ある町内会の単年度収支から辿っていって考えたこと: 校区「社協」・校区自治連合会・区自治総連合会等との会計上の関係
2021年度に町内会の会計の役を務め、分からないことを調べてみたときのことを書いてみる。そうすることで、会計処理の透明性や「草の根レベルの民主主義」が重要だという観点を再確認してみようと思う。
1. 単年度収支の推移
まず、町内会の単年度収支の推移(2014年度から2020年度まで)の表を紹介しよう。この表から、色々なことの説明を始めることができる。
たとえば、出不足金について、役員手当について、「校区分担金」について、さらに、あとで詳しく触れるつもりであるが、その分担金の一部を構成する、社会福祉協議会費として各世帯から集められている600円は、校区全体ではその総額が約132万円になるが、法人格のある社会福祉協議会に納められている額は毎年3万円に過ぎないことなどについてである。
なぜこのような表を私が作成したかを説明すると、収支の赤字が続き繰越金が減少傾向にあることに危機感を抱き、近い将来に町内会が運営できなくなると考える意見が町内にあったからである。私は、会計として事実を確認しようと思った。そのために、過去7年間の出納記録や決算報告書に目を通して表やグラフを作成してみた。表の右端の2列は、予算上の支出額が1位と2位の項目である。
出不足金等のことは別の稿で取りあげることにして、今回は、最後の社会福祉協議会についてまず触れることにしたい。当初、私は、社会福祉協議会というのは、社会福祉に関わる団体で、その活動記録や決算報告が町内で回覧されているものであると認識していた。
2. 「社会福祉協議会」の決算報告書
社会福祉協議会(校区)の令和2年度決算報告書では支出の項目は、以下の通り。18番目の「区社協賛助会員費」として3万円が支出されたという記録になっている。
これを見て初めてわかったことは、町内会の予算案や決算報告書に出てくる「社会福祉協議会」は、その活動記録や決算報告が町内で回覧されている団体とは、関係はあるが別のものだということである。
北九州市社会福祉協議会の場合は、個人が、年度会費(1口1,000円、何口でも可)を直接に納めることで会員になることができる。
最初に書いたように、社会福祉協議会費として各世帯から600円が集められていて、校区全体ではその総額が約132万円になる。しかし、法人格のある小倉南区社会福祉協議会に納められているのはそのうちの3万円に過ぎない。
それ以外の項目を見ると、「社会福祉協議会」というよりも、「自治連合会」の決算報告なのではないかと思うものなどがいくつかあり、決算報告書全体に違和感を抱かざるを得ない。(このことについては別の記事で詳しく触れるつもりである。)
なお、この「住民から構成される」はずの社会福祉協議会が、その決算報告や予算案等を住民に直接に説明する資料等を作成していないことは問題ではないかと思われる。私自身も、初めて目にする資料であった。(このことを関係者に指摘したところ、回答は、各町内会長に配付しているから問題ないというものであった。)
3. 校区自治連合会の決算報告書
町内会予算の支出の項目に出てくる「校区分担金」の一部は、「自治連合会会費」であった。
同年度の校区自治連合会の決算報告書の支出(注1)の項目は、以下の通り。項目数が社会福祉協議会の半分以下であること、ここにも、執行はされなかったが「夏祭り補助」が計上されていたこと、役員手当が社会福祉協議会の場合と同額支出されていること、さらに上の組織への「上納金」が、予算では19万円計上されていることなどがわかる。そして、この額が支出の項目のなかで、予算においても決算においても、第1位であることが、目を引く。ここに、上部団体の活動に必要な資金が下から調達される構造が見えてくる。
また、校区社会福祉協議会について取りあげたところで指摘したことがここでも当てはまる。規約上は「校区内に居住するすべての町内自治会会員及びその組織」(注:太字にしたのは引用者)から構成されるはずの校区自治連合会は、その決算報告や予算案等を住民に直接に説明する資料等を作成することを怠っているので、住民が上記のことに気づくことはない。
「上納金」と表現したものは、正確には校区自治連合会の支出項目の「連合会費」——備考には「自治・防犯・衛生分担金」と書かれている——のことである。これは、校区より上の「小倉南区自治総連合会」等への拠出金であろう。それがどういう形でその区レベルで会計処理されているだろうか。
4. 小倉南区自治総連合会の決算報告書
以下の表は、小倉南区自治総連合会の令和3年度の決算報告、令和4年度の予算である。収入の部の「会費」が各校区からの拠出金であろう。
なお、令和2年度の決算報告については、この記事の最後に[補足]で取りあげる。令和2年度の決算報告では、収入の部の会費の科目に同年度当初の予算額が示されていた。これから取りあげる令和3年度決算報告では、その欄がなく、また、世帯割額等の説明もない。
令和3年度決算報告の表を見ると、収入としては、会費の4倍近くの「助成金」が計上されていて、極めて公共性の強い団体であることがわかる。「手数料」についてはこの決算書からは把握できないが、令和2年度の決算書によれば、「県広報紙配付委託料」が中心のようだ(令和2年度の場合、2,683,400円)。
逆に言えば、極めて公共性の強い団体でありながら、「下部」の団体、町内会加入世帯——校区自治連合会と町内会・自治会は市政連絡事務委託料を配付されている——からの拠出を当てにしている点が、理解しがたいところである。
