文系大学教授になる3:教員組織
大学の教員組織が助手・専任講師・助教授・教授とされたのはすでに過去の話です。現在は、助手・准教授・教授が基本で、シニア助教を専任講師として処遇するケースも一般的です。なので、大学の教員組織は、助教・専任講師・准教授・教授と理解している方が、大学生のなかにも多いと思います。この理解は大学の教員組織を理解するときの基本です。
最近はこれに第三の職種とでも言うべきでしょうか、教員と職員の間のミッション(主として研究や研究支援業務)を担う教職員がおられます。職員サイドではたとえば、Research Administrator のように教員の研究活動を支援(ex. 科学研究費の申請書類のチェック)する職員(通常は修士以上の学位を有しています)がおられますし、教員サイドでは教授や准教授の肩書を持ちながら、主としてベテラン教授や研究組織のサポートを、時にはアドミ的な部分も含めて担う准教授や教授もおいでになります。
教授という肩書についても実際は、いくつかの小さな範疇があります。学部の教授、M教授、丸M教授、丸P教授、D教授、丸D教授などがそれらです。Mは修士課程、Dは博士後期課程を意味し、丸付きの教授はそれぞれのマスターやドクターでゼミ(研究指導)を担当します。Pは専門職大学院の教授という意味です。丸D教授が最もシニアの教授ということにはなりますが、博士課程を有しない大学の教授は、たとえば、丸M教授として職務を遂行することになりますので、これらの分類は大学や大学院の設置形態に基づいた小分類という理解を行うべきで、丸D教授が一番「上」というような解釈はしない方が良いと思います。
教授への昇任は、准教授時代の研究実績に基づいて行いますが、私が学位を取得した大学院では、単著1冊の執筆で博士という暗黙の了解があったように感じています。ただし、これは昭和や令和初期までの産物。今日的には、単著よりも国際査読ジャーナル(特にABSの☆ランキング付き)での査読論文の本数を注目するのが、最も適当な教員の研究業績審査だと思います。この場合、日本語の論文は大学の紀要はもとより、日本語の学会誌での査読掲載論文でも、学術的な評価(特に教授の資格審査)においては、ほぼノーカウントに近いと考えた方がよさそうです(特に競争率の高い著名大学の教授公募では)。ただし、助教や准教授として初めて就職希望大学の公募に応募する場合には、そこまでは求められません。日本語論文でもOKです。ただ、競争相手となるほかの公募者が国際ジャーナルをどんどん書いている人だと、当然に不合格となります(もとより、他の点も評価される総合評価だとは思いますが、それでも厳しい世界ではあります)。
大学の教員資格審査は、就職時には競争相手との比較、昇任時には絶対基準との比較において、相当に客観的に行われていると感じています。私は企業等に勤務した経験はありませんが、企業等に勤務されるサラリーマンの人事時に噂されるような社内人脈など、そうしたものはほとんどない世界だと思います。その意味では、大学教員の資格審査は、非常に公正に行われていると言えます。
(2022.05.18)