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西日本新聞の「独自」記事の意味: 自治体と地元の新聞社との関係について

自治体と地元の新聞社との関係について考えてみようと思う。自治体の関係者がまだ決まっていないこと、議会への説明もしていないことを特定の新聞社の記者にリークし、世論を誘導しようとしているという疑いがある。市長の「争点形成」に協力したり、アドバルーンを揚げたりしているのではないか?

記事のタイトルは以下の通りであり、公表日次等は「2024/1/5 6:00[有料会員限定記事]」となっている。

【独自】北九州市「3年で300億円捻出」 行革素案、子育て支援や産業創出に配分へ

西日本新聞

「独自」ということは、スクープということであろうか。続く本文では、最初に次のように書いている。記事が公表された前日の1月4日に、北九州市が2024年度からの3年間で約300億円の財源を捻出しようとしているという情報を記者が独自に入手したということのようだ。どういう状況であったのかに関心を持たざるを得ない。

 北九州市が2024年度からの3年間で、公共施設の統廃合や、市民・団体による文化活動などへの補助金カットを段階的に進め、約300億円の財源を捻出する行財政改革に乗り出すことが4日、分かった。生み出した財源は、子育て支援や産業創出といった次世代への投資に振り向ける方針。市が近く公表する「市政変革推進プラン」の素案に盛り込む。

西日本新聞

次の部分は、「市関係者によると」という表現で始まっていて、記者は、「市関係者」に対する取材で市当局の動きについての情報を入手したものと思われる。情報の出所は、市長ではないということのようだが、市長の指示によるものなのか、市長の了解によるものか。新聞記者は、市長のためにアドバルーンを揚げたということなどはあり得ないのだろうか。

 市関係者によると、素案には、他の政令市より老朽化が進み、市民1人当たりの床面積が広い公共施設の統廃合を加速させ、維持管理費の抑制を図ると明記。長年見直されず固定化した補助金も削減し、子育て支援や教育の充実、企業誘致に向けた産業用地創出の費用に充てるとしている。

西日本新聞の記事

次のように、「投資的経費の上限」の引き下げについての方針についても言及している。これについては、その目的は「市債発行の抑制」であると説明している。

 市債発行の抑制も目指し、22年度から年間620億円としてきた投資的経費の上限を、25年度以降は560億~580億円程度に引き下げる方向で検討しているという。 

西日本新聞の記事

「子育て支援や産業創出」が「次世代への投資」と捉えられているようだが、「子育て支援」によって5年後に合計特殊出生率を1.8人にするというような目標が達成可能だと考えられているとしたら問題である。

また、企業誘致によって、5年後に社会増減が1,000人になると期待しているとしたら認識不足である。

以下で引用するように、重要業績評価指標に言及しているが、合計特殊出生率、社会増減についての議論が記事の中でまったく取りあげられていないのは何故なのだろうか。

昨年2月に就任した武内和久市長は、厳しい財政状況の中でも市の発展につながる事業を推進しようと、行財政改革に着手。民間の視点も取り入れ、約3千件に上る全事業の効果を検証し、重要業績評価指標(KPI)などを用いて施策の見直しを進めている。

西日本新聞の記事

さらに付け加えるならば、投資的経費の上限を引き下げることは、経済成長(=もっと「稼げるまち」)という政策と矛盾するのではないか。

記者は、上記のような点について何ら疑問を呈することなく、「市関係者」の話を記事にして、「スクープ」であるとしているのだろうか。



【補足】

続報が1月11日に出た。今回は、「独自」という語句はタイトルに付いていない。

記事の最初の部分と最後の部分を以下に引用する。全体としては前回の「独自」取材に基づいた記事と同じ内容のようだ。

北九州市は10日、2024~26年度の行財政改革の方向性を定める「市政変革推進プラン」の素案を公表した。既存事業の見直しや歳入確保を進め、毎年100億円規模の財源「次世代投資枠」を捻出。子育て支援や教育の充実、産業基盤の強化を図る。

西日本新聞記事2024年1月11日

 事業の見直しに当たっては、必要に応じて専門家を交え、「開かれた議論」を進める。16日~2月9日に素案に対するパブリックコメント(意見公募)を実施する。武内市長は同日、記者団に「『削る改革』ではなく『創(つく)る改革』とし、将来に向かって次世代に投資できる行財政構造をつくっていきたい」と述べた。

西日本新聞記事2024年1月11日


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