションのため、こちら側で作成した資料はイベント運営に関わるほぼ全員が目を通します。
なので僕は「必要な情報が抜け漏れなく、分かりやすく、読みやすく。」という事を意識して作成するように心掛けています。
いざ当日になった時に「この資料があってよかった!」と思える内容で用意ができれば、各セクションの皆さんと資料を通じてコミュニケーションが取れるようになるのです。
資料の役割
当日の資料にはイベントの成功が描かれています。
先ほど一覧にした各資料も最終形までに何度も修正が加えられます。決められた時間内で理想的なイベントの流れがどのように展開して行くかを具体的に文字や絵や表にしていくのですが、この精度(クオリティ)が高いほど資料の役割は強いものになって行きます。
資料の形式は自由ですが、資料が出来上がるまでのステップと、最終的な役割はどのイベントでもほぼ同じと考えて良いでしょう。
繰り返しになってしまいますが、その日に行われる全てが抜け漏れなく書かれた、誰が読んでも分かりやすい資料というのは、その日のイベントを成功に導く重要なツールという役割を持つのです。
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各資料の内容
次に各資料の内容について触れて行きます。
ここでは「最終的にこんな事が書かれていると良い」という形でまとめますので、先ほど触れた修正を加える制作過程については別の機会にします。
なんて言いつつ、急に過程についても触れるかもしれませんが、その際はご愛嬌でお願いします。
タイムテーブル
まずはこれが無いと何も始まりません。簡単に言えば「やる事を書き出す」という事ですが、具体的に書き出すと以下のような内容になります。
・会場の使用時間
設営開始と完全撤収の時刻を設定する
・イベントの開催時間
オープンとクローズの時刻を設定する
・コンテンツの所要時間
各コンテンツの時間配分を算出する
・コンテンツの準備時間
リハーサルなど当日必要な事前準備時間を算出する
1つのコンテンツに対して「準備・撤収」がセットになります。前後の時間も含めて、何をどれくらいの時間で準備できるかを明確に算出します。
会場設営と撤収にどれくらい時間が掛かるかは、会場の方と相談して決めるものなので、余裕を持った時間設定ができるように、相談は欠かさず行う必要なあります。
今回は例として、架空のダンスイベントを元にして説明していきます。
・会場の使用時間 10:00〜20:00(10時間)
・イベントの開催時間 13:00〜19:00(6時間)
・コンテンツの所要時間
ショーケース(30チーム×3分)=90分
ダンスバトル(7バトル×5分) =35分
ゲストライブ(1組×20分) =20分
ゲストDJ(2組×60分) =120分
レギュラーDJ(2名×45分) =90分
合計 =355分(5時間55分)
・コンテンツの準備時間
会場設営(音響・照明・映像)=60分
サウンド・マイクチェック =30分
ダンスリハ(30チーム×1分) =30分
ライブリハ(1組×15分) =15分
演出リハ・映像確認 =15分
合計 =150分(2時間30分)+α
これでそれぞれの所要時間が算出されましたので、これを並べて架空のイベントのタイムテーブルを作ってみました。
10:00 スタッフ会場入り 設営開始
11:00 レギュラーDJ入り、サウンドチェック
【出演者集合時間】
11:30 ライブリハーサル
11:45 演出リハーサル
12:00 ダンスリハーサル
12:30 オープン待ち 予備時間
ーーーーーー
13:00 OPEN DJ A-kun
13:45 ダンスショーケース1部(10チーム)
14:15 ゲストDJ X-san
15:15 ダンスショーケース2部(10チーム)
15:45 ダンスバトル(6バトル)
16:15 ゲストDJ Z-san
17:15 ダンスバトル(決勝1バトル)
17:25 ゲストライブ
17:45 ダンスショーケース3部(10チーム)
18:15 DJ B-kun
19:00 CLOSE
ーーーーーー
19:00 撤収作業
20:00 完全撤収
このようにスッキリと時系列にまとめる事ができました。MCとしては時間の算出がしっかりと行われた後のタイムテーブルは安心感があり、気持ちにも余裕を持って進行する事ができます。
そして主催の方からMCに時間の調整を伝える際にも、このタイムテーブルを元に話しをする事で、次の時間に向けて何をするかも決めやすくなりますので、まさにイベントの根幹を担う資料がタイムテーブルです。
進行表
種類の説明では「場面ごとの展開や演出に関わるセクションの一覧表」と書きましたが、これを先ほど作った架空のイベントの1ヶ所に当てはめて解説していきます。
16:15 ゲストDJ Z-san
17:15 ダンスバトル(決勝1バトル)
17:25 ゲストライブ
17:45 ダンスショーケース3部(10チーム)
18:15 DJ B-kun
この部分ですが、それぞれの場面転換には以下の方々が関わっています。
表には、DJ、MC、ダンサー、シンガーのキャストさんとお客さん
裏には、音響(PA)・照明・映像のスタッフさん、
コンテンツ開始のGOサインを出すディレクターさん
これらの方々で同時に展開を作って行くのですが、先ほどのタイムテーブルに文字を加えると以下のようになります。
16:15 ゲストDJ Z-san
Z-san 曲をフェードアウト → 照明暗転 → 映像スタート
映像終わりBGM(PA出し) → 照明煽り、MCステージイン
17:15 ダンスバトル(決勝1バトル)
MCトーク中、照明抑えめ → MCの合図でダンサー入場
BGM先行(DJ出し)、照明煽り → 定位置ついたら照明ダウン
その後はMCの合図で進行
<バトル中>照明 色付き ムービング等ゆっくり BGM→DJ
<優勝決定後>照明 明るくMCコールに合わせて煽り
<ライブ前>MCステージ下手で繋ぎ:照明 薄暗く→MCの合図で暗転
17:25 ゲストライブ
照明案=リハーサル通り
