神々の野、熊野へ。熊野街道①
嫁に誕生日プレゼントで時間をもらった。
「子供の世話とか家事とかしなくてよろしい、どっか行って来い」という事で、考えてみればモノなんかより遥かに嬉しいプレゼントかもしれない。
よぉーし、とばかりに目指すは熊野。本宮、新宮、那智三社巡り。ずっと行ってみたいと思っていたが行けてなかった所。
兄貴も誘ったがさすがに来なかった。土日で、東京から和歌山までクルマで一泊旅行だと、行ったら戻ってくるみたいになりかねない。仕事で忙しい中、睡眠時間削ってまで走るなんて無理!と考えても不思議はない。
まぁいい、1人なら1人の楽しみ方がある。コッチは弾丸ツアーも慣れっこだ。
朝5時におきてモゾモゾ準備。声をひそめて30分で支度して愛車・黄色いホンダ・ビートに乗り込む。12月上旬、空は真っ暗、さすがに寒い。震えながら出発。
だがクルマはエンジンオイル変えたばかり、整備したばかり、すこぶるエンジンの調子はいい。そのまま、西へ、熊野へ。
1日目は東京を出発して、熊野本宮を目指す。
東京インターから、東名を西へ、暁闇での走行。朝日が出てきた御殿場あたりでも7:00前。早いうちに走行距離を稼ぐのはツーリングの鉄則だ。
朝食は新東名に入った後、沼津駿河湾サービスエリアで。
最強の風光明媚を誇るこのサービスエリアだが、鳴り物入りで新設されただけあって、食事は殆どめちゃ高い。だが桜海老天のそば850円は、その辺の蕎麦より圧倒的に美味い、サクサクのあとのせ桜海老天、そして蕎麦をずるり、汁をすすればググッと腹の底まであったまる。
問題はその後だった、腹が張れば瞼が緩む。毎回、早出のツーリングは暖かくなった9時台が悪夢で、眠気との戦いだ。「メガシャキ」飲んで、岡田斗司夫のYoutubeでジブリ映画の独特解釈を聞いて、デカい声で歌を歌って、窓開けて冷気にふれて、なんとか走り続ける(皆さんは、こんながんばらないで休みましょう)。
名古屋まで到達。ちょっと前までは市街を突っ切る高速道路ががごちゃごちゃしてて、とっても嫌だったが、今は湾岸を走ればスムーズ、赤・白・黄色の吊り橋、凄い高いところを走っていて怖い。横風もビートを簡単に持っていく強さ、気をつけねば。
名古屋を抜けて、紀勢自動車道、紀伊長島ICから国道42号線を走る。イメージ的には熊野大社って、名古屋にほど近いって感じだが、全然違う。東京から名古屋くらいの時間をかけて走る。スピードが違うというのもあるが、紀伊半島が自分が思っているよりデカいってことだと思う。関東の人間にありがちな勘違いかもしれない。
ふえー!と途方に暮れるほどの距離だが、実はこの道がほとんど快走路。よし!、とばかりにオープンにして走る。寒くない。海岸沿いの絶景を楽しみながらの42号線ドライブ、気持ちいい。さらに内陸に入っていく国道311号線、168号線の緩やかに続くカーブとアップダウンの道は、ビートの丁度気持ちのいい回転数を使って走れるので疲れを忘れさせるほど、大したスピードで走ってないけど、本当におもしろい。
川沿いに走る緩やかなカーブの続く道。空が狭い。紀伊半島の山々の量感に圧倒され、そして突如して開ける熊野川のだだっ広い河原の抜け感ギャップ。感動する。
紀伊半島の山についていうと、この量感は凄い。例えば立山や南アルプスにあるような、天に向かってそそり立つ青黒い刃のような山容もあれば、ぽってりと優し気に盛り上がる瀬戸内海からみる山々もある。この紀伊半島の山の特徴はとにかく濃い緑に満ち満ちて、水蒸気や霧を漂わせた、いかにも日本の酸素は僕が一番出してますという生命力満載の山々なんじゃないかと思う。
(さすがに多くの神々を生んだ自然だなぁ、)
と、道の両脇に迫りくる山を見て感じ入る。
「神」=「カミ」というのは、本来、「クマ」=「熊」に等しいという説があるそうですね。学者の中沢新一も言ってるし、今回の旅でそのような説明をしている神社の看板を読んだ覚えもあります。日本古来の言葉・大和言葉をさぐると似たような発音の言葉には意外な共通点がある。
だから「熊野」はきっと神のいる場所だと思って間違いなんじゃないかと思います。「この世ではない場所」という意味もあるかも。
(いいムード!)
ともかく東京から初めて来た私は、この山から感じ取る濃厚な生命力を堪能しながら走りました。
こういう時、オープンカーっていいよね。(②へ続く)
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