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Advance Wars 1+2:Re-Boot Camp感想、その他


概要

Advance Wars 1+2: Re-Boot Camp
販売元:任天堂 開発元:WayForward
発売日:2023年4月21日(海外)

 2001~2002年、2003年にGBAで発売された、Advance Warsの二作品が、ひとつになってリメイクされた。海外で理不尽に理不尽を重ねられた悲運の良作リメイク、ここに爆誕。
 また、本レビューにおいて、リメイク元となる『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』での日本語版と海外版で名前が異なる部分に関しては、日本語版準拠で記載します。

評価

システム:★★★★☆
遊びやすさ:★★★☆☆
グラフィック:★★★★☆
サウンド:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆

良かった点

・変わらずの面白さ、進化した軽快さ
 開発元が変わった事でゲーム性の変化があるのではという懸念があったが、そこまで大きな変化はなく、原作のテンポの良さとUIの快適さをしっかりリメイクしてくれた。 
 新機能の高速化はPCのターンを倍速で進められる上、ボタンを離せばすぐに等速に戻るので、見たい所や気になる所はちゃんと見れるので割と便利。

・キャラクター性の強化
 本作では全ショーグンにボイスが付き、ショーグンブレイク発動時は共通のカットインから専用アニメに変更、発動ターンのBGMもアレンジ版に切り替わるなど、個性を引き立てる演出が増えた。1のキャンペーンではBGMが大きく変わり、ストーリーの要所でショーグンのテーマをアレンジしたBGMが流れるようになった。
 リメイクでの変更点として、ショーグンの衣装が2のもので統一され、日本語版に寄ったデザインとなった。ビリーのテンガロンハット、アスカの眼鏡は日本語版準拠となっている。また、ホイップの毛色、アスカの服の色は海外版準拠となっている。キクチヨの武者鎧やモップの海賊、ヘルボウズの番長姿は見られなくなってしまった。

・まさかのファンサービス
 本作はファンサービス要素も多い。
 1のキャンペーンモードではBGMが全体的に差し替えやアレンジがされており、全体マップ画面では初代ファミコンウォーズのマップ選択画面、戦績画面ではスーパーファミコンウォーズ、エンディングではブルームーン軍エンディングのBGMがアレンジされて流れる。
 なんでこれ日本で発売されなかったんだ?
 また、キャンペーン終盤で一度だけ登場したコピーリョウが新規ショーグンとして作られ、声のトーンや口調、全体的な色調が異なっている。さらに、カラーチェンジでDS版のコピーリョウに近い色にも出来る。ちなみに、コピーリョウはスペシャルブレイクが無いため、2仕様のトライアルマップに連れていくと、ちょっとしたハンデ戦のようになる。
 本作ではプレイヤーデータやショップで購入したサウンドテスト、一枚絵などを視聴出来るギャラリーモードがあるのだが、そこでは初代のルール設定時のBGMがゆったりとした曲調にアレンジされて流れる。
 なんでこれ日本で発売されなかったんだ?
 
そして、このポストを見て頂きたい。(11/26追記)

 だからなんで日本で発売されなかったんだ?

・キャンペーンモードの遊びやすさの向上(11/9追記)
 本作のリメイク要素で特に改善されたのが、キャンペーンモードのマップ選択制である。原作では一度クリアしたマップは再度選択出来ず、最初からやり直さなければならなかった。本作ではエンディング後、一度クリアしたマップも再度選択し、遊び直す事が出来るようになった。これは突撃!!シリーズやDS2の仕様に近い。そのため、2の研究所の地図を取り損ねた場合でも再プレイが可能で、取り逃しに対して柔軟になった。
 また、1のキャンペーンの仕様が変わっており、最終戦である『決着!漆黒の森!』では道中のルートで両サイドのショーグンが変わる仕様だったのが、2のような選択制になった。進め方次第で苦手なショーグンを使わざるを得なくなる事による詰み防止にもなる。そのため、一部ストーリーに変化が生じている(ルート問わずイーグルが最終戦に合流しているシナリオになっている)。また、真の最終戦である『最強のライバル!』は、全てのマップを攻略後に出現するようになった。これは初代のエンディングマップの出現条件と同様である。