<ライブ後>MCステージイン 照明 薄暗く
機材撤収完了後はMCの合図で暗転→チーム紹介
17:45 ダンスショーケース3部(10チーム)
照明案=各チーム提出の通り
MC 影ナレ ラストチーム終了後 MCステージイン
DJ紹介後 DJタイムの照明
18:15 DJ B-kun
文字だけで起こすと簡素な箇条書きが並んだ指示書のように見えますね。色々なセクションの方が同時に関わっているのですが、ずっと動き続ける人もいれば、要所でのみ動く人もいます。
なので、こういった進行表はだいたい時系列にコンテンツが並べられた表になって、各セクション毎に別紙で更に詳細な作業内容が置かれています。(MCは各セクションの専門資料に触れる事はほぼありません。)
ここまで読んでピンと来ている方もいるかもしれませんが、進行表はタイムテーブルに対して詳細な「内容」を加えた資料になります。
タイムテーブルが全体像、進行表はその詳細、更にセクション毎に専門の作業資料がある。といった感じで、「イベントの裏方」と呼ばれる方々はこの3つの資料を駆使して、イベントをベストなタイミングで演出していきます。
MC台本
台本は「場面ごとの展開や演出にセリフを加えたもの」です。ここまでイベントの流れができたので、今度はダンスバトル決勝を中心にセリフを加えて全体の流れも一覧にしてみましょう。
対象となる部分をタイムテーブルで確認するとコチラです。
16:15 ゲストDJ Z-san
17:15 ダンスバトル(決勝1バトル)
17:25 ゲストライブ
先ほどの項目「タイムテーブル」の最後で文字に起こしたイベントの流れにセリフを加えて、本番さながらの台本調にしてみました。
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いかがでしょうか、人によってはこれを見るだけでも大体のイメージが浮かんでくるのではないでしょうか。どのようにイベントを進めたいか、演出したいのか、それには何が必要になるのか、それらを簡潔に網羅した表がこのようなものとなります。
ダンスイベントのMCについて1点補足しておくと、セリフは「そのまま読むもの」と「言い方を変えて良いもの」があります。上記の資料を例に挙げると「決めた流れで進行できれば、多少の言い回しは変えてOK」という前提のセリフになります。
ここでは具体的に書いてないですが、そのまま読むものの代表例は
・イベントの決め言葉
・演出のキッカケとなるセリフ
・アーティスト、協賛各社などのオフィシャル紹介文
この辺りに限定されます。こういった部分に関しては「想定通り」に進めていくのが良いでしょう。ダンスイベントは想定外の出来事が起こったりしやすいもので、結婚式や式典と違って臨機応変さが求められるため、台本に書かれているセリフも、その場で言葉を加えやすいシンプルな書式である事が多いです。
リスト
最後にリストですが、これは冒頭の説明で各種情報の一覧表と書きました。その例として出演者リスト、機材リスト、など様々あるのですが、これは各セクションで使う専用の資料です。
では、MCの手元には何が届くのか?先ほどの架空イベントを元にリストアップするとこのようになります。
■出演者リスト
・ゲストDJの名前+プロフィール
・ゲストLIVEアーティストの名前+プロフィール
・ダンスショーケース30チーム分の情報
(チーム名、人数、出身、ジャンル、プロフィール、紹介文など)
■参加者リスト
・バトル参加者の情報(名前、出身、ジャンルなど)
■備品リスト
・バトルの賞品ラインナップ
ショーケースについて専門的な要素を加えると「音先・板付」のどちらかをリストに記載しているイベンターさんは流石です。
基本的には先ほどお見せした台本を元に進行していくのですが、詳細な情報は文字数が多くなるため別紙になる事があります。
また、イベントによっては最中に出来上がるリストもあります。例えば予選が行われるイベントでは、予選終了後に通過者のリストが作成されてMCの手元に届きます。
余談になりますが、例に上げた「機材リスト」については、DJやカメラマンなど、専門の機材を扱う方々に対して、どのような設備が用意されているかを伝えるために会場側が用意している事が多いです。
特にDJの方は自前機材と会場にある機材を照らし合わせて準備するものを決める事が多いので、よく事前に機材リストの確認連絡を行っています。
このように「リスト」と言うのは、イベントの全体像から一歩踏み込んだ詳細資料である事が多いです。
込み入った情報をまとめた資料なので専門性が高いものがほとんどになりますが、時にはその資料ひとつで全てが解決する事もありますので、上手に駆使して効率的にイベントを進行させて行きたいものです。
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本日のまとめ
今日は資料というテーマで一緒にイベントを創造する回になりましたが、アナタは自分でイベントを開催した事はありますか?規模の大きな飲み会から、会社の納会など、ダンスに関係なくとも何かしらで「幹事」を務めた事はあるでしょうか?
もし経験がある方は、複数の人とやり取りをして、全ての情報をまとめて伝達する作業の大変さを知っていると思います。そんな時には資料を上手に駆使する事で、各セクションの役割が明確になり、全員で力を合わせてひとつのものを創り上げる成果に繋がります。
是非、今後なにか機会がある方は参考にして頂けたら嬉しいです。
さて、「ダンスイベントのMC」というテーマで、数回に分けて基本について触れてきましたが、この回を持って基本の基本はひと段落となります。
次回は「その他、あると活動の幅が広がるスキル」と題しまして、ダンスイベントのおいて需要のあるMCスキルについて、僕の経験を踏まえてご紹介して行こうと思います。
ここまで読んで頂いてありがとうございます!また次回の記事でお会いしましょう。
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