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星のカービィ64 感想
概要
星のカービィ64
販売元:任天堂 開発元:HAL研究所
発売日:2000年3月24日
機種:ニンテンドウ64 ジャンル:アクション
まんまるピンクの星のカービィ、N64に登場。新たな能力であるコピーミクスを引っ提げて、クリスタルを巡る宇宙の冒険に、いざ出発。最大4人まで遊べるミニゲームも付いて、間口も広がった良作。
評価
システム:★★★★☆
遊びやすさ:★★★☆☆
グラフィック:★★★★☆
サウンド:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
良かった点
・コピーとミックスによるバラエティの幅が広い
本作最大の特徴は、コピー能力同士を組み合わせる事で生まれるミックスであり、過去作品におけるルーレット方式ではなく、全く新しい能力として用いられる。その数全部で36種類。基本となるコピー能力は、バーニング、アイス、スパーク、カッター、ニードル、ストーン、ボムの7種類で、それらを掛け合わせる事で生まれるミックスが28種類。そして+α。
本作では過去作の2や3と同様、特定のコピー能力でないと壊せないブロックが存在する。しかも、本作ではその隠し方が巧妙で、コピー能力のアイコンに使われている色が用いられている。例えば、1-1の2個目のクリスタルはボムで壊すブロックの中なのだが、ボムの色である黒い岩のような形をしている。もちろん、特定のミックスでしか壊せないブロックも存在する。明らかに異なる色がある場合もあれば、本当に巧く隠されている場合もある。
ミックスで多く使われるのは、移動に便利、攻撃範囲が広いの二点が強い。前者ならバーニング×2、バーニングボム、ストーンカッター(ピッチ変身)、アイスストーン(これはスターアライズでフレンズ能力として再登場した)辺りが使われやすく、後者ならバーニング×2、バーニングボム、バーニングストーン、スパークストーン辺りが有力。
他にも、炎の大剣を振るうバーニングカッター、気分はジェダイかゲルググのスパークカッター、ドリルは漢の浪漫なニードルストーン、攻撃と回復を兼ねるアイススパーク(これもスターアライズで近い能力が登場した)辺りも人気が高い。
ゲーム全体の難易度は低めだが、特定のコピーやミックスで駆け抜けたりするのも一興。強力なミックスを必要時以外封印する縛りをしても良い。
・隠れた遊び要素リフトアップ
ミックスに隠れる形となった新要素として、リフトアップがある。これはミックス能力星を作る手段として用いられる事が多いのだが、一部の敵キャラや吸い込める攻撃をリフトアップすると、異なるアクションが発生する事がある。これによって本来は能力を持たないスカキャラが疑似的な能力を持ったり、コピー不可能なぼすぶっちで有力な攻撃手段が出来たりする。
例えば、ブロントバートなら大きく上方向に飛ぶ、グランクなら上方向に弾を吐き出す、ポピーJrの爆弾はボムと同じエフェクトが発生する爆弾として投げられる(ボムで壊せるブロックには無効)など。吸い込んだ敵の能力を使うというカービィのゲーム性を、違った形でアプローチしたギミックと言える。なお、一部の敵はリフトアップした途端に爆発してダメージを受けるので注意。
・収集要素とミニゲームによる懐の深さ
本作で初めて実装され、最近のシリーズまで続いている要素として、ゲーム内情報の収集要素がある。
本作のゴールゲームはレジャーシートに広げられたアイテムを取るため、カービィのジャンプする向きと距離を調整する仕様になっている。そのアイテムの中にカードがあり、取るとメニュー画面のオプションからカードリストに登録され、作中に出てくる敵キャラの画像と名前が表示される。本作の敵キャラは諸般の事情で過去作品とは大きく異なっているほか、本作にしか登場しない敵も少なくないので、名前を覚える意味でも集めるメリットが存在する。
