ゲームボーイウォーズアドバンス1+2感想、その他
概要
ゲームボーイウォーズアドバンス1+2
販売元:任天堂 開発元:インテリジェントシステムズ
発売日:2004年11月25日
海外で先行発売されながらも、世界情勢に巻き込まれて日本では延期の末に中止となった悲運のタイトルが、その続編とカップリングになって日本上陸。やっと日本のウォーズがアドバンスした。
ちなみに、タイトルにゲームボーイウォーズとあるが、ファミコンウォーズの系譜にあたる。ちょっと紛らわしい。
評価
システム:★★★★☆
遊びやすさ:★★★★☆
グラフィック:★★★★☆
サウンド:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆
良かった点
・サクサク進むゲームスピード
不肖MaZにとって、初めての現代戦SLGがこの作品だったため、当時は認識が薄かったものの、後になって初代やGBシリーズといった過去作品、大戦略などの他作品を遊んでから分かった。テンポがめちゃくちゃいい。
思考速度が速いのもあるが、マップ上ユニットの動きから戦闘アニメ、カーソル速度までが滑らかで、とにかく遊びやすいのが特徴。2になって幾つかテンポを悪くする要因はあるものの、それまでのシリーズ作品と比べたら圧倒的に速い。
・充実のチュートリアル
前述の通り、初めて現代戦SLGを触れたのが本作だったのだが、このゲームに初めて触れる方は是非とも1のサクセンルームに進んで欲しい。文字通り手取り足取り教えてくれる。ユニットの動かし方から戦闘、占領、輸送、補給、索敵、ショーグン能力(後述)に関してしっかり教わる事が出来る。一通り終わった後は、課外授業という扱いでユニットの生産にも触れる事が出来る。
なお、そのままキャンペーンモードに飛び込むと地獄を見るので注意。難易度的には先に2のキャンペーンを遊んだ方が良いともされるが、登場人物がある程度分かっていた方が良い気がするので、フリーバトルやトライアルでちょっと肩慣らししておこう。
・ゲーム性を損なわないキャラクター
本作から新たに登場した要素として、ショーグンとストーリー形式のキャンペーンモードが挙げられる。
ショーグンはスーパーファミコンウォーズにあった将軍をベースに大きく進化している。ショーグンは各自の得意分野に応じてユニットの能力が上下する性質や、ゲージ消費型の特殊能力『ブレイク』を持ち、一発逆転や追撃などのメークドラマ性を持ち合わせている。
そのデザイン性も良好で、
・バランス型で全体回復ブレイク→スパナを持ったメカ好き少年リョウ
・直接強化型で間接攻撃が苦手→筋肉モリモリマッチョマンのマックス
・歩兵強化型で輸送や占領が得意→常に銃器を持ち歩く特殊部隊長ドミノ
と、平たく言えば能力の擬人化とも捉えられる。
キャンペーンモード自体はゲームボーイウォーズ3にもあったが、こちらは司令部からのミッションで出撃するマップが決まり、戦績に応じて進路が変わる形式だった。本作ではショーグン達が織り成すストーリー性のあるキャンペーンとなっており、デザイン性も相まって全体的に少年漫画的なテイストが強い。
これらの要素により、従来作品と比べて大きくキャラクター性が強化されておりが、それでも本質はゲームそのものであるという点は変わらない。キャンペーンのストーリー性はマップにお題を加味するものであり、生産や施設による配置以外のイベントによる唐突な増援は発生しない。あくまでゲームを楽しむためのオプション、それが本作のキャラクター性と言える。
・楽しみ方が色々あるゲームモード
本作ではキャンペーンの他にも、トライアルとフリーバトルで遊ぶ事が出来るほか、ショップやマップデザインで遊ぶマップを増やせる。
トライアルはマップごとに敵ショーグンが設定されており、プレイヤーは任意のショーグンで攻略する。キャンペーンと同様に戦績が付き、そのスコアを高める事が目的と言っていい。むしろ、キャンペーンがチュートリアルでトライアルが本番とまでみなしている猛者も少なくない。難易度的には、概ね2のキャンペーンがクリア出来るなら一通りのマップを攻略出来る。そこから先は求道者の世界なので、沼り過ぎないように。
