大学生の僕がR-1グランプリに人生を捧げた話
僕は宮城県に暮らす、お笑い好きの大学生だ。元はただお笑いが好きというだけだったが、最近はそんな気持ちが行き過ぎた結果、2ヶ月に1回くらい東京でお笑いライブに出演している。今日は、そんな僕が先日R-1グランプリの1回戦に出場したときの話をしたい。
R-1に向けて過ごした1年間
僕がR-1グランプリに出場したのは、昨年に続いて今年で2回目だった。昨年の結果は、1回戦敗退。そもそも人前でネタをするのが人生で3回目で、取捨選択できるほどのネタ数もなく、当日は全くと言っていいほどウケを得られなかった。納得の敗退である。
だから今年は1回戦突破を目指して、去年の敗退からネタを工夫し、それなりに場数もこなした。
2ヶ月に1回はお笑いライブに出るようにし、その毎回のライブを目標にネタを調整する。定期的にネタを仕上げては試し、反省点を見つけては改良する、これを去年の敗退から1年間続けた。
僕にとってのライブは、受験生にとっての模試のようなものだった。というか、受験生が常に勉強のことを考えるように、常にネタのことを考えていた僕のこの1年間は、まさに受験生のようだった。
R-1は『傾向と対策』がカギ
R-1グランプリの1回戦は数日間にわたって行われる。去年、僕が出場した日のエントリー者数は179名で、1回戦を通過したのは35名と、突破率19%の狭き門だ。もちろん、そのほとんどがプロの芸人で、素人の僕が1回戦を通過するのはさらに至難の業といえる。
だからこそ、R-1受験生の僕は、1回戦を受かりやすいネタの傾向を分析し、対策を練る必要があった。
まず、ネタを作るうえで心掛けたのが、「誰でも笑える、とにかく分かりやすいネタ」だった。1回戦を見に来るお客さんはみんな、素人の僕のネタなんかに期待していない。かつ、1日に200人近い芸人のネタを見るため、なるべく思考を必要としない、分かりやすさが必要だと思った。
特に僕は、お笑いを初めてすぐのころ、正当な笑いの取り方ではプロに勝てないと思って、ぶっ飛んだ笑いや、複雑で分かりにくいシュールな笑いを求めてネタを作っていた。実際に、僕がよく出演していたライブでは、お客さんの感想を聞くことができるのだが、「頭おかしくて好き」「ハマる人にはハマると思う。自分は面白いと思った」といった感想と「よくわからなかった」「こわい」という感想で綺麗に分かれた。
また、そのライブではお客さんの投票で出演者の順位が決まるが、僕は常に真ん中くらいだった。最初は、プロの芸人さんも多く出演する中でこの順位はすごいと思っていたし、何より「分かる奴には分かる」みたいな雰囲気の自分のネタが好きだった。
けれど次第に、そのようなスタイルのネタでは、いくら笑いを取ったところで上位にはなれないことに気付き始める。結局、ライブでトップになるような人は、分かりやすい、しっかりとしたネタでお客さん全員を笑わせているのだ。
だから僕は改めて、分かりやすい正当な笑いを目指そうと決めた。「分かる奴には分かる」なんてものは、真っ当に笑いを取れない人間の逃げ道でしかない。ちゃんとおもしろいネタであれば、お客さんに刺さると信じて。
コントか、ギャグか
R-1グランプリの公式サイトには、審査基準は「とにかく面白いピン芸」とだけ書かれている。しかし、ピン芸と一括りに言っても、コントや漫談、ギャグ、フリップ、歌ネタ、モノマネなど様々なジャンルがある。その中から去年僕が選択したのはギャグだった。
一般的に、ギャグを羅列するだけのネタは受かりにくいと言われている。お題が自由な分、難易度も低いし、ただ羅列すると一貫性が無いように見えるからだろう。一方で受かりやすいと言われているのがコントだ。ギャグと違って、最初から最後まで1つの設定の中にたくさんのボケを入れないといけないから、難易度が高い分評価が得られやすいし、一貫性もあるからネタも分かりやすい。なので僕は今年、今まで挑戦したことのなかった、一人コントで1回戦に挑むと決めた。
