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デルタ波とオミクロン波

「なんちゃってSIRモデル」で600日目(9/26)までに10個の波を予想しました。その各波のパラメータは表1のようになります。それぞれの波の感染者数$${I}$$とその合成派を図1A,Bに示します。

パラメーター
図1

基本再生産数$${Q_0}$$は1.54-3.2の間で平均は2.28、ほぼ一定です。メディアは変異株が出るたびに感染力が強くなったと言って脅していますが実際は大きな変化はありません。

これに対して致死率は第1波と第2波が大きく18.0と5.0ですがその後は1-2%程度で平均は3.57です。致死率に関してはウィルスの生物学的性質よりもどのような集団で感染が拡大するかで大きな変化がでると思われます。

SARSもMERSは病院や老人ホームでの院内感染を特徴としています$${^{1)}}$$。こういう場所ではやれば致死率が高くなるのは当然で、第1,2波で致死率が高いのは院内感染が主体であったことを意味します。

第1,2波では感染集団も2,000人、10,000人と小さくなっています。これに比べるとその後の感染規模$${P}$$は10倍、さらに2021年の第9,10波では100倍に増えています。それに伴い致死率も減っています。これは感染が院内から一般社会の健康な人に広がったことを意味しているのでしょう。

際立って致死率が低いのは第10波で致死率は0.34%です。第10波は明らかに他の波とは性質が異なっていることがわかります。

この波は2021年の5月から始まり、8月の終わり頃感染のピークを示します。メディアは感染拡大を喧伝し、非常事態宣言のお陰でせっかくの夏休みが台無しになりました。

しかし、第10波の始まりの5月から終息する12月まで$${Q_0=2.16}$$、$${k=1.99}$$x$${10^{-7}}$$でこの波を再現することができます。つまり、緊急事態宣言もワクチン接種もこの波の動きに大きな影響を与えず、感染の消長はSIRモデルの数式が示す通りに粛々と進行していたことがわかります。

感染人数$${I}$$を感染規模で標準化するために初日の感受性者数$${S_0}$$で割るとどの波も同じような時間経過で消長していることがわかります。波の高さは$${Q_0}$$の大きさを反映します。波の幅は感染期間$${T}$$を反映し一定の値を示します (図1C)。

第10波はデルタ株が主流となった波です。専門家は、「デルタ株は従来よりも感染力と重症化率が劇的に上がっている」と分析し、マスクの着用や外制限などの感染対策を厳格化することを推奨していました$${^{2)}}$$。

秋になり感染が急激に減って来ると今度は「感染者急増や医療逼迫の情報・報道などがメディアなどを通じて多くの人の目に触れることで行動変容が起きたというのが最も考えられる」と分析していました$${^{3)}}$$。

現実には全感染期間を通じて感染力は大きな変化がなく、致死率は際立って低かったのです。感染拡大が大きく見えたのも、急激に減少したように見えたのも、感染した集団が大きかったからでしょう。

政府は年末に感染が終息に向かったことを受けて空港での検疫を緩めました。しかし、このとき海外では第11波のオミクロン株が流行しており、空港検疫でも連日10人ほどの感染者が入国していたのです$${^{4)}}$$。

案の定、今年に入ると新たに第11波のオミクロン株の感染拡大が顕在化しました。メディアは連日感染者数の増加を報道し、先が見えない感染拡大といっています。

しかし、先は見えています。感染波の幅は$${T}$$で決まるのです。まだデータが十分にでていないので確定的なことは見えていませんが1/22/2022までの実測値をSIRモデルにのせると$${Q_0=3.25}$$、$${P=5,000,000}$$、致死率0.5%程度と推定できます (表1)。感染者増加のピークは今月末で、2月には減少し、3月のおわりにはほぼ終息するはずです (図1)。

専門家にはこういったことが見えているはずですが、メディアで公表し国民を安心させてくれないのはなぜでしょうか?

$${^{1)}}$$ウイルス, 53, 201 (2003)

$${^2)}}$$https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210801-00250999

$${^{3)}}$$https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210930-00259117

$${^{4)}}$$https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html