フリーバトルはトライアル用マップ含む、全ての対戦用マップでショーグンや各種ルールを自由に設定して遊ぶ。ルール設定では索敵の有無、天候変化、拠点あたりの収入、ターン制限、拠点占領数による優勢勝利の有無、ショーグン能力の有無まで設定する事が出来るため、そこそこ広いマップで短期決戦とか、ショーグン能力なしで正々堂々戦略勝負とか、物凄い収入で高価なユニットを使い倒すとか、逆トライアルとか、プレイヤーの数だけ遊びが広がる。戦績も付かないので、早解きが苦手でじっくり遊びたい人にもおすすめ。
ショップはキャンペーンやトライアルで入手出来るコイン(2ではポイント)を利用して、トライアルやフリーバトルで遊べるマップやショーグンを購入出来る。その際、店主のハチからちょっとしたゲームのヒントや小話が聞ける事も。ちなみに、キャンペーンクリア後は高難易度のハードキャンペーン、2ではハードキャンペーンクリア後にサウンドテストが購入出来るようになる。
マップデザインは文字通り、指定されたサイズと拠点数の範囲内で好きにマップを作れるモードであり、2のブラックホール軍のキャノン系、レーザー系、要塞、ファクトリー、火山以外なら自由に配置出来る。ユニットを置く事も出来るので、生産なし初期配置のみのマップも製作可能。作ったマップはフリーバトルで遊べるほか、通信ケーブルで他のプレイヤーにもあげる事が出来る。ぶっちゃけ、画像などで情報共有した方が早いけど。
どのように楽しむかはプレイヤー次第である。
気になった点
・難易度が高い
本作で特に気になる点は、キャンペーンの難易度である。特に1。チュートリアルの方でも少し触れたが、ゲームの遊び方を覚えたてのプレイヤーがいきなり飛び込むと本当に地獄を見る難易度。
というのも、最初のステージはこちらのユニットも充分に揃った初期配置マップで難易度も高くないのだが(厳密には高スコアの基準が厳しい)、次のステージは敵ショーグンが間接攻撃の射程が伸びるビリー、その次は空ユニット強化型で再行動とかいう頭おかしいブレイクを使ってくるイーグルという、初見殺しにも程があるステージが連続するのだ。そこを抜ければ最盛期のマックスが仲間になるため、ルート選択では幾分か楽にはなる。
正直、ビリーとイーグルが敵として出てくるマップに気を付ければ、大半のマップはマックスで殴れば通れる事が多いのだが、最終戦に待ち受けるラスボスのヘルボウズが隕石を落としてくるとかいう最高にぶっ飛んだブレイクをかましてくる。しかもその戦いは道中のルートで仲間が変化する。左側のショーグンにマックスがいればある程度は楽になるが……そして、とあるルートを選択すると、ホントの最終決戦が開幕。
なお、ここまでの話は全て普通のキャンペーンである。ハードキャンペーンはそれ以上の難易度なので、さらなる地獄へ飛び込む事になる。ちなみに、2のキャンペーンは普通もハードもだいぶ難易度が落とされており、遊びやすくなっている。簡単とは言ってない。
・テンポが悪くなる箇所がある
サクサク進むゲームスピードが売りの本作だが、幾つかテンポが著しく悪くなるポイントが存在する。その一つが、2のキャンペーンに出てくるレーザー砲だ。
2のキャンペーンではブラックホール軍が所謂マップ兵器のような軍備をマップ上に置いており、攻撃範囲に入ったユニットにダメージを与える。一部のマップではこれらの破壊が作戦目標になる事もあり、その耐久性は地形効果を受けない重戦車とほぼ同じとなっている。
その中でもレーザー砲は毎ターン開始時に、自身から十字方向に射程∞のレーザーを発射するのだが、エネルギーを溜めてからレーザーを発射するエフェクトがあり、微妙に時間が掛かる。複数置かれていたら、全てのレーザー砲が撃ち終わるまでターンが始まらない。クッソ時間が掛かる。キャノン系は攻撃範囲に対象がいなければ撃たないので、影響は少ない。
もう一つが、ブレイクによるエフェクト時間。ユニットに効果があるブレイクを発動すると、その対象ユニット全てにエフェクトが掛かる。例えばリョウは指揮下にあるユニット全て、マックスは歩兵系以外の直接攻撃系ユニット、ドミノは歩兵系といった具合である。戦闘が長引いたり、マップが広くなるとユニットの数も増えるため、ブレイクによるエフェクトがそれだけ長くなる。そうなると、ゲージが短くブレイクを連発してくるスネーク、対象ユニットが敵味方全体のためエフェクトが長いホーク辺りが、テンポを悪くする要因になってしまう。
