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文系大学教授になる1:進路決定

 最近ではあまり薦められることもありませんが、学部の新卒・既卒を問わず、大学院に進学して大学等の教員になるという進路があります。それは、18歳人口の激減と大学経営状況の悪化などで、助教や専任講師として新たに大学院の修了者(博士学位取得者や博士課程後期課程満期退学者)を採用する数は、特に文科系大学の場合、非常に厳しくなっているという現状があるからです。それでも、JRECという大学教員等の公募サイトには、時期にもよりますが、相当数の公募案件が掲載されていますし、弊研究室でも福知山公立大学、広島経済大学、常葉大学、北陸大学、桃山学院大学などから、公募で内定をいただき、実際に社会人から転職したケースも少なくありません。
 大学で教員になるには、博士課程後期課程に進学して単位取得満期退学あるいは博士学位を取得することが、実質的な必要条件になります。まれに後期課程在学中に大学への就職等が決定される方もおられますが、これは非常に恵まれたケースと考えられます。それゆえに、文系で大学教員になるには、博士課程後期課程の標準修業期間である5年間をまず終えることが一般的な条件になります。この5年間は当初非常に長いと感じられますが、実際には非常に短く感じられるのが通常です。なぜなら、院生時代には学会報告や論文執筆をはじめとして、相当の研究業績を突き上げることが、博士の学位を取得し、大学教員になるために求められるからです。
 私の研究室(決して七帝や早慶といった世界大学ランキングのランク校ではなく、地方の私立大学です)でも、国際学会での報告や英文査読ジャーナルへの投稿掲載を積極的に進めていて、実際にそれらを実現する方も少なくはないですが、それとてこの方たちが、大学院入学時にたとえば英語についての高度な素地を有されていたかというと、多くはそうではありません。つまりは大学院時代の自己研鑽と院生相互間の自己啓発、そして、少々の指導教授からの指導を通じて、皆さんこうしたハードルを越えていかれるわけです。 大学院に進学して大学教員になろうと考える場合には、まず以上のような大枠を理解することが大切です。
 新規の博士学位取得者は、助教や専任講師や准教授の新規採用募集に対して、極端に表現すれば星の数ほどおられますので、「博士になったから大学教員に!」などという状況には決してありません。そういう発想を改めることが必要です(←正直状況を理解できていないという意味では「甘い」です)。大学への就職という視点で見れば、博士はやっと入場券を取得したレベルと考えることが大切です(←厳しい申しようですが、現実です)。公募に関して申せば、経験則ですが、弊研究室の場合、平均すれば、書類選考(第一次選考)の合格確率が20~30%程度、模擬授業や面接(第二次選考)の合格率が30%といったところでしょうか。なので、何度も失敗してチャレンジし続けることが一般的です。最初はなかなか、書類選考にも合格しません。また、不合格の際には精神的に凹む可能性が非常に高く、この点もご本人それに私のようなまわりの者にとっての、(非常に)大きな課題となります。

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