 キャンペーンモードの難易度にも一部調整が加えられており、原作にはなかった低難易度のカジュアルが追加され、またハードキャンペーンはチャレンジキャンペーンと改められた。イージー、ノーマル、ハードではなく、カジュアル、クラシック、チャレンジという表記になる事で、まずは低難易度から入る事への抵抗感を低減するおいう意味では初心者に優しくなっている。原作のハードキャンペーンと比べて本作のチャレンジキャンペーンは報酬が大きく減っており、エンディングの一枚絵のみとなっている。
 原作のハードクリア報酬は、1だとキャサリン解禁、2だとハチ解禁とサウンドテストだった。これは、チャレンジは高難易度なので、腕に覚えがあるプレイヤーに挑んで欲しいという意味合いを感じる。そして、キャンペーン以外でのプレイ要素の解禁に大きな制限を設けないという調整と思われる。
 正直、原作の1ハードがクリア出来なかった身としてはありがたい

・ゲーム性にすべてを
 不肖MaZがファミコンウォーズを好む理由のひとつに、ゲーム性こそが第一であるというバランスの振り方がある。GBA版以降、ストーリー性の高いキャンペーンモードやキャラクター性の高いショーグンシステムが実装されたものの、それらはあくまでゲームを彩るガジェットであり、本質はゲームにこそある。ストーリーもキャラクターも、ゲームを盛り立てこそすれ足を引っ張るような事はしない。常にプレイヤーがクリアな気持ちで攻略出来る味付けがされているのだ。
 サウンドも同様で、ショーグン一人一人に専用のBGMがあてられており、キャラクター性とリンクした曲調ではあるが、過剰に盛り上げるわけでもなく、意味深に沈痛なラインになるわけでもない。かといって頭に残らない凡曲というわけでもない。絶妙なスルメ感があるのだ。
 そういったゲーム性第一の部分はしっかりと継承されている。

気になった点

・セーブ廃止による難易度の変化
 本作では原作と異なり、中断のためのセーブはオートセーブとなったためか、手動でのセーブコマンドが廃止されている。代わりに、ターンの開始時点からやり直すコマンドが追加されたのだが、これにより微妙な難易度の変化が生じた。
 基本的にランダム性の低いシリーズではあるが、戦闘時に最大9%(能力補正なし)のランダムダメージが発生する本作では、高難度マップではターン毎ではなくユニットの行動ごとにセーブする事がまれによくある。ターン毎のやり直しでは小回りが効かないのだ。
 さらに、本作でハードキャンペーンにあたるチャレンジキャンペーンでは、ターン毎のやり直しそのものが出来ない。クソ乱数を引いてもリカバリーが出来ないのはかなり厄介で、ランダムダメージ幅の広いアスカやコングを相手にするのがかなりしんどくなった。

・後の作品で出来た事のフィードバックが少ない(11/9改稿)
 あくまでもGBA作品のリメイクという立ち位置ゆえなのかもしれないが、ファミコンウォーズDSで実装された戦闘アニメのAボタンスキップ、DS2で実装されたブレイク発動演出のカットがオプションで選べない、オンライン野良マッチが出来ないなど、後の作品で出来た事のフィードバックが少ないは気になった。
 参考までにDS2のオンライン野良マッチはどうだったかと言うと、2Pマップ限定のタイマンで30ターン優勢というルール。体感では、概ね半分を差し掛かった辺りで勝負が決まり、降伏によって勝敗が決する事が多かった。なお、当時のWi-Fiコネクションはチート対策が脆弱なため、先攻でバイク兵がずっと俺のターンして本部占領なんて事もあった。
 ブレイク発動時の演出は原作よりも長くなるケースがある(対象ユニットにエフェクトが掛かるタイプが長い)ため、連発されるとテンポが悪くなる(特にゲージの短いスネークが乱発してくる)。システム減点は主にこれが原因。

・一部ユニットの視認性が悪い
 本作ではマップ上のユニットも戦闘画面のモデルをベースに描き起こされており、原作のような各勢力共通のアイコン(歩兵系除く)ではなくなっている。同じ軽戦車でも、レッドスター軍とブルームーン軍ではマップ上のアイコンも異なるといった寸法だ。
 これで何が問題かというと、一部ユニットの判別が付きにくくなるという点だ。最たる例では、ブラックホール軍の戦艦と護衛艦。もともと艦船ユニットは戦闘画面でのグラフィックが大きい為、マップ上ではかなり縮小された姿でアイコン化される。この時点で既にアイコンの記号性が半ば失われているのだが、ブラックホール軍の戦艦や護衛艦は主砲が撃つ時にだけ持ち上がって来るアニメーションになっており、普段は船体に格納されている。さらに船体全体のシルエットが近未来的で似通っているため、マップ上でポツンと置かれていると見分けが付きにくいのだ
 他にも、車体が同じイエローコメット軍やブラックホール軍のロケット砲と対空ミサイルなど、パッと見で混乱する事がたまに発生する。個人的には、オプションでアイコン化も出来ればと思う。