なお、このカード集めはなかなかの苦行である。ゴールゲームでカードを取得する正確さを求められ、さらにカードの中身はダブる。ダブった時はカービィの反応が違うので一発で分かる。本作はコース数が少ない分、1コースが長めに作られているため、ゴールゲームのための周回も何気に時間が掛かる。それでも、集められる要素は出来るだけ集めたいというのが生き物のサガである。
本作はメインモード以外にも、最大4人まで同時に遊ぶ事が出来るミニゲームが存在する。ジャンプする幅を切り替えて障害物を避けるけんけんレース、衝撃波で足場のブロックを崩して落とし合うおちおちファイト、上から落ちてくる木の実や宝石を自分の籠で受け取るために場所を取り合うとるとるバトルの3種類。不肖MaZは対戦相手に恵まれなかったため、CP相手にしていたのだが、人間同士でやるとたまにリアルファイトになるとか……
おちおちファイトはWiiデラックスのミニゲームにも再録されており、あの時と同じルールで今度はメタナイトが落とされまくる光景が見られる。
メインモードや収集要素を1人で、ミニゲームを複数人で、といった具合で楽しみ方を変える事が出来るあたり、懐の深さを感じる。
気になった点
・難易度が低い
本作の難易度はシリーズ全体でも見ても特に低い。ナンバリング作品特有の『必要なアイテムを揃えてクリアしないとバッドエンド』は本作でも健在で、クリスタルの欠片を全て集めていないとリップルスターで話が終わってしまう。その時の妖精女王の視線がめちゃくちゃ怖い。
そのクリスタルの欠片回収を含めても、夢の泉の物語よりも少し上、2や3と比べると低い。キャラクターの挙動が全体的にゆっくりなため、そこまで激しいアクションを要求される所がないというのが大きい。また、一部のコピーやミックスをフル活用するとさらにヌルゲーになる。前世代機スーパーファミコンのスーパーデラックスや3がある程度の歯ごたえがあり、N64はその次世代機という事で、一定の難易度を期待した人にとっては肩透かしと取られ兼ねない印象はあった。中ボスの概念が無いのも一因かと。
それでいて妙な所で即死するポイントがちらほら見掛けられる。2-2の倒れてくる柱や石柱プレス、2-4のピラミッド内の浮遊足場に挟まる、5-4のみんなのトラウマこうじょうけんがく等、微妙な即死ポイントによるバランス調整は少々の歪さを感じてしまう。
とはいえ、縛りプレイを課す事で割と好きに弄れるため、コピーやミックス、リフトアップを調整して自分なりに味変するのも一つの楽しみではある。
・使いにくい能力がある
本作最大の要素であるミックスだが、その内容は何気に当たり外れが大きい。というか、ミックス元として恵まれているコピーとそうでないコピーの差が激しい。
バーニングは特に強力で、単独でもそこそこ強いが、ミックスするとぶっちゃけスパークとアイス以外ハズレが無いくらい便利。最強はストーン、ボムの自爆が怖いくらいで、アイスと組んでも強いのが便利。
逆にミックスしない方が強いレベルなのがアイス。ストーン、スパーク、強いてニードルくらいしか使いやすいミックスが無い。バーニングアイスに至っては控えめに言って産廃レベル。水が出るコピーはドロッチェ団のバブルを待つのだ……
使えるミックスとそうでないミックスの差があるため、どうしても使われやすさが偏ってしまう。せっかく能力の種類が豊富なのに、少々勿体無い気がする。まぁ、その辺のきらいは前作3の仲間と能力の組み合わせからも感じ取れたけど。
・カービィの移動速度が遅い
本作は処理の関係か難易度調整の為か、カービィの移動速度がかなり控えめに設定されている。無敵状態になると移動速度が速くなるのだが、その状態が過去作品の通常に近い。少々もったりしたプレイ感になってしまうため、遊びやすさという意味では減点になってしまう。
走るだけでなくジャンプや下降の速度も全体的にゆったりしているため、ゲームのスピードそのものが遅いのではと思われるが、一部の敵キャラやボスの攻撃速度は過去作品と同等だったりする。特に、5ボスのHR-Hのレーザー薙ぎ払いは初見殺しにも程がある速さ。人によっては4ボスのヨガンに苦戦するという事も……
