Get Action (Give Back Hand-Off)の意義とその展開
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Get Action (= Give Back Hand-Off, "Throw-and-Go") は、HandlerとScreener Bigが単純にPNRするのではなく、まずHandlerからScreener Bigにパスを入れて、そこから即座にHand-Offに向かうアクションのことを指します:
参考・推奨:
このGet Actionに関しては、以前、2024 パリオリンピック 男子日本代表レビューにて、代表が採用すべきオフェンスとして提言したことがありました:
そこで今回は、このシンプルなアクションがオフェンス戦術上でどのような意味合いを持ち、またどのようなパターンを展開していくことができるのかを、マガジン第44回として取り上げて解説したいと思います。
⓪Get Actionの戦術上の意義
既に紹介した記事等で解説されているところではありますが、改めて考察しておきます:
大枠の構造は通常のPNRと同様である一方で、まずScreener Bigにパスしてボールを持たせるというワンクッションを置くことによって、
・ドリブルを介さない分、プレーの難易度が低下する。(具体的には、PNRだとPull-upになるところがHand-Off C&Sになるし、Reject DriveになるところがGive & Go (Get Backdoor)になったりする。ドリブルがリセットされる分だけ安全度が上昇する点も重要)。
・Screener Bigがドリブルを残した状態でボールを保持しているため、HO Fake DriveのオプションをDが意識してしまいShowやBlitzにほぼ行けない(Switch Upすら難しい) → Handlerへのプレッシャーが大幅に低下する。
・PNRの場合はHandlerにずっとボールがあって、そこに集中しつつパスを警戒して守れば良いが、Getの場合はHandler⇆Screener Bigの細かいパス交換が発生し、そこにFakeも混じる関係上、HandlerとScreener Bigのどちらで攻めてくるか/どちらを守れば良いかの的が一層絞りづらい。
上記のような様々な戦術上の利点が得られます。
一方でデメリットや注意点については以下が挙げられます:
・パス+HOが必要になることから、その際にInterceptを狙われたりなど、TOVのリスクが相対的に増大する。
・Screener Bigがある程度ボールを使う技術がないと有効性に乏しい(特に、Reject Backdoorに対して適切にパス出来たり、Hand-Off Fake Driveを仕掛けたりなどが出来ないと厳しい)。
このコンセプトの非常に重要な点は、Handler役に要求されるハンドリング能力が比較的限定的で済むという点です。
C&Sを中心としたスコアリング能力には長けているものの、長時間のドリブルには不安定性があるというタイプの選手は少なくないですし、単純に対戦相手のディフェンスレベルが相対的に上昇すればするほど、単純なドリブル保持やドリブルからの仕掛けは難しくなります。
もしチームとしてフリーランスのオプションにPNRしかない場合は、一定以上のハンドリング能力のある選手しか器用できない/起点にできないという事態が生じ、オフェンスの幅が狭まったり、起用できるプレーヤーに限りが出てしまいます。
こうした問題を戦術的に解決し、ハンドリング能力が比較的低いスコアラーにもチャンスを与えるのが、このGet Actionになるわけです。日本代表にこのコンセプトの採用を提言したのは、上記のような背景があってのことです。
以上を踏まえた上で、Getを軸にした様々なオフェンスパターンやDに対するCounter、並びにEntryのパターンなどについて整理しておくこととします。
①Getの基本パターンやカウンター
…Shot Fake into Get
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バスケットボール戦術についての研究ノートを掲載。 月1-2回程度更新。
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