・マップデザインでバグがある
 
キャンペーンクリア後、マップデザインでブラックホール軍の軍備や火山(火山弾落下ポイント指定可能)が使えるようになるのだが、キャノン系の軍備の発射タイミングが『1Pのターン開始時』になっており、無差別に砲撃する中立兵器となっている。さらに、ミニキャノンは一度に2回砲撃するなど、バグなんだか仕様なんだか分からない不具合がある。
 ちなみに、DSでブラックホール軍の軍備があるトライアルマップをフリーバトルで選び、同軍をプレイヤーで遊ぶと分かるのだが、キャノン系の軍備は『ブラックホール軍のターンの開始時』に自動で砲撃する仕様になっている。

総評

 あの『ウォーズ』が帰って来た
 開発元がいつものインテリジェントシステムズではなく、アメリカのWayForwardとなった事で、一抹の不安が過った。原作とリメイクで開発元が異なる事により、本来あったゲーム性が損なわれる心配があったのだ。
 WayForwardといえば、シャンティシリーズ等で知られるカリフォルニアの老舗ゲーム開発スタジオである。アクションやパズルに定評がありながら、ストラテジーゲームの開発を手掛けた記録がないため、心配は嵩むばかりだった。
 しかし、それは杞憂であった。日本では発売中止となったGBAの二作品をカップリング版として発売したゲームボーイウォーズアドバンス1+2の時に感じた『程よいグラフィック、程よいサウンド、程よいキャラクター、快適なUIとテンポ、初心者にも優しくやや辛口にもなるバランス』はしっかり残っていたのだ。

 海外のプレイヤーの一部からは、グラフィックに関して難ありとの声も聞かれ『ユニットがプラスチックのおもちゃのようである』とも『GBA時代のようなドット絵の方が良かった』とも。しかし、それではSwitchオンラインの配信で良くなってしまう。それはそれで欲しいのだが、リメイクでもリマスターでも、今の時代に即したウォーズが存在する事が大事なんだと思う。あと、突撃!!ファミコンウォーズ級のグラフィックで描かれた戦車をあの画面に敷き詰めてみよう。画面がクッソうるさくなる。あのシンプルなアイコンは、視認性向上の意味もあると思う(ちょっと問題はあったが)。

 気になった点は多いが、そのうちの幾つかはDS以降の作品を比較しての事である。良い点も多々あり、フリーズや進行不能といったゲームに支障をきたすバグも無いため、しっかり遊べる良リメイクである。

 購入手段としては、輸入ゲームを取り扱っている店でパッケージ版を購入、amazonで輸入されたパッケージ版を購入、Switchの海外アカウントを作ってドルを課金しダウンロード版を購入の三種類が大きく上げられる。自分は輸入ゲーム店のオンラインショップで購入したのだが、発売後一週間というタイミングだったため、ソフトと輸入に関する諸費用と送料で1万円近くした。海外アカウントを作る方法は少々敷居が高い。今ならamazonで諸々の費用を込みで6,000~7,000円くらいなので、やりやすい方を選ぼう。

 はっきり言って敷居は高い。自分にこのゲームが合うかどうか分からないという方は、Switchオンラインで初代ファミコンウォーズを遊んでみるのも良いかもしれない。システム面で違いはあるが、根底は同じである。


ここから先、かなり火力の高い発言が飛び交うため、間を置かせて頂きます。


本作をめぐる許せねぇポイント

・日本語版が存在しない
 2021年6月のニンテンドーダイレクトで初めて情報が公開され、数々の延期を経て発売された。海外で。日本語版は発売どころかそもそも存在すらしない。初動の情報公開から日本語の公式情報や雑誌しか追ってない人は、存在を知る事さえ出来ない。
 2023年の海外のベストゲームを決めるTHE GAME AWARDSでも、シム・ストラテジー部門にファイアーエムブレム エンゲージ、ピクミン4と共にノミネートされながら、日本の任天堂公式Xアカウントは専らマリオとゼルダにしか触れないという有様だった。最終的にシム・ストラテジー部門はピクミン4が授賞したのだが、なんともスッキリしない。
 まるで、本作の存在自体を日本のユーザーに知られたくないのではとも取れるレベルの隠蔽ぶりである。もちろん、海外事情に少しでも通じてるユーザーには知られている。
 どうしてこんな事になってしまったのかというと、まぁ、原因の大半は売上本数(出荷数)ではあるのだが……日本人はストラテジーを遊ばない。