また、移動速度そのものではないが、ホバリングに回数制限が設けられており、従来のように「どうしても無理なら飛び続けてやり過ごす」が出来なくなっている。とはいえ、全体的な難易度が低いのでそこまで大きな問題にはならないし、ホバリング制限がなかったら一部クリスタルの取得に必要な謎解き要素が意味を成さなくなる。絶妙なバランス調整を感じる。
ストーリー
妖精が住む平和な星リップルスターが、突如として黒い影に覆われた。星の至宝クリスタルを守る為にそれを抱え、宇宙に飛び出した妖精リボンだが、たちまち黒い影に追い付かれる。クリスタルは砕け、リボンはとある星に落下してしまう。
ポップスターではカービィが星を見ていた所、降り下りて来たクリスタルの欠片を手にする。近くに倒れていたリボンが手にしていたクリスタルは小さくなっていたが、カービィの拾った欠片と合わせる事で僅かながら力を取り戻した。困った時の人助けとばかりに、カービィはリボンと共に、クリスタルの欠片を探す冒険に出発する事に。
ポップスターの道中ではクリスタルの欠片を拾った人物が次々と異変に見舞われる。ワドルドゥに変貌してしまったワドルディ、キャンバスにかつての敵を描いて襲い掛かるアドレーヌ、洗脳被害3回目のデデデ大王を解放し、クリスタルの力で星々を巡る旅の仲間に加えてゆく。そして、リップルスターで待つ者、クリスタルを襲った黒い影の正体は……
本作の最終戦能力は、とある組み合わせのミックス能力。最初からずっと一緒だったもの達と共に……飛べ、星のカービィ。
カービィが困っている人を見つけて助け舟を出すタイプの話は本作が初めてで、それまではプププランドやポップスターに何かしらのトラブルが発生(食べ物がなくなる、夢を見なくなる、虹が奪われる等)してから動くパターンがほとんどだった。後の作品では裏切り要素の発生により、助ける相手に対してこいつ裏切るんじゃないだろうな疑惑が掛かる事になるのだが、この頃は開発もユーザーも優しい時代。そんな事は一切ないので安心しよう。
また、クリスタルの欠片を集めていないとバッドエンドになるが、そちらのスタッフロールも見ておくといい。真エンドと見比べるとエモい。
総評
95年発売の2より始まった本家ナンバリング作品、所謂『下村カービィ』三部作の完結編のようなタイトル。2でプププランドから虹を奪ったダークマター、3でポップスターを黒い影で覆ったゼロ、そして本作のラスボスはリップルスターを制圧し、クリスタルの強奪を計ったゼロツー。それらダークマター達の本星に直接殴り込み、星ごと消し飛ばして一味との戦いに終止符が打たれる。
カービィシリーズに一つの節目を打ち込んだような終わり方は、20世紀の最後の年の作品として、N64というハードの末期にマシンパワーを最大限に引き出したものの一つと言っていい。本作からWiiまで、カービィシリーズは10年以上に渡って据え置き機での新作が出なくなるという事態に見舞われる(ゲームキューブ版がお蔵入りになり、Wiiで完成形を見るまでかなり難航した模様)。
また、本作では初めてデデデ大王がカービィの冒険に同行した作品であり、後にWiiでプレイアブル化する事を考えると、大きな足掛かりになったと思われる。しかし、前作3と本作はカービィシリーズの商品展開において扱いが芳しくなく、アニメでもこの二作品の要素は皆無と言ってよかった(クリーン能力は出たが)。
それでも、カービィシリーズの敷居の低さと間口の広さを真摯に突き詰めた良作、というのが個人的な総評である。SwitchオンラインのN64追加パックで遊べるため、興味があったら遊んでみよう。あと、本作はBGMがとても良い。いつものカービィダンスは諸事情か出なかったものの、サウンドテストにはちゃんと入っている。ボス戦関係のBGMはしっかりいつものカービィをしてくれている。コース曲も後の作品でアレンジされる事が多く、質の高いカービィサウンドを堪能出来る。
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