五十嵐律人「法廷遊戯」読後感
ネタバレ有りです。
1日で読んでしまった。
冒頭は、東野圭吾「白夜行」を想起させる展開。
困っている女の子を悪い大人から守るために罪を犯し、その罪を背負って生きる男の子。
「慣れは、感覚を麻痺させる。焦りは、判断能力を鈍らせる。」
この2人が起こした過去の犯罪が、1つの冤罪を生み、取り返しのつかない結末に至り、その親族が同害報復に向けて人生を賭けた壮大な仕掛けを施していく。
「馨が望んだのは、如何なる結末なのだろう。
罪人に対する制裁か、あるいは、無辜に対する救済か」
これは、犯罪という規模の大きい話でなくとも、日常生活に於いても似たような要素が散らばっていると思う。
対人関係の中で何かトラブルが起きた時、その人に対して仕返しをしたいのか、あるいはそのトラブルに巻き込まれた自分を保護してほしいと願っているのか、自分でも感情を整理できないシーンは多々ある。
法律に精通している著者だからこそ使えたロジックや文脈が散りばめられていて、司法の理解自体も楽しめた。
一方で、全体を通して各人の心理描写は比較的少ないので、最後唐突に描かれる「選ばなかった幸せな未来」への憧憬描写は不要だったような。。(あまり感情移入できなかった)
ミステリーとして括るよりは、冤罪、再審制度、起訴の在り方、福祉で救済できない人々へのケアに関する問題提起が主題だったかなと受け取りました。
個人的には墓地荒らしで起訴さている被告人のストーリーが何を匂わせていたのか、シンプルに何でも屋に繋げるための布石だったに過ぎないのかちょっと繋げられなかったので、他の方々の考察も読んでみたいと思う。
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