希望の種
職場にアルバイトの大学生が来るようになって2年近く経つ。
2年生だった子たちもいよいよ最終学年の4年生。就活も本格的にはじまっている。
大人に混じって対面での接客に加え、電話応対もこなすというアルバイトはハードルが高いがその分、社会に出て役に立つことも多い。
コールセンターで電話応対だけする、もしくはコンビニや飲食店で対面での接客だけをするのとは少し違う。
時にはクレームで来店されるお客様の応対を終えて、すぐに気持ちを切り替えて次の電話を取る。
逆にクレーム電話に対して状況調査の緊迫した最中であっても来客を笑顔でお迎えする。
この気持ちの切り替えは20年選手でも容易くはない。少しでも気を緩めると電話越しでもマスク越しでも狼狽した表情は伝わってしまう。
面接に来た学生に初めて会ったとき
「電話応対の仕事に自信はありますか」
と尋ねた。
返事は予想通りNOだ。
それはそうだろう。大学生で電話応対の経験がある方が珍しい。
電話応対のスキルは社会に出てから必要になるから、苦手だと思うなら経験しておいた方がいいとだけアドバイスした。
その子とこんなに長く一緒に働けるとは思っていなかった。
辛い場面もあったと思うが、彼女は今も積極的に電話を取り続けている。
同大学の学生が数人働いているのだが、この学生アルバイトチームは本当に素晴らしい。仕事ぶりも申し分ないし、社会人としての資質も充分に備わっている。
ミスがあれば、私の確認不足ですと謙虚に申し出て、お客様への謝罪はもちろんのこと、フォローした従業員へのお詫びも欠かさない。
私が特に感心したのは、最初の年末を迎えるときの挨拶だ。
たいてい自分が退勤する、もしくは相手の退勤するタイミングで上司に挨拶をする。
しかしそうすると上司は挨拶のたびに手を止めることになり、更にはデスク周りに挨拶にきた人が列を成し、こうなると帰りたくても帰れない。
しかし、彼らはきちんと集まってまとめて挨拶し一度に済ませた。これは相手への配慮だ。
もちろん、年始もまとまってご挨拶。
リーダーシップを取れる子が声かけし、しっかりまとめてくれている。
親御さんや大学の先生が教えたのだろうか?
いや、自分たちで考えたのだろうか。
簡単な資料のコピーを頼めばホチキス留が必要かの確認。交互に重ねたり付箋を貼り、数えやすいように、配りやすいように束ねて仕上げてくれる。
ラミネートを頼めば両面テープを貼った状態まで仕上げてくれる。
自分の仕事の後がどうなるかを考え、行動する。
自身の学生時代と比べるとずいぶんと優秀だ。
先日仕事終わりに就活の様子を聞いた。
公務員試験対策に追われている子もいればSPIに苦戦している子もいるようで、それぞれ人生の節目に向けてアルバイトと勉強とを両立させ頑張っている。
我が社に就職というのは、残念ながら選択肢にないようだ(苦笑)。
とりとめもなく書いてきたが
何が言いたいかというと
彼らはどこに出しても恥ずかしくない人財だということ。
このセリフだと厚かましく自分が育てた感がでてしまうがそんなつもりはない。
ひと足先に社会に出た大人をよく見て、どうするのが良いか考え、判断して、彼ら自身で己を育てた結果である。
旅立ちのときはそう遠くない。
高く高く羽ばたいてもいい。どこまでも遠くへ羽ばたいてもいい。休みながら羽ばたいてもいい。どこに着地したとしてもいい。
私は彼らの未来が明るいことを信じ、幸運を祈る。
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