【感想】ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち(Netflix オリジナル・シリーズ)
こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!
マガジン『本を読んだら鳩も立つ』での、本のご紹介です。
今回の記事では、寓話のうさぎたちを巡る英国の物語
『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』
を取り上げつつ、
「組織論」「リーダーシップ論」にも触れてまいります。
「むむむ? なぜうさぎが組織論に……?」
と思ったあなた!
1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!
ただし、ネタバレ注意です!
あのアニメがなんとNetflixに……
さて、
『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』
と聞いて、ピンとくるみなさんはどれだけいらっしゃることでしょうか。
原作は1972年に英国で発行されています。
そして、1978年にやはり英国でアニメーション映画となりました。
多くの方々にとっては、馴染みのない物語でしょう。
鳩も最近とんと目にすることはありませんでしたが、Twitterでとあるフォロワーの方から……
なんと!
あのBBCとの共同制作でNetflixオリジナル・シリーズとしてCGアニメでリメイクされているのです!
子ども向けの恐竜再現番組のような雰囲気のカクカク感はあるものの、
うさぎたち一匹いっぴきの顔つきの描き分けなどは、眼を見張るものがあります。
ピーターラビットの世界?
というわけで、鳩は妻をそそのかして一緒に見てみることにしました。
最初は妻も、
「あらあら、ピーターラビットちゃんみたいねえ。お茶とスプーンが出てきたら楽しいわね」
「小川のせせらぎが優雅ねえ」
と、英国の片田舎の絵本のような世界を楽しんでいました。
さて、ここでWikipediaに書かれているあらすじを見てみることとしましょう。
英国ハンプシャー州に、サンドルフォード繁殖地というウサギたちの巣穴があった。
そこに棲む予知能力をそなえたファイバーというウサギがある日、
災害が迫っていると騒ぎ出す。
彼の兄ヘイズルは長に避難を提案したが、真面目にとりあってもらえなかったため、何羽かのウサギを説得して脱出した。
(中略)
一行は理想の地であるウォーターシップ・ダウンにたどりついた。
彼らが巣穴を掘っていると、
傷つき焦燥したサンドルフォードの上士頭ホリーとブルーベリーが現れ、
サンドルフォードの滅亡を語った。
Wikipedia「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」より
(2021年3月12日閲覧)
おわかりいただけたでしょうか……
野うさぎを主人公にしたアニメーション映画でありながら、
子供向けの甘い内容ではなく、
野生動物に待ち受ける苦難と残酷な現実、
外敵との闘いや共闘が容赦なく描かれる。
Wikipedia「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」より
(2021年3月12日閲覧)
子供向けの!
甘い内容では!
ありません!
というわけで、Netflix版でも原作の惨いシーンはいくつも再現されていました。
しかし、原作アニメ版のような、多くの子どもたちに忘れがたい衝撃を与える雰囲気は押さえこまれているように感じられました。
まあなにせ、「ウォーターシップダウンのうさぎたち」で検索すれば、サジェストされるキーワードはこんな感じです。
(2021年3月14日 閲覧)
神話のごとき忘れがたい世界観
さて、「本の感想を書きます!」といった第1回から、アニメの話ばかりしているという暴挙に出てしまいました。
しかし、『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』はアニメと本、両方を織り交ぜながら楽しめる傑作ですので、あえてこんな紹介としました。
Netflix版でも、見ていて胸が苦しくなるようなシーンは何度も訪れます。
「こんなものを子どもに見せるべきではない!」という向きの意見もあることでしょう。
しかし、
「害のない美しい世界だけを見せる」というのもどこか違うのでは、
と思う鳩です。
そしてなにより寓話では、
登場するキャラクターが人間でないがゆえに、
これを鑑賞する我々は、よりキャラクターを客体化して見つめることができ、
そして我々は寓話のおかげで、作品を媒介として自分を相対的に見つめなおすことができます。