・販売戦略があまりにも稚拙で杜撰

 過去の記事と重複する箇所があるけど、おさらいも兼ねて。
 本作は二度の発売延期を経て発売されたのだが、2021年6月のダイレクト発表時の発売予定は同年12月だった。しかし、そこから丸々4ヶ月間、何の音沙汰もないまま、10月の発売延期告知が出された。

 開発の遅れによるものとされているが、詳細は不明。同時期に発表されたおすそわけるメイドインワリオ、メトロイドドレッドは秋には発売されていた(タイミング的にこれらは既に完成していたと思われるが)。
 当時、延期先の発売予定は2022年春とされていた。が、数ヶ月後に2022年4月8日である事が判明する。海外のe-shopの商品ページにて、思いっきり発売予定日が表示されていたのだ。その後、2022年2月のダイレクトにて、改めてその日付けでの発売予定が告知された。
 そして日本時間2022年3月8日23時、発売延期が告知された。

 世界情勢を理由に無期発売延期である。日本で原作となるゲームボーイウォーズアドバンスが最終的に中止になったのと同じ理由である(同時多発テロとアフガン戦争により2001年10月25日予定から延期を重ねて中止)。
 原因は言うまでもなく、同年2月24日に発生したロシアによるウクライナ侵攻であり、また作中に出てくるブルームーン軍のモデルがソ連〜ロシアである事も一因といわれている。
 リアル戦争が起きてしまった事による延期は仕方なく、もはや諦めざるを得ないという空気感はあった。2001年の同時多発テロの時も、現代戦を取り扱った多くのゲームがCM中止など影響受けたし。
 だが今は違う。昨今のドンパチゲーはそのくらいじゃ中止になどならず、世界情勢を理由に延期したのはウォーズだけとなった(戦争ゲーム以外では、リアルな土地が出てくるトラック運転のシミュレータのロシア方面作品が中止になった)。
 2022年9月には、海外のゲームジャーナリストの方が任天堂に直接質問をぶつけるという逆ダイレクトが発生、中止ではないとの言質を取り付けた。
 2023年2月のダイレクトにて同年4月21日の発売が決定、実に一年の延期を経ての発売となった。ちなみにこの年の上半期はソフトラインナップがギュウギュウ詰めで、なんとかねじ込めた感が強い。

1月 ファイアーエムブレム エンゲージ
2月 星のカービィ Wiiデラックス
3月 ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔
4月 Advance Wars 1+2: Re-Boot Camp
5月 ゼルダの伝説 ティアーズオブキングダム
6月 エブリバディ 1-2-Switch

 このラインナップである
 さらに、2月にはメトロイドプライムのリマスター版やポケモン、スプラトゥーンの追加DLC、6月にはピクミンのリマスター、ゲームではないが4月はマリオの映画があったのが2023年上半期という怪物じみたタイミングである。ちなみに、上半期を避けても

7月 ピクミン4
8月 マリオカート8DX追加DLC
9月 超おどるメイドインワリオ、F-ZERO 99
10月 スーパーマリオブラザーズワンダー
11月 スーパーマリオRPG

 マジで逃げ場がない状態だった。
 そんなセルゲームのヤムチャみたいな状況のウォーズがどのような販売戦略をもって立ち向かったかと言うと、大した事をしなかった。冗談ではなく、本当に大した事をしなかったのである。北米任天堂公式Xが勢力ならびにキャラクター紹介を半分ほどしただけで、あとは発売しますポストが何回かと小売店の店頭ポップくらいで、そこまで大きな話題にはしなかった感がある。
 個人的な所感では、一番プロモーションに力を入れていたのはスペイン。なんと、初回特典にステッカーが付いてきたらしいのだ……

 ゲームの出来とは一切関係ないところで、不当に貶められている感がどうしても拭えない本作。決して悪いゲームではない。むしろ気になった点のうち、オンライン周りとバグの修正さえしてくれればさらに点数は跳ね上がるだけのポテンシャルを秘めている。もっと多くの人に知って貰いたい作品である。
 そのためにも、SwitchオンラインのGBAにて、原作のゲームボーイウォーズアドバンス1+2を配信して欲しかったりする。

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