しかし、コントはギャグと比べ物にならないくらい難しかった。単純なボケのクオリティはもちろん、ネタの構成や演技力など、素人の僕には気にしなければならないことが多すぎる。
それでも数ヶ月かけて、なんとか1本のコントを仕上げ、ライブで初めて試す機会があった。結果は、クスクス笑いが2回あったのみ。さすがに少し落ち込んだ。
でも1回戦の本番までまだ時間があったから、とにかくネタを考えた。元々お笑いが好きな僕は、今まで以上に芸人さんのネタを見るようにして、参考にできるところがないか考える。それまではただ面白いと思っていた芸人さんのネタも、なぜそれが面白いのかを論理的に分析することで自分も実践できるようにした。その結果、お笑いについて理解が深まっていく反面、今まで何も考えずに笑えていた芸人さんのネタが、笑えなくなっていったのだが……。
とはいっても、やはり僕がR-1の1回戦を突破できるようなコントを作るのは難しかった。初めてコントをやってみたライブ以降も、何度か試してみたが、お客さんの反応はあまり良くない。一方で、たまにライブでギャグをやってみると、そっちの方が圧倒的にウケがいい。
「そもそも受かりやすさ以前に、笑いを取れなければ1回戦は通過できないのでは?」「でもここまで来たらギリギリまでコントを仕上げるべきなのか?」
受かりやすいけど自信のないコントか、受かりにくいけど自信のあるギャグか、一応どちらもできるように並行してネタを作ったが、本番の1ヶ月前までネタが決まることはなかった。
ぶっちぎって面白いギャグをやろう
結局僕は、ある芸人さんの一声をきっかけに、ギャグで1回戦に挑むこととなった。その芸人さんが、どんぐりたけしさんである。彼は、僕がピン芸に興味を持つきっかけとなったほど憧れている芸人さんで、なんなら僕の芸名の『松ぼっくり工藤』という名前も、彼を参考にして付けたくらいだ。
そんなどんぐりたけしさんと、とあるライブでお話しできる機会があったのだが、そこで僕はギャグとコントどちらをするか迷っていることを聞いてもらった。
僕「やっぱり、ギャグとコントだったらコントのほうが受かりやすいとかってありますか?」
どんたけさん「そうだね、でもギャグもぶっちぎって面白ければ全然受かるよ。自信のあるほうをやりな」
僕「じゃあぶっちぎって面白いギャグをやります」
そんな流れで僕はギャグで1回戦に挑むことにした。
ネタが決まってからは、とにかく練習する。基本的にR-1グランプリの予選を見に来るような目の肥えたお客さんは、笑うというより審査するようなつもりで見に来ており、会場は異様な雰囲気に包まれている。頭の中ではネタを覚えているつもりでも客席を前にし、その雰囲気に飲まれると一瞬でネタが吹き飛ぶ。去年実際にそんな出場者を何人も見たし、僕も少しだけ変な間ができてしまった。
だからこそ、とにかく練習し、ネタを体に染み込ませる。常に頭の中でネタを唱えて、移動中はぼそぼそとネタを呟き、家族が寝た後は自分の部屋で動きを交えてひたすら練習した。ただネタを覚えるのではなく、細かい言葉遣いや動き、テンポ、間の取り方など、一つ一つに気を遣った。お笑いというのは面白いもので、それらを少し変えるだけでウケ方が大きく変わるのだ。
例えば僕は「甲子園で土を集めてると思ったら、敗因の監督を埋めていた」というギャグがあるのだが、このネタをやるとき、「土を集める動作」をたった1秒長く見せるだけで、お客さんはネタの状況をより理解でき、「監督を埋めていた」というオチが分かったときのウケ方が大きく変わる(これは実際にライブで試したからマジ)。
僕はそういった笑いの感覚が元からあるわけではないし、その場のお客さんの笑いに合わせられるほどの経験もないから、誰よりもネタを研究し、練習する必要があった。
次第に本番の日が近づいてくる。こんなにもR-1に思いを募らせてもし落ちた場合、僕はどんな気持ちになるだろう。それを想像するのが怖かった。だからこそ、絶対に受かってみせる。改めて決意し、ラストスパートをかけた(=髪を短くし、衣装として3万円のセットアップを買って、最後の1週間は週4でカラオケで練習した)。
僕がR-1グランプリに懸けた理由
