日記 夫婦の時間
土曜日
夜。珍しくこどもの寝かしつけから生還した私。リビングに下りていくと、いつもは自室にこもって編み物をしている妻がソファでだらだらとしていた。
なんとなく私も隣に座ってみる。そういえばこういう夫婦だけのゆったりとした時間というのも最近はあんまりなかった気がする。寝かしつけでそのまま寝落ちしたり、飲み会で帰りが遅かったり、そんなことばっかりだったなと思っていると、ふいに妻がこちらを見て「……今日さ、一戦どう?」と言ってきた。妻から誘ってくるとは積極的である。
私は優しく「いいよ」と答えて、戦いに備えて少し姿勢を変えた。ちょっとご無沙汰だったので感覚が鈍っているかもしれない。でも長年培ったテクニックはそうそう忘れないしきっと大丈夫だろう。今日も妻を完璧に負かせてやろう。……え?なにをするんですか三毛田さんじゃないよ。野暮なことを聞くんじゃないまったくおませさんめ。なにを、じゃなくてマリオだよ。
私は妻からNintendo Switchのコントローラーを受け取ると、「マリオカート8デラックス」を起動した。100ccのグランプリ。4レースの合計で総合1位を決める勝負である。我々はゲーム好きを公言するようなレベルでは全然ないが、たま〜にこういう遊びをやりたくなる。
この日は私のドライビングテクニックが冴え渡り、4レースとも私が1位だった。今夜も妻をコテンパンにしてやった。はっはっは。「まだまだだねえ」と言うと、妻は深いため息をついて「そういうところだよね」と言ってそのまま二階の自室へ消えていった。どういうところなんだろう。
日曜日
朝から妻が「今めっちゃ熱いゲームがあるんだけど、知ってる?」と言って、スマホを見せてきた。画面を見てみると、いろんな種類とサイズの果物がぷよぷよのように重なっている。知ってるもなにもスイカゲームだった。今更かい。
なぜ妻がこのタイミングで突然スイカゲームを始めたのかわからないが、妻はその日私が公園まで運転している助手席でもずっとそればかりやっていた。よほどハマっているみたいだ。私も見てるといよいよ気になってきて自分のスマホに同じゲームを入れてみた。
今更言うまでもないが、けっこうシンプルなゲームだ。上から果物を落としていき、同じ種類の果物同士を2個くっつけると別の果物1個に進化する。これをさくらんぼ→イチゴ→ブドウ→とどんどん進化させていき、最後にスイカまで作ると高得点なんだけど、このスイカを作るのがけっこう難しいのだ。
そしてこれ、慣れてくると脳を使わずにできてしまうので永遠に続けてしまう。私が熱中していると、横で妻が「ほれ見てみ」と勝ち誇った顔でスマホを見せてきた。うわ、スイカができている!
やがてこどもたちにもこのゲームが見つかり、この日は家族全員で次は私がやるだのなんだの騒ぎながらずっとスイカゲームをしていた。今、日本でスイカゲームにこんなにホットな家族もいないだろう。
おはようございます。月曜日ですね。私は妻を負かすために今日もスイカゲームをやるつもりです。絶対に負けられない。勝つんだ、必ず!