町内会とその「上部」団体との関係: 校区分担金と市政連絡事務委託料をめぐって
町内会の「上部」団体
2021年4月から1年間町内会の会計という役をやった。会計の仕事としては実に色々なことを経験することができた。
各世帯から集めた「町内会費」に相当する額が、役員手当と上部団体(校区社協と校区自治連合会)への拠出金に充てられていることには驚いた。また、この2つの項目が、町内会予算において支出の第1位(約22万円)と第2位(約11万円)を占めていることにも。
この「上部」団体の決算報告は、単位町内会で配られたりすることはなく、回覧版で回されることもない。そのような団体では、「住民主体」とか「住民から構成されている」とかいうキャッチフレーズがしばしば使われるのであるが。
市政連絡事務委託料の配付
町内会は、北九州市から自治連合会経由で市政連絡事務委託料を世帯数分受け取っている。
上記資料によると、「市政連絡事務」は、随意契約によって「地元自治体」に委託されている。小倉南区だけで約6千万円の予算が、1世帯当たり1,115円として組まれているようだ。町内会に配付されるのは、1世帯当たり870円で、残りの1世帯当たり245円が校区自治連合会に配付される。この後者は、校区自治連合会から各町内会に配るための経費に充当するものであろう(町内会加入世帯数2千人の校区であれば、町内会がいくつあるかとは関係なく49万円が校区自治連合会に配付されるようだ)。
このように、市政連絡事務委託料は、町内会だけでなく校区自治連合会にも配分されている。しかし、これが、予算案や決算報告に計上されていない町内会や校区自治連合会があったようだ。以下のような文書を会計として受け取った。
「重ねてお願いします」という文言があることも興味深い。毎年同じ趣旨の通知が来ても無視して、非公表の処理をしている町内会や校区自治連合会があるということであろう。
市政連絡事務委託料の額は、たとえば150世帯が加入する町内会では、約13万円になる。
前述のごとく、2,000世帯が加入する校区自治連合会では、49万円になる。
個々の町内会では、組長を通じてその会員世帯に市の広報等を配付している。
校区自治連合会も、校区自治連合会が、その区域内の各町内会(長)に市の広報等を町内会の加入世帯数に応じて配付するための経費に充てられるという趣旨のものとして受け取るわけであろう。
受け取った市政連絡事務委託料は、それが会計上の収入として組み込まれれば、支出において別の名称で、たとえば「役員手当」(あるいはその一部)として予算化されることはあり得る。
町内会とその「上部」団体との違い
校区自治連合会は、地元自治体と言えるだろうか。町内会・自治会は、住民の自治組織であり、定義次第で「自治体」とみなしてよいであろう——たとえば、総会に住民(会員)が出席して意見等を述べることができる。しかし、校区自治連合会では、そういうことはない(注)。
自治連合会の規約では会員、総会について次のように規定されている。第4条に「会員」として「町内会自治会会員」が含まれているが、総会には出席することができないという規則になっている。
「校区の住民から構成される」とも説明されるわけだが、町内会(自治会)の各世帯は、自治連合会の総会の構成から明確に除外されている。こうして、決算報告や予算も、役員が選ばれるプロセスも、「校区の住民」には知らされることがない。
なお、付け加えて言えば、上納金を集めて「上部」組織のように振る舞っているが、町内会と校区自治連合会とは、都道府県と市町村のような関係(ヒエラルヒー)にあるわけではない。住民の自治組織である傘下の町内会に「上意下達」の形で指示を出す権限があるとは考えられない。また、そもそも、校区自治連合会への加盟は各町内会にとって任意である。
町内会からの拠出額が校区自治連合会よりも多い「校区社協」についても、単位町内会の会員との関係においては、これらのことが言える。
なお、法人格を有する北九州市社会福祉協議会の場合は、個人が、年度会費(1口1,000円、何口でも可)を直接に——つまり、校区社協を経由せずに——納めることで会員になることができる。
[注]
小倉南区自治総連合会は、「北九州市小倉南区自治総連合会規約」第3条や第11条等において、以下のように規定しているので、「自治会」あるいは「住民の自治組織」ではなく、「官製」組織であることは明確である。
校区レベルの自治連合会は、上記の北九州市小倉南区自治総連合会と基本的には同様のものであると考えられる。したがって、自治連合会を、関係者が町内会や自治会と同じように「住民の自治組織」であると表現しそのことを強調することはおかしい。
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