僕はどこにでもいる普通の大学生で、別に将来芸人を目指しているわけでもない。そんな僕が、ここまでR-1グランプリに向けて頑張るのには理由があった。
お笑いで結果を出すことで、自分の存在意義を確立したかったのだ。
僕はこれといって頭のいい大学に入れたわけではないし、かといって特別顔がかっこいいわけでもない。それに加えてコミュニケーション能力が低すぎるから、そんな大学でも充実した生活を送れてはいない。
大学3年生になるまで、新しい友達が一人もできなかった。そのせいかは分からないけど、周りの大学生の遊び方というか価値観みたいなものについていけなくて、嫌悪感すら抱いてしまうことが多い。
でも、そんな気持ちを抱えたところで、僕は彼らに勝るスペックみたいなものがあるわけでもないから、劣等感を抱き、なんともやるせない気持ちになる。大学生になってから、そんな経験を何回もした。
だから僕は、お笑いで結果を出して、他の人にはない何かが欲しかった。
去年のM-1グランプリのチャンピオンはこんなことを言っている。「お笑いは今まで何もいいことのなかった奴の復讐劇なんだよ!」と。
全くもってそうだとは言わないけど、なんとなく分かる気がする。
少なくとも僕は、お笑いで結果を出すことで遊んでいる彼らを見たとき、こう思えるようになりたかった。
「でもお前、俺より面白くないだろ?」と。
1回戦の前日に感じた絶望
R-1グランプリの1回戦は、年末年始の数日間にかけて、東京と大阪で行われる。僕は12月28日、東京で行われた1回戦に出場した。
ただ、僕が東京に着いたのは前日の27日で、その日、最後の調整としてライブを入れており、そのあと1回戦をお客さんとして下見に行く予定だった。
まず、東京に着いて初めに向かったのはライブ会場近くのカラオケ店。ネタの練習もしたかったし、お客さんによく通る声を出すには発声練習みたいなのが必要で、ライブに出る前は必ずカラオケに行くようにしている。素人の僕なりのルーティンだった。
そしてライブが始まる。ネタはもちろん翌日の1回戦で披露する予定のネタで、何度も試行錯誤し、何度も練習したネタだった。
めちゃくちゃウケた。
この日のために1年間仕上げたネタだったから、これまでに出演してきたライブと比べて確実に手応えがあった。
これで自信をもって明日に挑むことができる。そんな思いで、そのままその日1回戦が行われている会場に向かった。
前日の会場も、僕が出場する翌日の会場と同じだったため、客席からの視点や、声の通り具合、会場の雰囲気などを参考にした。
また、どんな芸人が受かりやすいのかを知りたいと思って、ネタは事前に出場者の名前を書いておいたノートにメモを取りながら見た。簡単なネタの内容、ウケ具合、参考にすべきところなどをメモする。そんなことをしているのは客席で僕ともう一人、やばそうなおじさんだけだった。あのおじさんは、たぶん終わったら大会レポみたいなのをブログに投稿するんだろう。
今年から出場者の芸歴制限が撤廃された影響もあってか、去年と比べてかなりレベルが高くなったように思える。1回戦といえど、メモを取るのを忘れるくらい面白い人が多かった。
お客さんとして楽しい気持ちと同時に、出演者としてこんなに面白い人が多い中で自分なんかが合格できるのか、不安な気持ちになる。
さらに、R-1の雰囲気を1年ぶりに感じて、ふと去年の敗退を思い出し、より不安な気持ちになった。
「でも大丈夫だ。去年からレベルが高くなったのは僕も同じだし、何より明日やるのは今日すごくウケたネタだ。」
そう自分に言い聞かせて、不安を払拭しようとした。けれど、この不安は合格者発表を見たとき絶望に変わった。
合格者発表はその日の夜、YouTubeのライブ配信で行われる。僕もリアルタイムで、メモを取ったノートを確認しながら配信を見たのだが、出場者208名のうち、そこで名前が呼ばれたのは16名だった。
「は…?」
7~8%という合格率の低さに思わず声が出た。間違いなく、去年僕が出場した日の合格率は20%近かったはずだ。
メモを取ったノートを確認してみると、自分が面白いと思った芸人さんもことごとく落ちている。
