ポールバトラーを評価する 追加補足
ポールバトラー選手の亀スタイルの戦い方を批判的に言う意見が多い。
ワイドナショーで松本さんと井上選手が語らっているのを見てもバトラー選手への敬意がやや少なく思えて残念だった。お二人とも社会の成功者であり強者の部類に属するだろうから弱者の葛藤や痛みについての想像は難しいのかもしれない。
むろん対戦前から井上選手を応援していたし、その勝利も確信していた。だが格下のバトラー選手が格下相手にどのように戦うのかにもかなり注億していた。
ただ、強者や格上に挑む姿勢を失わない弱者や格下に肩入れしやすい私は重ねて強く反発する。
「いや、勝つ確率を最大限に上げるにはあれが最善だった。バトラーはよくやった」
「実際、さすがの井上選手ですら攻めあぐねて11ラウンドまで戦ってたじゃないか」
「ボクシングのルール違反でもないし、なぜそこまで批判されるのか?」
「勝つつもりが無かったらそもそも試合を引き受けない」
「心が折れてたならタオル投入する。闘志も失ってなかった」
「ただ圧倒的な戦力差に『どうしようもなかった』んだ」
分野はまるで違うが、私自身ずっと将棋で自分より強い父、母、兄に挑み続けてきた。またスト2ターボでは弱小キャラだったMバイソンばかり用いていた(笑)。連邦VSジオンでは量産型ザクで頑張ろうとしてきた。
弱者(格下)がどうにか作戦を立て、なけなしの戦力で知恵を絞る。強者(格上)にボロボロにされても闘志を失わず抗う姿勢。一泡吹かせようというそのしたたかさに。
私はたまらなく魅かれるのだ。
バトラー選手の戦い方は現行のボクシングルールで亀作戦は別に反則ではない。井上選手の挑発に乗らず、ガードを固め続けて、井上選手を若干イラつかせたところまで含めてバトラー選手は「敵ながら天晴」だったと私は評価する。
あの戦い方だと判定でポイントが取れないというペナルティがちゃんと存在している。それでもボクシングらしい激しい打撃戦が見たい!というのであれば柔道の教育的指導のような制度くらいは取り入れてもよいとは思うが。
弱者なりに最善を尽くしても、力及ばず破れることまで私は良く味わってきた。奇跡はめったに起こらないから奇跡であり、また感動を呼ぶのだ。「1つの奇跡的勝利」の足元には「幾多の現実的敗北」がある。マリオがクッパを倒す未来の手前には数百体のマリオが死屍累々というわけだ。
観客は「レベルの高い激しい打撃戦」「井上選手が圧倒的に蹂躙し、勝利する姿」を
見たかったのだろう。だが奇跡的勝利を狙うバトラー選手にすればそんな役割を好んで演じるわけがない。そんな八百長には感動はない。バトラー選手が抗ったからこそ、井上選手の勝利はまた光り輝くのだ・・・と思う。
両選手ともお疲れさまでした。