この神話的で残酷な英雄物語を鑑賞することで、子どもでも大人でも得られるものがあるのではないでしょうか。
登場するキャラクター
さて、ここで登場するキャラクターたちの一部を簡単に紹介します。
これらを読むことで、少しでも『ウォーターシップダウンのうさぎたち』へのワクワク感を高めてもらえれば、と思います。
〇ヘイズル
・元々うさぎたちが住んでいた場所から一行を率いて脱出するリーダー。
・冒頭では若輩者で周囲から十分な信頼は得ていない。
・「村に災厄が訪れる」と予言した弟・ファイバーの言葉を信じ、仲間を集め、故郷サンドルフォードを脱出。
〇ファイバー
・未来の危機を予知できるうさぎ。『ゲーム・オブ・スローンズ』で言うところのブラン。サンドルフォードに災厄が訪れることを予言した。
・いつも怯えているが、兄のヘイズルを後押しするほどの意志の強さを見せる。
・こんな特殊能力持ちの予言者が主人公ではないと言うのがまたおもしろいポイント。これがもう少し勇敢な主人公になったら『ゼノブレイド』のシュルクになると思われる。
・Netflix版と違い、昔のアニメの吹替版は年若い少年を思わせる声の高さだった。
〇ビグウィグ
・サンドルフォードの戦いのプロ。
・「ビグウィグ」はBig Wig。頭にふさふさした黒い髪が生えているので、すぐに見分けがつく。
・ジャイアンと、『ビーストウォーズ』のダイノボットを足して2で割った感じ。
〇ダンディライアン
・群れの語り部でありながら一番の俊足の持ち主。鳩も中学時代はこういうキャラ付けが欲しかった。
組織論、リーダーシップ論
さて、もはや言及されないのではと思われた組織論とリーダーシップ論が、やっとここで出てきました。
鳩は以前のブログで、「ジョン・コッターの8段階の変革プロセス」に言及しました。
組織改革の際にどのような手順を踏んでいけばいいかのフレームワークとして、コッターは8つのプロセスを紹介しています。
①危機意識を高める
②推進チームを作る
③ビジョンと戦略を立てる
④ビジョンを周知する
⑤メンバーが行動しやすい環境を整える
⑥短期的な成果を生む
⑦さらなる変革を進める
⑧新しいやり方を文化として根付かせる
コッターはこの8つのプロセスを当てはめた寓話
『カモメになったペンギン』
を自ら執筆しています。
では、この8つのプロセスを『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』に当てはめるとどうなるでしょうか。
さきほど紹介したとおり、ヘイズルは故郷の村では周囲から十分な信頼は得ていない若輩者でした。
そこへ、「村に災厄が訪れる」と弟・ファイバが予言したとき、ヘイズルがとった行動は「①危機意識を高める」でした。
ヘイズルはまず、村のうさぎたちを一斉に率いることができる村長へ話を持っていきますが、村長はかけあってはくれません。
そこでヘイズルは、ファイバーと一緒に「②推進チーム」となり、村中のうさぎたちに自ら声をかけて回ります。
村を脱出したのはいいものの、「③ビジョンと戦略を立てる」ことができずにいたヘイズルは、仲間のうさぎたちからリーダーとしての資質について疑念を持たれます。
その後、立ち寄った養兎場がなんとまた居心地が良く、仲間たちからも「ここに一生住もう」と提案されるヘイズルでしたが、弟のファイバーから、
「なんとしても養兎場を離れるべきだ」
「君は自分だけで物事を解決するのではなく、仲間の優れた能力を引き出す力がある」
と諭されます。
やがて、養兎場には人間の罠が仕掛けられていることがわかると、
ヘイズルは「丘陵地帯を目指し、そこを安住の地とする」と「④ビジョンを周知」し、
リーダーとして、「⑤メンバーが行動しやすい環境を整え」ながら丘陵地帯を目指します。
結果、ウォーターシップダウンという理想的な場所を見つけた一行はここを根城とすることを決め、「⑥短期的な成果を生む」ことに成功します。
ここまでは物語の4分の1であり、
「⑦さらなる変革を進める」
「⑧新しいやり方を文化として根付かせる」
は物語のこの後で展開されていきますが……続きはみなさんの目でご確認ください!
以上、『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』についての感想とリーダーシップ論でした。
次回「本を読んだら鳩も立つ」では、『SAVE THE CATの法則』をご紹介します。
お楽しみに。
to be continued...
参考資料
・リチャード・アダムズ、神宮輝夫訳(1980)『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』(評論社文庫)
・ジョン・P・コッター他、藤原和博訳(2007)『カモメになったペンギン』(ダイヤモンド社)