「あれでだめなのか。それなら絶対自分なんか受かるわけないだろ。」
そう思ってしまうくらいに厳しい審査で、正直その時点で諦めかけた。
結局そんな気持ちを拭えないまま、僕は翌日、1回戦を迎えることとなる。
そして迎えた1回戦当日
1回戦当日の朝4時、なんだか嫌な夢と同時に目が覚めた。自分が令和ロマンの3人目としてM-1に出場し、めちゃくちゃ足を引っ張るという夢だった。昨日の絶望感みたいなものを拭えていないことを強く感じる。
とはいっても、1年間今日のために頑張ってきたから、最後までやりきろうと思い、いつものようにカラオケに向かった。
東京のカラオケなんかにいると、毎回こう思う。同級生が旅行でディズニーとか行ってるなか、自分は何をしているんだろうと。
でもそんな思いも今日で終わりにする。結果を出せば、今までのみじめな自分が救われるような気がした。だからこそ、絶対に受かろう。改めて決意し、僕は1回戦の会場に向かった。
少し早めに会場に着いた僕は、近くの公園でネタの練習をしようと思った。普段は閑散としているはずのこの公園も、この日だけは多くの人で賑わっている。フリップを立ててぼそぼそとつぶやいている人、ダンボールの被り物を被ってロボットのような動きをしている人、コントの世界観に入りすぎて明らかに声量がバグっている人、いろいろな人がいた。あまりにも異様な光景に、スマホを構えた通行人が笑っている。
そこに、恐らく公園に遊びに来たであろう親子がやってきた。母親が何かを察して、帰ろうと子どもに告げる。泣き叫ぶ子どもを見て、僕は少し緊張が解けた気がした。
会場に着くなり受付を済ませる。エントリー料を支払い、小道具の有無や演目、板付きか飛び出しかなどを確認するのだが、受付の人がめちゃくちゃ感じ悪かった。僕は普段ライブに出るときから経験していたから大丈夫だったけど、専門用語が飛び交い、困惑するアマチュアの人たちがキレられていて可哀想だった。
受付のあとは控室に入る。出場者はみんなネタの練習をしていて、会話は少ないのに静寂ではないという、独特な雰囲気に包まれている。
僕も壁に向かってぼそぼそとつぶやくが、どうしてもほかの人の練習している声が聞こえてしまい、全然集中できなかった。
いよいよ控室から名前を呼ばれて舞台裏に移動する。笑い声しか聞こえなかったが、お客さんの雰囲気は結構温かくて、みんなそれなりにウケているように感じた。
不思議と緊張はしなかった。むしろ、前日のライブでウケたことが自信になって、今からお客さんを笑わせに行くことに高揚した。
そしてついに僕の出番が来る。とにかく練習で意識したテンポや細かい言葉遣いに気を付けつつ、台本通りにならないようナチュラルにネタをこなす。
出来は良かった。噛んだり、ネタを飛ばすことが無かったのはもちろん、練習で意識したことも実践できた。ウケも良かったと思う。想定していたところでちゃんと笑いが起きたし、舞台袖と舞台上で感じる笑いの量は違うかもしれないけど、少なくとも自分より前に出ていた人たちよりかは、絶対に自分のほうがウケていたはずだ。
控室に戻って着替える。「出番を終えた人は速やかに退室してください」という貼り紙があったが、まだこの雰囲気を味わいたくて、なかなか帰れなかった。
正直、これで落ちたら仕方ない。そう思いながら僕は夜に行われる合格者発表を待った。
慟哭
合格者発表の瞬間、僕は東京のカプセルホテルにいた。翌日、1回戦を通ることを見越して、2回戦のためにライブの予定を入れていたのだ。2回戦は1回戦が終わったらすぐ始まるし、普段僕が住んでいる宮城では素人でも出れるようなフリーライブはあまりないから、東京にいるときはなるべくライブに出たいと思って予定を入れていた。落ちたときのことは考えていなかった。
いよいよ合格発表が始まる。30分近く前から待機して、YouTubeのライブ配信を見守った。
「エントリーNo.1124 松ぼっくり工藤…」「エントリーNo.1124 松ぼっくり工藤…」「エントリーNo.1124 松ぼっくり工藤…」頭の中で何度も復唱し、自分の名前が呼ばれるのを待つ。
