2023希誕「シネマ」解説
※おことわり
・この記事と解説する動画は、あくまで国擬人化漫画「Axis powers ヘタリア」「World Stars ヘタリア」のキャラクターとしての「ギリシャ」を扱ったものです。
・以下の文章は大いに私の(キャラオタク的な)主観の入った近代ギリシャ史観であり、歴史的な正当性には乏しいです。気になった方はぜひ詳しく調べてみてください。
以上のことを念頭においてお読みくださると幸いです。
今回つくった動画(ニコニコ動画にもあります)
冒頭はギリシャ王国独立の経緯のイメージです。
オスマン帝国からの独立戦争の勝利自体が英・仏・露の支援(あるいは打算)ありきのものでしたが、
独立後もギリシャは彼らをはじめとする大国の意図に色々と振り回されています。
ギリシャ側の人々には「まあ言うて独立って言ってもね、最初はオスマン帝国の自治区的な扱いから、段階を経てちょっとずつ権利を増やしてもらって……」とぼんやり思っていた人も多かったようです。
しかし列強三国にとっては、これを機にできるだけオスマン帝国の権力・所有地を削いだ方が都合がいい。
そういわけで彼らは、ある日突然ギリシャの人が全然知らんところで「ハイ、じゃあ貴方今日から主権国家ね」とポンと決めてしまいました。
かくして生まれたてのギリシャ王国は、あたふたしながら手探りで自治を始めることになります。
順に独立〜希土戦争、WW2後の内戦、戦後、経済危機のイメージです。
前2つにマリオネットの操り糸がついているのは、実際に国政を握っていたのが列強三国周辺の人々だったり、WW2下の傀儡政権だったため。
できれば「そこまで教えてくれよ」のカットで操り棒を壊そうと思っていたのですが、
綺麗な×の形が世間から貼られたレッテルのようで、それはそれでエモかったためそのままにしました。
ここも冒頭と重なりますが、独立後の状況をイメージしています。
ナショナリズムの広がりやヨーロッパに広がっていた親ギリシャ主義、帝国の衰退などから独立戦争に踏み切ったギリシャでしたが、いざ独立した後どういう国を築こうと考えていたかは、人や立場によって違いました。
例えば一部の教会はオスマン帝国からお給料を貰っていましたし、ローマ帝国の時代も含めれば千年近く主権がなかったギリシャの人々は、ほとんど誰もこんな大規模な政治を「国」としてやったことがありませんでした。
もう誰も正しい姿を覚えていない古代の栄光をよすがに立ち上がったギリシャの人々は、独立して初めて「近代の主権国家」というものを知り、
様々な問題にぶち当たっては「こんな筈じゃなかった」と愕然としたんじゃないかと思います。
「勘違いの英雄ごっこ」!?!?
「現代ギリシャ」の「ヘラクレス君」に向かって
「勘違いの英雄ごっこ」!?!?!?!?
すごい悪口。初めて曲聞いた時ビビった部分です。
実際いろいろな国からの支配の歴史があり、移民も多い地域なので、
古代ギリシャの人々と現代ギリシャの人々はほとんど血が繋がっていないそうです。
ついでに言えば、アポロンをはじめとする古代ギリシャにおける理想の美男子像といえば「金髪・碧眼・色白」。
ヘラクレス君は「茶髪・緑目・色黒」ですね……手の込んだ嫌がらせなんですかね。
私はそんな彼だから好きなんですけどね!?
そもそも私がこういう動画を作ろうと思ったのは、
日本人の私がうっすら感じている「ギリシャといえば古代」みたいな風潮を、今のギリシャの人はどう思っているのかな、という疑問がきっかけでした。
(案外まるっきり気にしていらっしゃらないのかもしれないし、そうだといいのですが……。)
経済の問題をはじめ悪い話題ばかりが目立つ現代ですが、確かに古代は素晴らしいですが、
それでも現代のギリシャにしかない良さだってあるはずだ……あるはずだよな!? 誰かあるって言えよ!!
その思いを原動力に動画作りを頑張りました。
私の動画では、「期待するほどでもなくがっかり」の部分だけに「」をつけて、他人からの台詞というていにしています。
実際、ギリシャ独立戦争の際、古代ギリシアへの夢を膨らませて加勢しにきた西洋諸国には、
「理想のギリシア人」と「現実のギリシャ人」の違いにあからさまにがっかりして帰っていった人も多かったそう。
勝手に期待して勝手に落ち込まれて、本当に迷惑な話だと思います。
でも彼はお母さんのことを本気で尊敬して愛しているからこそ、誰のことも責められずに人知れず苦しんだ日もあったのではないでしょうか。
ヘタリアに登場する独君も日さんも本当に良い奴ですので、
尻拭いもアドバイスも、本気で希さんの身を案じて行ってくれていることでしょう。
それくらいは希さんもわかっているはずです。
頭のいい彼はぼんやりとその光景を客観視している。
似た経験のある人もおりましょうか。
こんな親切な友人らにそんな気遣いをさせている自分の、なんとみじめなことか!
暖かい微笑みに吸い取られるように、静かに冷えていく心根。
こんなとき、彼のような人にできることといえば、
ここまで人に迷惑をかけているのに、なお自分の感情にばかり気を取られてしまう自らを恥じながら、
目も合わせられぬまま、ぎこちなく微笑むくらいなのです。
あーあ、なんかもう、死んじゃおっかなぁ。
死ぬつもりもないくせに、ふとそんなことを思う。
でもそんなとき、かつての幼い自分と母親に見紛うような、
幸せそうな国民の親子(姉弟などかもしれませんが)と出会います。
私の妄想の中の希さんのお母さんは、ビザンツ帝国として壮絶な運命を辿った末に亡くなっていますので、
彼が母と手を繋いで仲良く出かけた記憶なんか、本当にあったのかどうかも怪しい。
でも、そんな自分が焦がれてやまないささやかな幸せを当たり前に享受できている、今生きている人々のために、
彼は「もう少しだけ頑張ってみよう」と奮起することができました。
ここで登場するエスト君はほぼほぼ中の人ネタ要素なのですが、先輩IT大国ということで抜擢しました。
ギリシャは近年、国をあげてIT教育に力を入れているそう。
他国からも、地理的な強みや、観光大国として培われてきた英語力を評価され、新時代のIT拠点として注目されているようです。
真ん中で手を差し伸べているのが日本さんなのは、
2022年5月、NTTがアテネに支社を作ったからです。
(ちなみにここに急に南伊くん西さん葡さんが出てきているのは私の中では同じアイドルグループのメンバーだからです)
とにかくここからギリシャにとっての全く新しい、素敵な未来が幕を開けることを、私はいちオタクながら切実に祈っています。
だって。
つまらない映画のエンドロールのように、「もう終わった国」扱いをされていたギリシャが、
世界最新の技術を引っ提げて、今ふたたび世界文明のトップに返り咲いたら……
それこそ「映画のよう」で、最高じゃないですか?