棋風とはゲームにおいて何を重視するか
【要素と価値観できまる優先順位】
各種スポーツやゲーム、ルールには様々な要素がある。自自分や自軍の戦術行動を決めるのは「彼我のそれらの要素」と「状況」を組み合わせて、価値観をつけて決めることになる。
そのルールの「常識」「定跡(石)」「基本」というのは要素の主な部分をカバーしており、効率よく打ち手を決める事が出来る。反面、その枠組みの中でしか考えられなくなるという僅かながらデメリットもある。相手より多くの要素に意味を見出していると思わぬ一手が生まれる。
攻撃(A要素)に関しては命中精度、破壊力、弾数(攻撃コスト)、射程、攻撃範囲、連撃性能、貫通力、etc。
防御(C要素)に関しては回避性能、装甲、維持コスト、防御範囲、持続時間、耐久力、再生速度、etc。
機動・情報(F要素)に関しては連続稼働時間(持続コスト)、隠密性能、索敵性能、移動速度、攻撃選択可能範囲の多い位置とり、制動、etc。
普段は最終的に、総合的に見て偏りが発生するのでありえない仮定をする。選択せずとも80点だとして、どれを90点にするか?最終的に総合的には同価値の場合、まずどれを整えるか? これがその人の性格に根差したものであり、将棋で言えば「棋風」となる。
私が重視するのは以下の5つだろうか。
「索敵性能」=相手の状況を正確につかむ。正しい前提が無ければ正しい結論を導き出せない。
「移動速度」=電撃作戦だけでなく、退却の選択肢を残す意味でも重要。とりあえず逃亡して生き延びれば勝てる日に望みをつなぐ事が出来る。
「隠密性能」=相手にこちらの真意を悟られなければ、基礎数値で劣っていても喰いつく隙がある。
「攻撃可能範囲の多い位置取り」=薄く浅く、攻撃可能な範囲を多数選択肢として持つ。相手が防御を固めたら、固めなかった場所を攻める。
「射程」=遠距離から一方的に攻撃できれば回避や防御はしばらく考えずとも好い。移動速度と組み合わせて展開を優位にする。
やはり正攻法というよりは変則重視なようだ。近づかれたら対処するが、自らインファイトをするつもりはさらさらない。あとで述べる家族との比較では「隠密性能」「射程」が特徴的か。私の家族はタイプは違えど全員インファイターであり、私は家族内では唯一のガンファイターだと思われる(対局した家族にとらえどころがない、指し辛い、力を発揮しにくいと言われている理由だ)。
決して他の要素が劣るというわけではない。他の要素にもいくらでも言い分はある。だから、家族はそれぞれ違う要素を重視して指している(ここまで考えてるって事は、やっぱり、自分の家族大好きなんだな、俺w)。
父の場合は長期持久戦に特化しており、やはり「装甲」が特徴的。堅牢な守備を固め遠距離から削り、近づかれても頑強にはじき続ける。
「装甲」=防御さえ突破されなければ戦闘行動を維持できる。堅実。
「維持コスト」=防御疲れを起こさない。堅実。
「連続稼働時間」=持久戦もこれで安心。燃料切れを起こさない。堅実。
「再生速度」=多少のダメージは打ち消して回復。堅実。
「射程」=遠距離攻撃かつ防御。堅実。
母の場合は「肉を切らせて骨を断つ」「骨を断たれて魂を粉砕する」。食らいつつ前に出る典型的なスーパーロボット系の戦闘スタイルが特徴。多少の打撃は耐久力で耐える。
「破壊力」=巨大武器のフルスイングには威嚇効果、恐怖を呼ぶ効果がある。とりあえずぶんなぐる。
「弾数」=途切れさせずぶんなぐる。
「耐久力」=多少の打撃は無視しででも接近してぶんなぐる。
「索敵性能」=相手の隙を探り、隙あらばぶんなぐる。
「移動速度」=相手に追いついてぶんなぐる。
長兄の場合は「制動」が最大の特徴。この切り替えや割り切りの速さがあるがゆえに家族最速の攻撃を維持できる。相手の攻撃を必要最小限の回避動作で前に出てかわし、すれ違いざまに斬るオーラバトラースタイルなので、狙われるとたまったものではない。
「索敵性能」=彼我の状況から攻守の速度計算をするために重視。効率的。
「回避性能」=前に出ながら相手の攻撃をかわしつつ、斬り込む。効率的。
「連撃性能」=攻撃を矢継ぎ早に繰り出し、対応の隙を与えない。効率的。
「制動」=攻撃で前に出すぎた場合でも、相手の速度が上回った瞬間に攻守を切り替える。効率的。
「貫通力」=たとえ受けられても敵玉に直接「響く」攻撃。効率的。
同じ要素重視でも、それをどう用いるかで趣が変わってくるのがおもしろい。たとえば同じ「索敵性能」でも私は相手の「考え」を探るために使い、母は最初の隙を見つけて「ぶんなぐる」為に使い、長兄は「彼我の速度計算を見極める為」に使う。
今、将棋の鍛錬を積んでいる妹は、まだまだこの「価値観」がかたまっているとは言えない。一定の強さに達すれば、そいつなりの「哲学」が「指し手」に出てくる。それこそが「棋風」だと思われる。