その他で気づくことは、役員手当の項目がないこと——このことは次に取りあげる北九州市自治会総連合会予算の場合も同様である——、市政連絡事務委託料は、別会計で、実際には収入とならず、全額が校区に渡されているようだということなどである。
自治総連合会会費と環境衛生協会連合会会費を合計すると、2,010,370円となる。この額が、26校区から世帯数に応じて拠出されているのであろうか。市政連絡事務委託料決算の表に出ている世帯数で割り算をして確かめると、1世帯当たり約38.5 円となる。
しかし、世帯数約2,000の校区自治連合会が、予算案では19万円を拠出することになっている例から計算すると、1世帯当たり95円となる。
これをもとにして計算すると(注2)、区全体の町内会加入世帯数が、市政連絡事務委託料決算の表に出ているように52,238世帯であるとすれば、約496万円が両団体等に拠出されているはずである。
決算書に収入として記載されている額との差は、約295万円である。この差額はどこにいったのだろうか。
自治総連合会、環境衛生協会連合会の他に、防犯協会連合会(注3)というものがあるようだが、校区レベルから、自治総連合会会費と環境衛生協会連合会会費の合計額(約201万円)を超える額がすべて、防犯協会連合会1団体に拠出されていることは想像しにくい。
手がかりは、支出の項目に「運営費」はあるが、「役員手当」の項目がないことにあるのだろうか(注4)。もちろん、ここで取りあげているのは支出の項目ではなく、収入の項目「会費」のことなのであるが。
それとも、さらに上の組織に、区のレベルの会計処理を通さずに拠出されているのだろうかと調べてみると、そうではないようだ。「各区負担金」として各区から1万円を集めているだけのようである。
6. 北九州市自治会総連合会の決算報告書
区レベルのさらに上にある組織は、北九州市自治総連合会である。「北九州市自治会総連合会規約」には第15条につぎのように書いてある。
「令和4年度北九州市自治会総連合会予算」の「1 一般会計」、「(2) 歳出」の「運営費」の科目に、役員手当の節は存在しない。会議費、交際費、報償費、旅費等の節があるだけである。
ウェブサイトで公表されている事業報告は、令和3年度分で終わっている。
[注]
(1) 収入について取りあげると、令和2年度の決算報告書の収入の部に「市政連絡事務委託料」の記載がない。このことの問題点については別の記事の最初のところですでに触れた。
市政連絡事務委託料以外に、県広報紙配付委託料というものもあるはずなのだが、これについての記載もない。小倉南区自治総連合会が令和2年度に委託料として受け取っているのは、1世帯当たり約50円(8.25円×6)なので、校区の町内会加入世帯数が2,046であるとすれば約10万円(50円×2,046)を校区自治連合会が受け取っているはずである。
若松区の認可地縁団体自治会(世帯数約2,000)では、令和4年度決算書に、県広報紙配付委託料が、収入として記載されており、その額は、1世帯当たり36円で、合計73,728円が自治会の収入となっている。
防犯評議委員会、連合会会費の予算額が19,000円であるという説明もある。
(2) 北九州市小倉南区自治総連合会規約に以下のように規定されている。なお、役員手当に関する条項は存在しない。
(3) この団体の決算報告書等は入手できていない。「公益社団法人 福岡県防犯協会連合会」というのがあって、小倉南区防犯協会連合会が正会員として所属しているようだ。
(4) 次のところで触れる「北九州市」自治会総連合会の場合、「運営費」の科目に含まれているのは、会議費、交際費、報償費、旅費等の節である。詳しく見ると、運営費の中では、会議費が1,150,000円の予算額で突出している。備考には、「正副会長会、役員会、視察研修、……」という説明がある。
なお、「役員手当」については、自治連合会のような非営利組織においては、役員や理事の活動は、自主的かつボランティア的な性格が強く、報酬や手当が支給されることは一般的ではないということなのだろうか。
[補足]
令和2年度小倉南区自治総連合会歳入歳出決算書によると、歳入の科目の会費の節の実績(収入額)は、1,221,060円である。その内訳は、均等割額156,000円、世帯割額1,065,060円である(20円×53253世帯)。
この資料では、ある校区(世帯数2,084)は、均等割額6,000円、世帯割額41,680円で、合計47,680円の会費を納めている。
令和2年度小倉南区環境衛生協会連合会歳入歳出決算書によると、歳入の科目の会費の実績(収入額は)、1,597,590円である。その内訳は、世帯割額のみで1,597,590円である(30円×53253世帯)。
前述の校区は、世帯割額として62,520円の会費を納めている。
したがって、合計すれば、その校区は、令和2年度に、小倉南区自治総連合会と小倉南区環境衛生協会連合会とに、110,200円を会費として納入したことになっている。
しかし、同一年度(令和2年度)のその校区の決算報告書では、「連合会費」(自治・防犯・衛生分担金)が、予算で190,000円、決算で183,140円と記録されている。110,200円と183,140円との差は、72,940円である。この額が、「防犯分担金」に相当するものなのかどうかは確認できていない。
小倉南区には、26の校区がある。同一年度の他の校区の決算報告書で「連合会費」はどうなっているのだろうか。
令和3年度環境衛生協会連合会決算(一般会計)では、収入の部の会費の科目の決算額が794,730円となっている。前年度の1,597,590円と比べると約半分に減少している。これは、世帯割額の単価が30円から15円に令和3年度予算から変更されたためのようだ。