だが、その名前が5分間の配信の中で、一度も出てくることはなかった。
もしかしたら読み飛ばしたのかもしれないと思って、R-1グランプリの公式Twitterを確認してみたが、「本日の合格者」という投稿の中にも、僕の名前は無かった。
結果を確認し終え、スマートフォンを閉じる。真っ黒の画面に映った自分の顔をしばらく見て、思った。
「あれだけR-1に向けて頑張ってきた僕は、この結果をどう受け止めればいいんだろう。」
「というか、まだまだ面白いネタがあるのに、2回戦でそのネタを見ない選択をした審査員はバカだな。」
翌日のライブで僕は、2回戦用に試してみたいネタがあったが、いろいろな思いから1回戦と同じネタをやった。
何かが吹っ切れたのか分からないけど、信じられないくらいにウケた。それと同時に、このネタが通らなかったことの悔しさが込み上げてくる。今まで笑いが起きると嬉しい気持ちにしかならなかったのに、この日は嬉しさと同時に悔しさを感じる、初めての感覚を覚えた。
「松ぼっくり工藤でした、ありがとうございました。」ネタの終わり際この言葉を口にしたとき、なぜだか分からないけど、「もうお笑いのステージに立つのはこれが最後かもしれない」と強く感じた。
さぁ、これからどうしよう
1回戦の日から2日が経った今も、もちろん悔しさは残っている。正直、来年のR-1グランプリに出るかどうかも迷っているくらいだ。でもひとつ自信をもって言えることが、今年R-1に挑戦してみて良かったということ。
今年1年間、R-1グランプリに向けて過ごしてみて気付いたことがある。僕はお笑いが好きだ。そして、それ以上に本気になった自分が好きだ。
今まで勉強も部活も何もかも中途半端で、本気で向き合えるものに出会ったことが無かった気がする。だからこそ今回お笑いと本気で向き合えたことで、今までにない経験をたくさんして、たくさん成長できた。
でもお笑いを続けるかはまだ分からない。正直、自信を無くしてしまった。今回1回戦で落ちたのも、単純な実力不足だと思う。
あれだけ頑張ったと言っても、たかが1年間だし、何年もその世界にいるプロの芸人さんに勝てるわけがなった。でもアマチュアで受かった人もごくわずかだがいる。ということはやっぱり、自分にはお笑いの才能が無かったのだろうか。
なぜ自分が落ちたのかもなんとなく分かっている。結局、1回戦を突破する人のネタは飛び道具なんかじゃない、根幹をなす何かがあった。少なくとも僕が1回戦を突破するにはあと数年はかかると思う。それくらいプロの芸人さんとは差を感じたし、お笑いを続ける自信が無くなった。
でもおそらく、おそらくだけど僕は来年もまたR-1グランプリに出場するだろう。
「やっぱり、お笑いなんかやめよう」今年1年、何回そう思っただろうか。思うように笑いを取れなかったり、緊張でネタがうまくできなかったりしたライブの後、毎回僕はそんな気持ちになった。でも、数日経つと気付いたらまたネタを書いていた。
お笑いは、二郎系ラーメンのようなものだ。食べ終わった後は、もう一生いらないと思っても、次の日にはまた食べたくなるそれと通ずるものがある。
仮にお笑いをやめたとして、僕はこれからお笑い以上に夢中になれるものに出会えるのだろうか。というか僕は元々、自分の存在意義を確立したいとか言ってお笑いを始めた気がする。お笑いをやめた僕には何が残るのだろう。
そう思うとやっぱりお笑いは、僕が僕を幸せにできる唯一の手段だと思った。
とりあえず休もう。
1回戦を落ちたその日から、悔しさをどこにぶつけたらいいのか分からなくて、noteにこの思いを綴ってみた。睡眠を削って、たったの2日で書いたこの8540文字は、すごく熱を帯びていて、あとで見返したら恥ずかしい気持ちになることは想像できる。でもこれが僕の率直な思いだ。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
今回R-1グランプリの1回戦を突破した方、落ちてしまった方、これから出場する方、僕を含め、全ての芸人さんの今後に幸あれ。