まぁ、これらを差し引きしても過去作品と比べれば速いといえば速いのだが、気になる人は気になってしまうだろう。
・ショーグンの能力バランスが悪い
本作の一番の目玉システムであるショーグンだが、肝心のバランスにやや難がある。明らかに強弱が発生しているのだ。
1はとにかくマックスが強すぎる。歩兵系以外の直接攻撃力+50%、1.5倍である。スーパーカップ(麺の方)じゃないんだぞ。間接攻撃射程-1、攻撃力-20%という弱点はあるが、まったくもって釣り合っていない。
また、1のレッドスター以外のショーグンは『道中で出てきた敵キャラやライバルキャラが使える』程度のおまけ要素な部分もあったのだろうが、ホイップやモップがあからさまに弱い。ホイップは雪に強く雨に弱い、モップは海ユニットの地形効果アップと降水確率アップ。ホイップは戦ってると嫌なタイミングで雪を降らせて足を止めてくる、モップは高価な海ユニット使いなので全体ダメージのブレイクが思った以上に早く飛んでくるのだが、この辺りの調整は『敵として出てくるから強い』みたいな部分がある。
2ではマックスが通常能力弱体化の代わりにスペシャルブレイクで移動力+2されるなど、全体的にバランス調整が行われたため、極端な強弱はなくなった。と思ったらビリーが強くなった。間接攻撃力+20%が付き、歩兵系-20%が無くなるという。また、せっかくの新キャラなのにハンナが強くない。歩兵系にマイナスが付く事はそれ自体が大きなハンデなのだ…
ちなみに、1でも2でもアスカは索敵戦専用みたいな節があるが、HP残量隠蔽は何気に鬱陶しい。トライアルのパックンランドをやってみよう。
総評
戦略SLG特有のとっつきにくさをどこまで改善出来るかという、ファミコンウォーズシリーズが常々取り組んできた課題に対し、最も大きな前進を成し遂げたタイトルの一つ。個人的に、この課題に答えを出せたのは初代と本作だと感じている。どのくらいとっつきやすいかと言うと、戦闘機と爆撃機の区別すら危うかった自分がミリタリーの扉を叩くほどにまでのめり込んだ程だったりする。
キャラクター要素の追加に関しては、今でも日本の古参より賛否の分かれる節があり、それが本作以降の日本での展開に影を落とした感は否めないが、海外展開に大きく貢献したと思う。色合いもGBAに合わせたポップなものになっており、キャラクター性と合わせて触れやすさを強めていると言える。キャンペーンモードのストーリー性はゲーム全体から見ればフレーバーのようなものだが、あっさり目で良い塩梅。
本作以降のシリーズ作品にて、ゲームバランスは2が最も安定している印象。1は荒削りな部分もあってショーグン間のバランスに難があり、DSはユニットの性能や価格にインフレの傾向がある上、タッグブレイクによる一方的展開に陥りやすい部分がある。DS2はユニット、ショーグンのバランスは大きく改善されたものの、バイク兵と対戦車砲が強すぎる。また、対戦マップの出来にやや難がある。
とっつきやすさはかなりのものだが、そもそも現代戦SLGというジャンルゆえの敷居のは高さはどうしてもある。自分にこのゲームが合うかどうか分からないという方は、Switchオンラインで初代ファミコンウォーズが配信されているため、遊んでみるといいかもしれない。本作が配信されれば何も言う事はないのだが。
余談
本作の主人公であるリョウについて。
しばしば彼の迷言に「戦争は楽しいぞ!」というクッソ物騒なものがあると言われているが、実は原作ではそのような発言はない。
ない……うん、ない。というか、その言い回しでは言っていない。
【最強!キクチヨ部隊】をリョウ選択でクリア時
「たのしかったぞー!」
【海戦!】をリョウ選択でクリア時
「強い奴はやっぱりたのしいぞっ!」
【戦いの後ろで】のキャラ選択時
「モップと戦うのはたのしいぞ!」
【戦いの後ろで】をマックス選択で開始時
「モップと言えば海ユニット!何度見てもたのしいぞっ!」
【決着!シッコクノモリ!】をイーグル参戦でクリア時
「でも、たのしかったぞ!」
※イーグル不在時にはモップに対し「たのしいぞ!」をぶっ放す
……えー、はい。これ以上の弁護は出来ないという結果になりました。